【漫画】本編を読む
ユーモアあふれる漫画を数多く手掛ける宮野シンイチ(@Chameleon_0219)さん。実際の夜逃げ案件をもとに描いた「夜逃げ屋日記」は、DVや家庭問題に苦しむ依頼者たちの現実を描き、多くの読者の心を揺さぶっている。今回は、その中から第20話を紹介する。
■母親の姿を“最後に見たい”と願った娘
依頼者の井上さんは、引っ越し作業を終えたあと、社長に「駅前を通ってほしい」と頼む。理由を聞かれると、そこには母親が宗教のパンフレットを配っているという。
社長は井上さんの意思を尊重し、ワゴン車を駅前へ向かわせる。するとそこには、白い帽子をかぶり、笑顔で立つ母親の姿があった。車はゆっくりと通り過ぎ、その一瞬だけ、井上さんと母親の目が合う。
■車内に響いた“魂の叫び”
その場を離れたあとも、井上さんは静かなままだった。しかししばらくすると、突然歯ぎしりを始め、「くたばれくそババァ!!」と叫ぶ。それは、30年間押し殺してきた感情が噴き出した瞬間だった。
普段の井上さんを知る人間ほど、その叫びに衝撃を受けたという。宮野さんも「ものすごくびっくりしました」と振り返る。「かなり物静かな方だったので。でも、それだけ溜め込んでいたものが多かったんだと思います。驚いたあと、ただただ同情していました」と当時の心境を明かした。
■“幸せそうな笑顔”が逆に怖かった
また、宮野さんは駅前で見かけた母親について、「笑顔で幸せそうでした」と語る。しかし、その笑顔が逆に恐ろしく感じられたという。
娘が人生を狂わされ、夜逃げを選ばなければならない状況に追い込まれている一方で、母親は何事もないように笑っていた。その対比が、作品全体に重苦しい空気を漂わせている。
■現実をベースに描かれる“夜逃げ”の物語
「夜逃げ屋日記」は、宮野さんが実際に夜逃げ屋スタッフとして経験した出来事をもとに制作されている。2023年6月には書籍化もされ、SNS未公開エピソードや描き下ろし45ページ以上も収録されている。
逃げるしかなかった人々の事情、そして積み重なった感情が生々しく描かれる本作。井上さんの叫びは、多くの読者の胸にも重く響くはずだ。
取材協力:宮野シンイチ(@Chameleon_0219)
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