LGBTQ+映画と女性監督作の増加、世代交代を意識した若返り第79回カンヌ国際映画祭振り返り

LGBTQ+映画と女性監督作の増加、世代交代を意識した若返り第79回カンヌ国際映画祭振り返り

5月31日(日) 11:30

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5月12日から開催された第79回カンヌ国際映画祭は、各部門を通してこれまでにないほど日本映画が多かったが、コンペティションで披露された濱口竜介監督の「急に具合が悪くなる」が女優賞を授与され(主演のヴィルジニー・エフィラと岡本多緒のペア)、美しい終幕を迎えた。本作をパルムドールに推す声もあったなかで(受賞したのはクリスティアン・ムンジウ監督の「Fjord」)、ふたりが揃って評価されたことは、それだけ映画のなかで描かれる彼女たちの触れ合いに審査員たちが心動かされたことの証だろう。

さて、ここではもう少し映画祭の全体像について振り返ってみたい。今年目についたトピックを挙げるなら、LGBTQ+映画と女性監督作の増加、世代交代を意識した若返りがある。

22本のコンペティションのうち、深田晃司監督の「ナギノート」を含む7本がクィアパルムの対象(つまりLGBTQ+を扱った作品)であり、これまでで最も多かった。セクシュアル・マイノリティの題材がマイノティではなく、ありふれたものになってきたと言えるかもしれない。とはいえ、そこにはもちろん障害もある。たとえば深田監督が、「日本ではまだ彼らは目に見えない存在であるので、それを可視化させたいと思った」と語る日本の環境。あるいは監督賞をパベウ・パブリコフスキ監督(「Fatherland」)と分け合ったスペインの若手、ハビエル・カルボとハビエル・アムブロス監督コンビ(「The Black Ball」)が語った、「僕らはこの映画を一般の人も楽しめる娯楽的で派手な作品にしたかったけれど、ゲイ映画ということで大きな予算を集めるのは大変だった」という制作面での問題。セクシュアル・マイノリティの題材は、当事者にしか刺さらないのではないかという疑心暗鬼が、出資者を臆病にさせている。

変化に時間が掛かるのは、女性と男性監督の比率に関しても同様である。映画祭ディレクターのティエリー・フレモーは開幕前の記者会見で、「男女比が平等ではないということを毎年言われるが、むしろ次第に平等に近づいているということを評価して欲しい」と語っていた。その点で言えば、今年コンペティションには5人の女性監督が入選し、ある視点部門に至っては19本中11本が女性監督作で、過半数を記録したのは頼もしい。

世代交代もカンヌにとって大きな課題のひとつだろう。コンペティションこそ常連の名前も見られるが、ある視点部門には6本、その他のオフィシャル・セクションでは11本も長編1作目の監督作があり、この数字はかなり画期的だ。若い世代をサポートするためにも意識的に門戸を広げていることが感じられる。もちろん、それが場合によっては質の低下をもたらすこともあるわけだが、そのあたりはバランスを取っていくしかないだろう。

もうひとつ、世代交代に関連した特徴が、コンペティション作品における多様性の追求である。とくに今回は、本来ならミッドナイト上映枠向けと言える、ナ・ホンジンの「HOPE」がコンペティションに入ったことが象徴的だった。これがホンジンと同胞の審査員長、パク・チャヌクに向けた心遣いだったのかはわからないが、これまで作家主義系の印象が強かったコンペティションの枠組みを広げることにより、幅広いタイプの作品に門戸を開放しようとしていることが伺える。これはいまの若い作り手が、商業的/非商業的、作家主義映画/娯楽作、といった2項対立で割り切れない、より自由でミックス・ジャンルの映画作りを目指すことに対応しようとする表れに思える。

来年は80回を迎えるカンヌ国際映画祭。今後時代の変化に応じてどのような舵取りがなされていくのか、興味は尽きない。(佐藤久理子)

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