𠮷田恵輔監督、賛否両論の「廃用身」は「本当に他人事じゃない映画」“後輩”𠮷田光希監督とトーク

左からMCの森直人、𠮷田光希監督、𠮷田恵輔監督

𠮷田恵輔監督、賛否両論の「廃用身」は「本当に他人事じゃない映画」“後輩”𠮷田光希監督とトーク

5月25日(月) 15:00

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染谷将太が主演した映画「廃用身」(公開中)のスペシャルトークショーが5月22日に東京・渋谷のユーロスペースで行われ、メガホンを取った𠮷田光希監督と、𠮷田監督とは“先輩後輩”の関係に当たる𠮷田恵輔監督、MCを務めた映画評論家の森直人が登壇。映画制作の裏側から作品テーマなどについてトークを繰り広げた。

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原作は、外務省医務官を経て、現在も在宅訪問医として活躍する久坂部羊のデビュー作となった同名小説。出版当時、そのあまりに強烈な設定から「映像化、絶対不可能」と話題を呼んだ。監督と脚本を務めるのは「家族X」「三つの光」の吉田光希。自身の学生時代に原作と出会い衝撃を受けて以来、20年にわたって温め続けてきた企画の渾身の映画化となる。主演の染谷のほか、北村有起哉、瀧内公美、廣末哲万、中村映里子、中井友望、吉岡睦雄、六平直政らが共演。

トークショーの冒頭、MCの森から「今日は“𠮷田たち”ということで……」と紹介されると、会場がさっそく笑いに包まれた。2人とも、“土吉田”の「𠮷田」姓であり、実は塚本晋也監督作品の現場を経験した“塚本組”の先輩後輩という関係性でもある。𠮷田恵輔監督は、𠮷田光希監督との最初の出会いを「僕、面接してるんですよ」と回想。「六月の蛇」スタッフの追加募集に応募してきたのが、当時まだ浪人生の吉田光希監督だったそうで、小学校の校庭で行われたという面接を振り返りながら「良い動きをしてたんで、“お願いします”って(スタッフに加わってもらった)」と当時を懐かしそうに語った。一方の吉田光希監督も、「大ファンだった塚本監督の現場に行けるチャンスだと思って応募した」と振り返り、映画制作の原点となった経験を明かした。

そんな“塚本組”の現場を経て、現在ではそれぞれ監督として活躍する2人だが、森が両監督作品を撮影監督・志田貴之が支えていることや、スタッフ陣に共通点が多いことに触れると、吉田恵輔監督は「エンドクレジットを見ると、スタッフほぼ一緒なんだよね」と語り、映画作りの現場で繋がり続けてきた関係性が垣間見える一幕となった。

本作について問われた𠮷田恵輔監督は、「テーマ的には“よっしー(※𠮷田光希監督のあだ名)っぽい”と思った」と語り、「今回は撮り方が今までと全然違う」と指摘。特に印象に残ったのは、ズームやトラックインを多用したカメラワークだったとして、「ずっと何か起きそうな予感がする」と、その“不穏さ”について分析した。これに対し、𠮷田光希監督は「欠損描写を“インパクト”として見せたくなかった」と説明。身体の損傷をカット割でショッキングに切り取るのではなく、観客が少し距離を取りながら考え続けられるような映像を目指したという。

染谷将太演じる主人公・漆原については、“善意”をどう描くかというテーマへ。𠮷田光希監督は、原作の久坂部氏や主演の染谷とも「漆原をサイコパスとしては描かない」という認識を共有していたことを明かした。そして「究極の善意の行き着く先」として人物像を構築したと語り、「本当に患者のことを思っている人として演じてもらった」と撮影を振り返った。

一方、𠮷田恵輔監督は「思い込みの強い人間」として漆原を捉えていたとコメント。「本人は正しいと思ってやっている。でも、その強さが危うさにも繋がる」と語り、“善意と狂気は紙一重”という本作のテーマ性にも触れた。

話題は、介護や医療、高齢化社会の問題へと発展。𠮷田恵輔監督は「これは本当に他人事じゃない映画」と切り出し、「親世代を含め、いつか必ず向き合う問題」と語る。そして「答えを提示する映画ではなく、“自分はどう考えるのか”と向き合うきっかけになる作品」と、本作の意義を語った。

𠮷田光希監督は、原作者の久坂部氏とのやり取りを紹介。自身の親に置き換えて考えた時、「(切断は)躊躇する」と言った監督に対し、久坂部氏は「麻痺の苦しさを知らないから、そう言えるんですよ」と言ったというエピソードを明かし、“当事者性”によって見え方が大きく変わる題材であることを語った。

𠮷田恵輔監督からは印象的なラストシーンについて質問が寄せられたが、𠮷田光希監督は、原作ではフェイクドキュメント的な構成になっていることを説明しつつ、映画版ラストについて「“回復した姿”を直接見せるのではなく、“回復の予感”を描きたかった」と演出意図を解説した。そして、ラストシーンで風に揺れる洗濯物や、かすかに聞こえるとある声について「場所によって聞こえ方が変わるように音を配置した」とこだわりを明かし、「ぜひ映画館の音響とスクリーンで観てほしい」と呼びかけた。

トークショーの終盤には“師弟感”あふれる場面も。𠮷田恵輔監督は「昔、よっしーに“こういうイベントでこなれた感じで喋る人って寒いですよね”と言われたのを今でも覚えてる」と暴露。会場が笑いに包まれる中、「今日は“こなれた側”にならないよう気を付けてた……よっしーはこなれたように喋っていたけどね?」と指摘すると、𠮷田光希監督は照れ笑いを浮かべた。

最後に吉田恵輔監督は「これからもっと身近になっていく問題だと思う」と改めて作品テーマに触れ、「ぜひ周りの人にも薦めてほしい」とコメント。吉田光希監督は「いろんな感想が届いている」とSNSやレビューサイトでの反響に感謝を述べつつ、「長文の感想が多いのが本当にうれしい」と語る。賛否両論を巻き起こしている感想に対して、「ポジティブでもネガティブでも、熱量を持って感想を書いてもらえること自体がありがたい」と観客へ感謝を伝え、トークショーを締めくくった。

【作品情報】
廃用身

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