熟年離婚が注目されて久しいが、近年は“若年離婚”も話題になりつつある。厚生労働省の「人口動態統計」では、別居と同年に離婚した夫婦のうち、男女ともそれぞれ「30~34歳」の層が最も多いという結果が出ている。
4月10日に発売されたコミックエッセイ『離婚するなら、今日かもしれない』(KADOKAWA刊)は、モラハラ気味の男性と結婚した花、友達のような夫婦関係を築いている真弓、バリキャリ系の亜里沙の3人の主人公が織り成す、若年離婚をテーマにしたセミノンフィクション作品になっている。若年離婚のリアルを描いた本作の作者・ゆりゆさんに、制作秘話などを聞いた。
熟年離婚と若年離婚の違い
本作はフィクションでもノンフィクションでもない、セミノンフィクションの作品になっている。どの辺りがセミノンフィクションになっているのか。
「本作を制作するにあたり、私や担当編集者の周囲にいる、若年離婚を経験した人たちに取材しました。そこで聞いた話の中で出てきた出来事を本作に入れているため、ほぼほぼノンフィクションの作品と言えます。ただ、『私ならこう感じるだろうな』という気持ちを乗せながら登場人物の言動を描いているため、“完全なノンフィクション”ということではないんですよね」
取材を通して感じた熟年離婚と若年離婚の違いについて聞くと、ゆりゆさんは「熟年離婚の場合、『子どもが大きくなり、親の責任をある程度果たしたことで、残りの人生は自分のために自由に生きたい』といった気持ちから決断する人が多いのかなと思います」と話す。
「一方、若年離婚は『将来的に子どもがほしい』『今は仕事を頑張りたい』みたいに、今から未来に向かって何かしたいことがあって、それを実現するために離婚する、というケースが多いように感じました。『まだ取り返しのきく若いうちに離婚を決断する』という考えが背景にあるのかもしれません」
「いっそのこと暴力を振るってほしい」と思わせるライン
取材のおかげで各登場人物の言動にリアリティがもたらされていた印象だ。とりわけ、花の夫のモラハラ気味な言動は「こういう人いそう」と思わされた。花の夫の言動の描き方で意識したことを振り返る。
「描き始めた頃は、あからさまに嫌なやつでした。ただ、『現実世界にもこういう人いそうだな』と思ってもらえるように、方向転換したんです。やはり暴力や暴言といったあからさまなモラハラやDVを受けている人よりも、冗談感覚でさりげなくチクっと刺すような言動に苦しんでいる人のほうが数としては多いと思います。
花が『こんな嫌味を言われたくらいでいちいち離婚を考えていたらキリがないな』『不快だけど友達にわざわざ話すレベルではないな』と思えるラインは意識しました。また、『いっそのこと暴力を振るってくれたほうが、離婚を決意するきっかけになるのに……』と、花が思うような言動にもしています」
亜里沙が示すもの
3人の主人公の1人、亜里沙という存在にも注目したくなった。亜里沙はバリバリ働き、夫が率先して家事をしており、従来のジェンダーロールに縛られない“令和っぽい夫婦関係”を築けている。
花や真弓とは大きく違った角度から離婚のあり方を示すキャラになっているが、亜里沙を登場させた背景として、「女性のライフスタイルの多様さを描きたいという気持ちが強くあったからです」という。
「本作は離婚がテーマではありますが、モラハラや夫婦仲だけが、離婚したい理由ではありません。そういった理由とは異なり、『このまま子どもを授かって、子育てと仕事を両立していけるのか?』という、今後のライフプランに悩んで離婚を考える人もいると思います。
もちろん、女性のライフスタイルや働き方を詳しく描写すると本作のテーマがブレてしまうため、サラッと描きました。それでも“女性のキャリア”という視点からも離婚を描きたかったので、亜里沙というキャラクターを登場させました」
結婚生活に違和感を抱えながらも、「これくらい普通なのかもしれない」と飲み込んでしまう人は少なくない。本作はそんな、言葉にしにくい苦しさを丁寧にすくい上げている。
<取材・文/望月悠木漫画/ゆりゆ>
【望月悠木】
フリーライター。社会問題やエンタメ、グルメなど幅広い記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。X(旧Twitter):@mochizukiyuuki
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