育休から仕事に戻るとき、「みんなに迷惑をかけて申し訳ない」「以前と同じように動けるかな」と自分を追い込んでしまう人は多いはず。本人にとっては気が重く、会社側にとっても現場の負荷は切実な問題…。そんな、誰もが困る「育休あるある」の悩みを、「超合理的」に解決しているのがオイシックス・ラ・大地株式会社だ。
【写真】「復職式」の様子同社は、ユニークな「復職式」をはじめとしたサポート体制で、まずは復職する本人の心の負担をしっかりと解消。それと同時に、DX化や非属人化を徹底することで、現場の物理的な負荷もスマートに軽減。その結果、育休取得率100%を達成しながら、中長期的に成長できる強い組織を作り上げることに成功している。
本記事では、復職者の心を軽くする「復職式」の様子と、「誰かの優しさ」に依存しない、合理的で持続可能な育休取得のセオリーに関する同社担当者インタビューをお送りする。

■「頑張りま宣言」で、肩の力を抜いて「おかえりなさい」
直近で職場復帰した社員や、これからする予定の社員が出席する「復職式」。小さい子どもを持つパパ・ママの柔らかい、でも少し緊張した様子が見受けられる。現場にはベビーカーに乗った赤ちゃんの姿も。
式典では、家事・仕事に対しての「頑張りま宣言」が育休復帰する社員よりなされ、上司から野菜で作られたブーケが送られた。


髙島社長からは「お子さんが『慣らし保育』で保育園に慣れていくように、皆さんも『慣らしワーク』で新しい働き方に慣れてもらうことが一番大事です。子どもが生まれる前の自分と比較する必要は全くないので、“100点は求めてはだめなのだな”、“周りの人にお願いしながらやればうまくいくのだな”というように、子どもを育てながら働くということを新たに身に着けてほしいと思います。スタートダッシュではなく、長く、いい仕事をしてもらうことをとても期待しています」というメッセージが伝えられた。

10年も続く「復職式」ということで、ある意味形式的になっているのではないかと思っていたが、育休取得社員を迎え入れる温かい雰囲気が伝わってくる式典だった。

■育休100%を支えるのは、「優しさ」だけじゃなくて「仕組み」
同社のすごさは、こうした温かな文化の裏に「超・合理的な仕組み」があることだ。
前述したように同社の育休取得率は100%となっており、社員全体の約48%を占める男性の育休率に関しては全国平均の2倍以上という驚異的な結果となっている。

これを支えているのは、単なる「お互い様」という精神論ではなく、業務を属人化しないためのAI活用や、徹底したDX化を目指す姿勢である。誰かが抜けることを「組織の生産性を高めるチャンス」と捉え、無駄な工数をどんどん削っていく。このプロフェッショナルな体制があるからこそ、周りも「しわ寄せ」をネガティブに捉えず、本人は安心して休めるというわけだ。
■「休む=アップデート」へ。人事担当者に聞く、新しい働き方
変化する育休を取り巻く現場を見守ってきた人事担当者に、復職支援のリアルな裏側を聞いてみた。
ーー復職者の不安の変化について 10年前の第1回から現在にいたるまで、復職者が抱える不安の内容や傾向に変化はありましたか?
10年前は「本当に元の場所に戻れるのか」といった不安も多かった印象です。しかし、復帰が当たり前の文化になった現在、不安の中身は「限られた時間のなかで、いかに成果を出し、自分らしいキャリアを築けるか」という前向きなものに変わっています。だからこそ、私たちは今、復職後のキャリアデザインを一緒に描くサポートに力を入れています。

ーー今後の展望と社会への影響について10年という節目を迎え、この「復職式」という文化を通じて、今後の日本の働き方や子育て環境をどのように変えていきたいとお考えでしょうか。
10年続けてきた今、私たちは「育休を取る」のはゴールではなく、通過点だと考えています。その先にある「復職したあとの自律的なキャリア」を次の当たり前にしていきたいです。育児期間をキャリアの停滞期ではなく、新しい視点を得る「成長の機会」と捉える。そんな空気感をこの復職式から広げていくことで、日本の働き方をより柔軟で、ワクワクするものに変えていくきっかけになればうれしいです。
ーー育休取得率100%という高い実績を維持するなかで、現場への負担(しわ寄せ)を抑えるための具体的な仕組みや工夫はありますか?また、その根底には「時間と成果を切り離して評価する」といった合理的な体制があるのでしょうか。
男性育休100%を支えるために意識しているのは、業務を「その人しかできない状態」にしないことです。チーム全体でバックアップできるよう、AIも積極的に活用しています。単に導入するだけでなく、全社的にAIを使いこなすスキルを高めることで、無駄と思える工数を削り、業務そのものをシンプルに整理し続けることを目指しています。
また、ご指摘の通り「長く働くこと」ではなく「出された成果」で評価する文化が根底にあることが、何より大きいと感じています。欠員を誰かの負担にするのではなく、組織の生産性を高める絶好のチャンスと捉えて、DX化や業務の見直しを常に意識しています。
■ハードとソフトで育休を攻略!
育休は取得者本人にとっても会社にとっても、長年の課題だった。しかしテクノロジーの進化と組織の合理化により、物理的な障壁は攻略しやすくなったと言える。
初めて尽くしで不安な育休取得者の心を温める「復職式」とDX化への高い意識のダブルコンボで「育休」を成功させ、会社が強くなる「仕組み」は、食卓の悩みに真摯に向き合い解決してきた同社だからこそ、最速でたどり着けた境地かもしれない。

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