映画館で感動した映画、スマホ&タブレットで観たけどイマイチだった――これって何故?理由を紐解くポイントを徹底解説【音響編】

どうして鑑賞体験に差が生まれる?

映画館で感動した映画、スマホ&タブレットで観たけどイマイチだった――これって何故?理由を紐解くポイントを徹底解説【音響編】

5月26日(火) 12:00

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2026年3月、SNS上にて、とある投稿が話題を呼びました。

それが「映画館で感動した映画を友人にすすめたら“イマイチ”だったと言われてしまった…という話」。実はそのご友人、おすすめされた映画を「スマホで鑑賞した」ようで、投稿主は“モヤモヤ”してしまったとのこと。

ここでシンプルな疑問が生まれます。映画はスクリーンで見ることが“最適解”だと言われていますが、では何故「スマホやタブレットで見る」と鑑賞体験に差が生まれてしまうのか――。

この疑問にSNS上で答えていたのが、Blu-ray&SNSプロデューサーの伊尾喜大祐さん。映画.comでは“スクリーンとスマホの鑑賞体験の差”について深掘りすべく、伊尾喜さんにお話を伺いました。

前編の「映像編」に続き、今回は「音響」について特化した内容をお届けします!

●そもそも映画館の「音」って、なんですごいんだろう?

――今回は「音響」についてお話を伺えればと思います。で、大前提として、ド直球の質問をさせてください。そもそもですよ、なんで映画館の音ってすごいんですか?

現代の映画館はそもそも、音響を含む映画体験のために造られた空間です。壁・天井・床などの素材や設置位置が緻密に計算され、音の反射や吸音の効果もしっかり考えられています。気密性も高いので外からの騒音も遮断され、空間の静けさのレベルも非常に高いです。

自宅のリビングは、常に室内のエアコンや、外を走る車の音などの「生活音」がありますが、映画館にはそれがありません。この静かな空間で、複数台のスピーカーが一斉に鳴ります。音は壁を、天井を、床を伝い、空気そのものを振動させながら全方位から身体に届きます。音が「逃げない」環境だからこそ、音は「音圧」となって身体を共鳴させます。音を「聴く」というより「浸る」感覚になるわけです。

――あぁ「浸る」って表現はまさに!という感じですね。これは「スマホ鑑賞」では味わえないものですよね。ちなみにこんなことを聞かれたことがあるんですよ。「スクリーンで人が喋っているってことは、音はスクリーンから出ているってこと?」。その時にズバッと答えられなかったのが悔しくて……この積年の思い、代わりに晴らしてくださいませ……。

お任せください(笑)。スクリーンからというより、スクリーン裏に設置されたスピーカーから出ています。映画館のスクリーンに近づいて見ると、小さく細かな穴が無数に空いているはずです。この穴がスピーカーの音を透過させて、客席に届ける仕組みになっているのです。だから劇中で俳優が喋ると、声はスクリーン上の口元の位置から聞こえてくる。映像と音が完全に一致するこの感覚こそが、映画館ならではの没入感の大きな要素のひとつです。さらに観客席の周囲の壁面、ドルビーアトモスやDTS:Xなどの対応スクリーンでは天井にも複数のスピーカーが配置され、音が文字通り四方八方から降り注ぐ設計になっています。

●映画館の魅力は「大音響」だけにあらず――「スター・ウォーズ」で革命は起こった

――なるほどなるほど。ちなみに、映画館の魅力の1つは「大音響」だと思うんですが、それ以外にも「ここに気づいてほしいんだ!」みたいなポイントってあったりしますか?

映画の音といえば、ついつい派手な銃撃戦や爆発音のサラウンド効果に耳を奪われがちですが、優れた映画館の音響で驚かされるのは「人の声」の変化ではないでしょうか。音の良い映画館では、俳優たちのセリフが質量と実体感を伴って伝わってくると思います。名優の深い声は身体を共鳴させるように厚く響き、囁き声には確かな湿度さえ宿ります。セリフが「聞こえる」のではなく、その場で「伝わる」。この音のマジックは、映画館という密閉された音響空間でなければ成立しません。

――ただ「聞こえる」ではなく「伝わる」という点が重要ですね。ちなみに「スター・ウォーズ」が映画音響の革命を起こしたって聞いた事があるんですが、これって本当なんですか?

実は…本当なんです!サイレント→モノラル→ステレオ→サラウンドへと映画音響は進化してきました。そのあたりの歴史は2020年公開のドキュメンタリー「ようこそ映画音響の世界へ」に詳しいので、ご興味ある方はぜひご覧になってみてください。

現在の「ドルビーアトモス」へと続くドルビー社のサラウンド音響の原点である4chの「ドルビーステレオ」は1976年のバーブラ・ストライサンド主演の「スター誕生」から始まりました。このドルビーステレオ音響を採用し、世界規模で爆発的な普及のきっかけになったのが、翌1977年の「スター・ウォーズ」だったのです。

あまりにも有名なあのオープニングシーン…観客の頭上を飛び去るスター・デストロイヤーの衝撃は、映像はもちろん、凄まじい重低音と飛び交う光線、そしてジョン・ウィリアムズの音楽が劇場空間を揺るがしたからこそだったと言えるでしょう。この作品を機に、大作映画は次々とドルビーステレオ方式を採用していくことになります。

その後、1997年の「SW特別篇」三部作ではシリーズ初の5.1chドルビーデジタルサラウンド方式が使われました。そして1999年の「エピソード1ファントム・メナス」のために、世界初となる6.1chドルビーデジタルサラウンドEX方式が開発され、「プリクエル」3部作で使われました。サラウンドバックという後方センターチャンネルが追加され、よりシャープな移動感や豊かな包囲感の表現が可能になったのです。

そして時をへて2015年「フォースの覚醒」から始まる「シークエル」3部作では、現在に至るドルビーアトモス音響が採用されています。「スター・ウォーズマンダロリアン・アンド・グローグー」は、前編で言及した通り「Filmed for IMAX」作品なので、対応するIMAXシアターでは12ch音響での上映も楽しめることになるでしょう。サウンド面でも新作が楽しみですね!

●音の設計が「とんでもない映画」って何?おすすめの映画館も教えて!

――ちなみに音の設計が「とんでもない映画」って何がありますか?この映画だけは「(スマホではなく)映画館で見るべきだ」と思ったタイトルと理由を、旧作・新作問わず教えてほしいです!

そうですね…旧作で言えば、やはりスティーブン・スピルバーグ監督の「プライベート・ライアン」(98)ではないでしょうか。特に映画冒頭のノルマンディー上陸作戦の凄まじさ。絶え間なく四方八方から襲い来る機銃掃射、砂を高く巻き上げる爆発音、兵士たちの悲鳴…これらの要素が音場を隙間なく埋め尽くし、もうトラウマレベルの強烈さになっています。

新作、しかも日本映画では間違いなく「ゴジラ-1.0」(23)。銀座をゴジラが襲うシーンでは、頭上に轟く咆哮と、重低音を響かせ襲い来る足音が圧巻で、蹂躙される群衆の悲鳴も音場を埋め尽くします。そしてゴジラの背びれが青白く輝いた直後、目を覆いたくなるほどの猛烈な熱線とともに轟音が劇場を揺るがす…この静と動の落差が圧倒的です。アカデミー賞視覚効果賞受賞のVFXの素晴らしさはもちろん、音響賞を受賞しても不思議ではない完成度だと思っています。

――ありがとうございます!ではでは、最後に伊尾喜さんのおすすめの映画館を教えてください。

映画館好きとしては、これは嬉しい質問ですね(笑)。東京の劇場のみになって恐縮ですが、ぜひ参考にしてみてください。

■グランドシネマサンシャイン

IMAXスクリーンは国内最大級の縦18.9m×横25.8m。1.43:1フルサイズの上映も体感できる劇場です。IMAX以外にも、高画質・高音質を追求した独自規格「BESTIA」、3面マルチのSCREEN X+4DXスクリーンなど、様々な上映フォーマットを一カ所で楽しめる、映画ファンにとって最高のムービーパークと言えるのではないでしょうか。

■丸の内ピカデリー3 ドルビーシネマ

東京初のドルビーシネマスクリーンを擁した劇場です。シネコンのフロアの中にあるタイプではなく、ドルビーシネマのみ独立した劇場になっています。そのためロビーも黒が基調の格段に落ち着いた雰囲気で、スクリーンへと観客を誘うAVP(オーディオ・ビジュアル・パスウェイ)の存在感もより一層際立ちます。上映が始まればスクリーン以外はどっしり黒に溶けこんで視界から消え去り、映画の世界をたっぷり堪能できます。

■新文芸坐

1956年創業の「文芸坐」から60年以上の歴史を誇る名画座が2022年にリニューアル。最新の4Kレーザー上映はもちろん、35mmフィルムでの上映にも対応しています。オリジナルの「ブンゲイ・フォニック・サウンド・システム」も圧倒的な迫力で、古今東西の名画の数々を極上の映像・音響空間で楽しめますよ。

【作品情報】
スター・ウォーズマンダロリアン・アンド・グローグー

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写真:Alamy/アフロ
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