F1第5戦カナダGPレビュー(後編)
◆レビュー前編>>
日曜は朝から雨の予報で、カナダGPの決勝は今シーズン初のウェットレースになるかと思われた。
気温は11度と低く冷え込み、霧雨のように降り続く雨と強い風が、寒さをより一層強く感じさせた。
決勝直前まで小雨は続いたものの直前に上がり、路面はわずかに濡れたドライコンディション。いくつかのチームがインターミディエイト(浅溝)タイヤを履くほどの状況で、ドライタイヤにも一抹の不安が残る状況でのスタートのなか、アロンソが魅せた。
アロンソは一時10位までポジションを上げるもリタイアに終わったphoto by BOOZY
「インターミディエイトを履くマシンもいるなかで、ターン1〜2でいつも以上にリスクを負って攻めていったからね。入賞圏を争うドライバーたちはそんなリスクを取ることはできないから、僕は彼ら以上にリスクを冒して攻めていくことができた。その結果だよ」
瞬く間にポジションを上げて12位に浮上し、インターミディエイトを履いたマクラーレン勢がピットインしたことで、一時は10位まで上がった。
コンクリートウォールに囲まれたモントリオールでは、何が起こるかわからない。ましてや、朝から雨まじりでランオフエリアの芝生や古びた縁石が濡れた状況では、セーフティカーの波乱もあり得る。
そんな期待もよぎる展開だったが、路面は急激に乾いていき、マシン本来のペースが露わになると、ポジションを維持することは難しかった。
「ペースは今までと同じだよ。いいスタートを決めたとしても完全に場違いだし、ポジションを守るだけのペースはなく、少しずつポジションを落としていってしまう。毎ラップひとつずつポジションを落とし、最終的には最後尾という本来のポジションに戻るだけだ。
これが僕らの現状だし、夏まではこの状況が続く。それを受け入れ、メディアからの同じ質問に答え続けるしかない。それに対しては何とも思っていないよ」
スプリントレースではシートフィッティングに問題を抱え、16周でリタイアを余儀なくされた。土曜の夜に対策を講じたものの、その問題は完全には解決できていなかった。
【レースペースは11チームで最下位】スターティンググリッドに向かう10分間の周回でそれに気づき修正を試みたものの、スタートまでの限られた時間では解決できなかった。だから、70周のレースを走りきるのが難しいことはわかったうえでのスタートだった。
アロンソは20周でピットに戻り、ピットストップ練習とアウトラップのデータ収集だけを行なって再びガレージに戻り、レースを終えた。
「シートポジションが正しくなくて、ラップを重ねるごとにどんどん違和感が強くなっていった。ポイントを争う位置からは大きく後れを取ってしまっていたし、雨が降ってくる可能性もなさそうだから、無理をしないことに決めたんだ」
前戦マイアミGPと同様に、ソフトタイヤを積極的に使うことでマシン差をカバーする戦略を採ったが、生き残ったランス・ストロールもペースは振るわず。キャデラックのセルジオ・ペレスが中団グループで戦う場面を見せたのとは対照的に、アストンマーティン勢のレースペースは11チームのなかで最下位だった。
アストンマーティンの現場責任者(CTO)で実質的なチーム代表代行であるマイク・クラックは、こう説明する。
「フェルナンド(・アロンソ)はしばらく前からシートに不快感を感じながら走っていたが、レースを止めなければならないほどではなかった。しかし、その不快感を覚える部分が、圧力がかかるポイントのようにどんどん悪化していってしまった。今後に向けてはシートポジションを少し見直す必要があるだろう。
F1マシンはできるだけ低い位置に座ろうとするシートポジションになっているが、ここ数年でさらにどんどん寝そべるような姿勢になってきているんだ。これから詳しくチェックする必要はあるが、その寝そべるような姿勢を少し攻めすぎたのかもしれない」
シートポジションの変更は低重心化によるマシン改善の一環ではあったが、いかんせん熟成不足だった。
【まだあとコンマ数秒は引き出せる】そして、低温のコンディションではダウンフォース不足でタイヤに熱を入れられず、本来のグリップを引き出すことも難しかった。
「ふだんから作動温度領域の下限ギリギリのラインにいて、ウインドウ内に収めるのがやっとの状態だった。そこに青旗やVSC(バーチャルセーフティカー)でバックオフしてタイヤ温度が下がると、温度を取り戻すのにかなりの時間を要してしまう。上位チームでさえ苦戦していたくらいだったから、今日のレースが厳しいものになることはわかっていた」(クラックCTO)
ただ、レース結果にはつながらなかったものの、着実に進歩はしている。
物理的なアップデートは夏まで見送りとなるが、現状のマシンパッケージの未成熟な部分を詰めていき、パフォーマンスを向上させる余地はまだまだある。それが見えたのはポジティブな要素だったとアロンソは言う。
「このパッケージから、まだあとコンマ数秒は引き出せると思う。マイアミではエネルギーマネジメントやギアボックスに問題があって悩まされたけど、今週はかなり改善できていて、コーナーの飛び込みでも、よりアタックできるようになってきた。
毎戦のように少しずつパフォーマンスを改善していけるはずだよ。もちろん空力パッケージが大きくアップデートされるまでは、今のマシンの最適化を進めていくしかないからね」
今は耐える時。しかし、ただ耐えるだけでなく、微かな希望が見えるなかでの忍耐と努力──。
それが見えたことが、カナダGPの収穫だった。
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