「急に具合が悪くなる」カンヌ女優賞、ビルジニー・エフィラ&岡本多緒が濱口竜介監督と凱旋会見“濱口メソッド”振り返る

「急に具合が悪くなる」カンヌ女優賞、ビルジニー・エフィラ&岡本多緒が濱口竜介監督と凱旋会見“濱口メソッド”振り返る

5月26日(火) 20:00

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5月23日(現地時間)に閉幕した第79回カンヌ国際映画祭でビルジニー・エフィラ、岡本多緒が女優賞を獲得した「急に具合が悪くなる」カンヌ国際映画祭受賞凱旋記者会見が26日日本記者クラブで行われ、濱口竜介監督、エフィラ、岡本、プロデューサーのダビド・ゴキエ、松田広子が参加した。

【フォトギャラリー】濱口竜介監督「急に具合が悪くなる」ビルジニー・エフィラ、岡本多緒との凱旋会見の模様

授賞式から2日ほど経ち、受賞後の現在の率直な心境を問われた岡本は「私自身はまだ全く現実感が湧いておりません。『一生、実感が湧かないんじゃないか』と感じているほどです。ただ、この受賞がきっかけとなり、この映画がさらに多くの方に届くのであれば、これ以上に嬉しいことはありません」と述べる。

エフィラは「受賞は私にとっても大きな幸せですが、何より多緒と一緒に受賞できたことが最高に幸せです。授賞式で濱口監督が舞台に一緒に上がらないことがおかしいと思いました。彼の仕事の成果であり、みんなで一丸となって取り組んだ成果なのです」と、濱口監督の手腕も称えた。

そして濱口監督は「国際映画祭という、世界中から素晴らしい作品が集まるコンペティションの舞台で、このように高く評価されたことは本当に我々全員の栄誉です。私にとって映画の中心にあるのは常に俳優です。そのことはスタッフにも伝えていました。俳優の皆さんが現場で集中し、感情を最大限に表現できる環境作りをずっと考えていました。ですから、今回の受賞は二人はもちろん、全キャストの力が集まり、相互作用によって生まれた輝きが、カンヌの観客や審査員の皆さんにしっかりと届いた結果なのだと、大きな誇りを感じています」と日本の公の場で初めて受賞の喜びを語った。

「濱口監督の映画作りは非常に独特で、特別なアプローチがあります」とエフィラ。会見スタート直後は「ムッシュ濱口」と監督への敬意を込めた呼称を使ったが、濱口監督が「ムッシュはつけずに、竜介で」とエフィラに伝えるなど、親しみと信頼を感じさせるやり取りも見られた。

そしてエフィラは「今回の現場は非常に特別でした。私たちが体験したのは、単に映画を撮影する現場というだけでなく、様々な背景を持つ人々が“共に生きるための準備をする場”のようでした」と述べ、「特に象徴的だった」という濱口メソッドとも呼ばれる台本の読み合わせの体験をこう語る。

「多緒と私は、日本語とフランス語の二つの言語で読み合わせを行いました。そこでは監督の指示により、徹底的に感情を入れずに読むというアプローチを取りました。撮影前にあえて演技をしない、情緒を排除してテキストを読むという準備を重ねたのです。そこから実際の撮影に入ると、まるで一本の道が自然と敷かれていくような感覚になりました。監督から共有される様々な資料を読み解きながら、徐々に人物の内部へと入り込んでいき、輪郭を捉え、最終的には非常に神秘的な領域や、ある種の悟りの境地にまで到達するような、深い感覚を味わいました」

「かねてから濱口監督が書かれる脚本の大ファン」だという岡本は、「監督の書く言葉やセリフの筆力は、これまで私がご一緒してきたどの監督と比べてもずば抜けて素晴らしいです。役者が『この作品をやりたい』と思う最初の一歩はそこにあると思いますが、何度読んでも面白い、そんな感覚にさせてくれる脚本でした」と振り返る。

本作はケアについての物語であり、舞台演出家を演じる岡本は濱口監督から参考書籍を紹介されたエピソードを挙げ、「この作品に出会うまで(イタリアの精神科医)フランコ・バザーリアの功績を存じ上げませんでした。監督からいくつかの本を宿題としていただき、バザリアの思想に一番深い感銘を受け『ここから学べること、伝えられることがたくさんある』という強い気持ちになりました」と語る。

そんな濱口監督ならではの演出法は、フランスの映画監督ジャン・ルノワールの手法を踏襲しているという。「日本でのキャスト陣との本読みはもちろん、フランスでも約1か月間、すべてのシーンを何度も何度も読み合わせる時間を持ちました。外国語が飛び交う環境での演出には大きな不安もありましたが、リハーサルを重ねるうちに、俳優の声をシンプルに聴いていれば、その人が今どれほど集中しているかが自然と伝わってくることに気づきました。現場で小細工をした演技を狙う必要はないのだと、改めて教えられました。ジャン・ルノワールのドキュメンタリーから着想を得て始めたこの方法ですが、今回、フランスのキャストや映画の歴史に対する感謝がさらに深まりました」と、初のフランスでの制作から大きな収穫を得たようだ。

そのほか、フランスでは映画制作においても週休2日、1日の労働時間が定められ、もし残業が発生すれば法律や協定に基づいて割増賃金が発生するという労働環境の違いが、スタッフキャストに与える良い影響について報告し、一方で、同じ基準を日本で取り入れると3倍ものコストがかかることから「作品のスケールを抑えることで、スタッフやキャストの身体のケアを保つやり方は可能ではないかと思います。物量やスペクタクルがなくとも、観客の人生観を変えるような、人の心に深く届く映画は作れるはずです。この環境の差については、日本の映画界全体でこれから改善していくべき課題だと考えています」と言及した。

また、今作は日仏ベルギードイツ合作であり「現代において国際共同製作はより身近なものになりました。単に日本映画、フランス映画と区切るのではなく、国境を越えた共同製作だからこそ表現できた普遍的な人間の繋がりが、世界に届いたのだとしたら、これ以上に嬉しいことはありません」と、現在のグローバル社会で生まれた本作の意義を強調した。

「急に具合が悪くなる」は6月19日から公開。

【作品情報】
急に具合が悪くなる

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