完全AI生成の長編映画、トライベッカ映画祭の公式部門に初選出

完全AI生成の長編映画、トライベッカ映画祭の公式部門に初選出

5月30日(土) 15:00

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完全AI生成の長編映画が、米トライベッカ映画祭の公式部門に初めて選ばれたと、米ハリウッド・リポーターが報じた。

選出されたのは、イラン国内の市民抵抗を題材にした75分のドキュメンタリードラマ「Dreams of Violets」(原題)だ。イラン出身の映像作家アシュ・クーシャと、その兄弟のプーヤ・クーシャが共同で監督した。物語の舞台は2026年1月のテヘランで、ある夜明け、路地裏に追い詰められた市民5人と、それを窓越しに見つめる車椅子の少年が、ある決断を迫られていく姿が描かれるという。

特筆すべきはその制作体制だ。本作は、俳優も実写セットもカメラも一切使わず、すべての映像が複数のAIツールによって生成されている。制作費は2000ドル(約32万円)。画像の生成には Google の「Nanobanana」、フレームから動画を生み出すには中国快手(Kuaishou)の「Kling AI」、台本まわりの編集には Anthropic の「Claude」が使われたという。

それでも、AI を選んだのは技術的な実験のためではなかった。アシュ・クーシャは2009年にイランを離れて以来、ロンドンを拠点に活動する亡命者だ。祖国に戻れず、現地で取材することも、撮影することもできない自分が、それでも祖国で起きている出来事を「追悼映画」として残すための、ほぼ唯一の方法だったのだという。

クーシャ監督はこう語っている。

「私は亡命中の一人の人間で、イランにも、ロケ地にも、人にもアクセスできない。AIのパイプラインだけが、自分には越えられない壁の向こうで起きた出来事への追悼映画を作ることを可能にしてくれた」

トライベッカ映画祭側は、本作を「主要映画祭の公式部門に選ばれた初めての完全AI生成長編映画」として紹介している。共同創設者のジェーン・ローゼンタールは、新しい技術が単なる革新の道具ではなく、深く人間的な物語を語る器にもなり得ることを示す力強い一例だと評している。

ワールドプレミアは2026年6月10日に行われる予定。

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Photo by Samuel Boivin/NurPhoto via Getty Images
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