第98回アカデミー賞国際長編映画部門イラク代表であり、第78回カンヌ国際映画祭で、イラク映画として初めて監督週間観客賞とカメラ・ドール(新人監督賞)をダブル受賞した「大統領のケーキ」の本編映像が公開された。
物語の舞台は、1990年代、独裁政権下のイラク。人々が戦争と食糧不足に苦しむなか、フセイン大統領は自身の誕生日を祝うケーキを作るよう、国内の各学校に命じていた。9歳の少女ラミアは、ある日、小学校で行われたくじ引きで“名誉ある”ケーキ係に指名される。ケーキが用意できなければ重い罰が待っている。とにかくケーキの材料を集めなければ!と、ラミアは町を駆け回る。
本編映像は、授業前の教室で教師が子供たちに向かって「通報されたいか?」「引きずられたいか?」と威圧的に問いかける場面から始まる。子供たちは一斉に首を横に振り、「いいえ」と答える。その緊迫したやり取りだけを見ると、教師が生徒を厳しく叱責しているようにも見える。しかし、続くシーンで、それがフセイン大統領の誕生日を祝うために毎年行われる“係決め”のくじ引きだと明らかになる。
ジュース係の発表に続き、最も重要な役目である“ケーキ係”として、主人公ラミアの名前が読み上げられる。教師は「おめでとう。誇りに思いたまえ」と称えるものの、ラミアの表情は強張ったまま。喜びの色は見えない。祖母とふたりで暮らす彼女には、ケーキを用意する余裕など到底ないからだ。多くの国民が日々の生活にも苦しむ時代、少女に課せられた“宿題”はあまりにも過酷だった――。大統領のためのケーキを用意しなければならないという重すぎる任務を背負ったラミア。その複雑な感情を映し出す表情が、強い印象を残す映像となっている。
日本では想像もつかないような出来事を描く本作は、イラク出身のハサン・ハーディ監督自身の幼少期の体験をもとに手がけた初長編作品。ハーディ監督は「私は花係でしたが、友人はケーキ係に選ばれ、ケーキを用意できなかったことで退学となり、少年軍への入隊を強いられました」と明かす。さらに、「なぜ誰も不条理に声を上げなかったのか、その問いと罪悪感がこの物語を書く原動力になった」と語っている。
7月10日から新宿ピカデリーほか全国公開。
【作品情報】
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大統領のケーキ
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