「スター・ウォーズスカイウォーカーの夜明け」(2019)以来、7年ぶりとなる劇場版最新作「スター・ウォーズマンダロリアン・アンド・グローグー」が5月22日に全国公開。メガホンをとったのは、「アイアンマン」の監督で、自らも料理人役で主演した名作「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」で知られるジョン・ファヴローだ。(取材・文/平辻哲也)
・
【フォトギャラリー】「スター・ウォーズマンダロリアン・アンド・グローグー」
正味2日間という過密スケジュールのプロモーションだったが、ファブロー監督は上機嫌。本作の主人公は、日本の往年の時代劇「子連れ狼」をヒントに作られたとして知られているが、記者が「『子連れ狼』のことを何度も聞かれて、うんざりしないですか」とジョーク交じりに聞くと、「そんなことはないよ」と笑顔で返してきた。
本作の舞台はダース・ベイダーの死後、帝国が崩壊し無法地帯と化した銀河。厳しい掟に従い、人前では決して素顔を見せない伝説の賞金稼ぎ、マンダロリアン(マンドー)ことディン・ジャリン(ペドロ・パスカル)。彼は強大なフォースを秘めた幼い孤児グローグーと父子を超えた固い絆で結ばれている。各地で帝国の復活を狙う残党がうごめく中、新共和国の軍人ウォード大佐(シガーニー・ウィーバー)から協力を求められた2人は、新たな戦争を阻止するため、銀河の命運を懸けた壮大な戦いに挑む……。
シリーズではこれまでDisney+で展開してきたが、今回はIMAX向けの巨大なセットやテレビの予算・時間では使えなかった最新のVFXを駆使する一方、ミニチュア技術、アニマトロニクス、ストップモーションといった旧式の特殊効果も効果的に使われている。
記者が、ファブロー自身が主演・監督した「シェフ三ツ星フードトラック始めました」が大好きだというと、「映画作りは、まさに映画『シェフ』を通じて料理の世界から学びました」と話す。
「古い方式も新しい方式もあり、素材(材料)の選び方が重要です。しかし一番大事な共通点は『チームで作る』ということ。全員が同じビジョンに向かってまとめ上げるのです。ミシュランの星を狙うシェフのように高いスタンダードを作り、自分のプライドもチームのプライドもかけています。ビジュアルエフェクトに関しても『他の映画ならいいかもしれないが、この映画ではもっと高く行ってくれ』とみんながステップアップを目指しており、素晴らしいチームワークが発揮されました」
ドラマシリーズでは声の出演を果たしているファヴロー監督だが、「出演もしたかったのでは?」と尋ねると、監督は笑ってこう答えた。
「(共同脚本・製作の)デイヴ・フィローニが良い役を与えてくれたら本気でやりたいと思っていますよ。できれば、ジェダイの役がいいね」
本作で、長年のファンが劇場で最も驚くのは、映画の幕開けだろう。これまでの「スター・ウォーズ」といえば、ジョン・ウィリアムズの壮大なテーマ曲と共に、黄色い文字のオープニング・クロールが宇宙空間を流れていくのがお約束だが、本作にはそれがない。
「今までの『スター・ウォーズ』とは違うんだということをまず冒頭で伝えたかった」と監督は明かす。あえてオープニング・クロールを外し、代わりに本作独自のオープニングクレジットを入れたという。
「実は制作陣の間で『トップガン』の話が出ていたんです。劇中に出てくる宇宙船が、『トップガン』(の戦闘機)と同じように本当にこの世に存在しているというリアル感を出したかったんです。ジョージ・ルーカスはいつも『もっと速く』と言い、通常の『スター・ウォーズ』はジェットコースターのように一気に始まらなければなりませんが、今回はオープニングであえて少しスローダウンして宇宙船をゆっくり見せ、ルドウィグ・ゴランソンの曲を少し長めに流せるように構成しました」
日本のファンにとって見逃せないのが、本作の随所に漂う「ジブリ感」だ。ファヴロー監督もデイヴ・フィローニ氏も大のジブリ作品ファンだというが、その影響が最も色濃く表れているのが、なんと悪名高きジャバ・ザ・ハットの息子「ロッタ・ザ・ハット」とグローグーの絡みだというから驚きだ。
ロッタはハット族らしからぬ隆々とした肉体を持ち、両手で斧を振り回してマンドーたちの前に立ちはだかる恐ろしい敵だ。しかし監督は、ロッタの意外な一面についてこう語る。
「初めて会うとちょっと怖いですよね。でも、なんか『トトロ』みたいな可愛らしさがあるんです。『大きくて怖い存在なんだけど、ちっちゃいものに対してとっても優しい』というアーキタイプ(原型)としてすごく似ていると思います」
ロッタの目を通して見る自然に囲まれたグローグーの姿は、まさにジブリの世界観そのものだという。
「フレンドリーな部分はもちろんありますが、息をしているちょっと恐ろしい部分もあります。それは『もののけ姫』に通じるものを持ち合わせています」と、単なる「可愛さ」に留まらない、自然の畏怖としてのジブリ表現への深いリスペクトをのぞかせた。
2人の主人公のキャラクター造形についても聞いた。マンドーは素顔を見せず、グローグーは言葉を発しない。この制約が物語の深い原動力になっている。監督は旧三部作にあった様式化されたスタイルからの影響を語る。
「日本の『能』のマスクにも似ており、(彼らのテーマ)音楽が顔の役割を果たすようにしました。ただ、ペドロ・パスカルがここまで有名なスターになると思っていなかったので、顔を出せない掟は今となっては少しピンチですね(笑)」
劇中には、マニアックなファンのためのとっておきのシーンも用意されている。1977年の「スター・ウォーズ」の前に作られながら実際には使われなかった幻の機体「Yウイング(通称レッド・ジャマー)」を、スカイウォーカー・ランチの倉庫の裏から見つけ出し、ジョージ・ルーカスの許可を得て登場させたという裏話も披露してくれた。
「一般の人には誰も気づかないかもしれませんが、オタクだからこそ大好きな手作りの要素です」といたずらっぽく笑う。また、リック・ファミュイワをはじめとするシリーズのエピソード監督たちが、古い映画に出てくるような本物の人間らしさを出してカメオ出演しているのも、ファンにはたまらない要素だ。
最後に、AIや最先端のテクノロジーが進化する映画業界の未来について尋ねた。
「AIなどの技術によってより早く安く作れる傾向は見られますが、私はクオリティと手作り感、ノスタルジックな要素を守りたいと思っています。オーディエンスが一番見たいのは人間的な要素やキャラクターであり、新しい技術がそれを助けるのであれば良いです。しかし、人間のアーティストの部分は絶対に取って代われないものであり、技術の使い方次第では観客の心は離れてしまいます。映画の素晴らしい部分はしっかりと残していきたいと考えています」
ファンからは映画シリーズへの期待も高まるが、監督はいったん“待った”をかける。
「今回は3年の時間をかけて映画を作りましたが、テレビシリーズの制約から外れて想像力を駆使し、新しいことができました。マイナーリーグからメジャーリーグに行ったような気分です。公開されてどれだけの人が見てくれるかで、新たな可能性が生まれてくると思います」とファヴロー。本作は、2027年に迎える「スター・ウォーズ」誕生50周年を前に公開される新たなサーガの1ページとなるだろう。
【作品情報】
・
スター・ウォーズマンダロリアン・アンド・グローグー
【関連記事】
・
「マンダロリアン&グローグー」前夜祭!大勢のSWファンと一緒のカウントダウン大盛況
・
巨大戦闘ビークルの猛攻を難なく回避!「スター・ウォーズマンダロリアン・アンド・グローグー」本編映像が初公開
・
「マンダロリアン」ペドロ・パスカル&ジョン・ファブロー来日!中島裕翔はスター・ウォーズアンバサダーに!
(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.