村田夕奈監督が20歳で監督した映画「おとなになりたくなれますように」。第19回田辺・弁慶映画祭で映画.com賞を受賞したこの作品は、テアトル新宿で5月25日から28日の4日間、テアトル梅田で6月12日に上映される。
かつての友人が夢に出てきたという自身の体験を基に、村田監督が20歳の節目で制作された本作。この記事では、監督が強い思いをもってキャスティングした大熊花名実、園凜と、村田監督による鼎談をお届けする。(インタビュー・構成/日比楽那、撮影:笠川泰希)
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――まず、主人公・セナ役を演じた大熊さんは、どのように本作への出演が決まったのでしょうか。
村田:私はもともと、セナを演じてくれた大熊花名実ちゃんと、その親友・ミサキを演じてくれた光嶌なづなちゃんとは知り合いで。二人には、この作品の脚本が出来上がる前から基となったエピソードや詩を共有していたのもあって、企画が動き出したタイミングでオファーしました。
私は中学生のときに子役事務所に入っていて、花名実ちゃんは当時の事務所の先輩です。私が高校に入って映画を作るようになってからも仲良くしていて、たまに会って近況報告をして、その度にがんばろうって思うような関係になりました。
大熊:夕奈ちゃんとは関係が長く、「いつか一緒に映画を作りたいね」と話していたので、念願が叶って嬉しかったです。夕奈ちゃんが20歳だった撮影当時、私は22歳で、20歳の気持ちもまだ憶えてるし、少し時間が経って感じていることもあったので、このタイミングで一緒に映画を作る意味があると感じました。
――コウ役を演じた園凜さんは?
村田:(園)凜ちゃんとは面識がなかったんですけど、「ラジオ知らねえ単語」を聞いて、かわいいなって思っていて、脚本段階で、コウは凜ちゃんの表情や喋り方を想像して書いていました。それでもう凜ちゃん以外は思いつかなくて、えいやってオファーしてみました。
園:コウは夕奈ちゃんの高校の友達がモデルになっているので、私にできるかな?イメージと乖離しないかな?と思ったんですけど、「凜ちゃんをイメージして書いたから」と言ってもらいました。
ただ、当時、出演したことがあったのはMVだけで、役名があって、セリフがあるのは初めてだったので、自分にできるかはわからなかったんです。それでも、私がお芝居している姿じゃなくて「ラジオ知らねえ単語」で普段のおしゃべりをしている様子を見て、コウとして思い浮かべて脚本を書いてくれたと聞いて、参加を決めました。
――大熊さんと園さんは本作の重要なシーンで共演されていますが、二人はどんなタイミングで顔を合わせたのでしょうか。
村田:撮影当日ですね。夢のなかで二人の目が合うシーンを大事に撮りたいという思いからそのようにしました。自分が実際に見た夢をなるべく忠実に再現したいっていう実験でもあって、そのときの二人のリアクションが、できるだけ本物に近づくといいなと考えていたんです。二人もわかってくれて、集合して現場まで車で移動する時間や、撮影場所の学校に着いて準備する時間も、あんまりコンタクトを取らないようにしてくれました。
■「今まで出会ってきたいろんな人と重なって見えた」「でっかい音楽が鳴り始めるみたいな感動」
――教室で二人の目が合うシーンをどのように撮影されたのか伺いたいです。
大熊:現場でサウンドトラックをかけてくれてたこととか、その日、夕日がすごく綺麗だったこととか、一つひとつが積み重なって、撮影前からすごくいい雰囲気でした。
個人的にもちょうどその時期、自分がすごく影響を受けた撮影がクランクアップしたばかりだったり、新しく舞台の団体に入るタイミングだったり、自分のなかで別れと出会いが重なっていて。
いざ対面したら、凜ちゃんが自分が今まで出会ってきたいろんな人と重なって見えて、感謝とか後悔とか、申し訳ない気持ちとか、本当に大好きだっていう気持ちとかが、ガーって一気に押し寄せてきました。絶対泣かないようにしようと思ってたのに、結局そういう感情が涙となって出てきてしまったんですけど……。いくつもの奇跡みたいなものによって、あのシーンができたと思います。
園:同意です。花名実ちゃんと目が合ったとき、でっかい音楽が鳴り始めるみたいな感動があったんですよね。これまでの人生で過ごしてきた時間と、その日、教室で、制服を着て、川崎正貴さんの音楽が流れてて、夕日が綺麗で、そういう全部がバーンってでっかい音になって鳴ってるみたいな。
私はあの撮影のとき、泣かなくちゃいけないと思ってて。というのも、泣いてくださいって言われたわけじゃないけど、感情が涙につながるんだったら泣いてもいいって言われてて、自分でもイメージしてみると、多分セナの声を聞いて泣いてしまうだろうなって。でも泣きのお芝居なんてやったことないし、どうしようと思いながら現場に入ったんです。
そしたら、セナが話している姿から圧倒的な何かを受け取って、言葉を受け取るというより、セナが自分と対面して喋ってること自体にグオーって心が動いて、自分でもなぜかわからないけど、泣いていました。
村田:相手がいろんな人に見えたこととか、何を言われてるとかじゃなく何か言われてることに心を動かされたとか、それって自分が本当にこの作品でやりたかったことなんですけど、伝わりにくいことだともわかっていて。それが、こんなにもみんなと共有できたことが、まずすごく嬉しいです。
学校のシーンを撮影した日は、空気が違いましたね。他のシーンの撮影も全部楽しかったけど、その日は異質というか。夢のなかにいるか、過去に戻ったかのような。ワンシーンずつ撮り進めていても作業をしている感覚がなくて、二人を見ていても過去の自分たちと出会ってるみたいな気持ちになりました。
二人が親友として過ごした時間のシーンもバーっと撮っていったんですけど、その日がはじめましてのはずなのに二人が3年間一緒にいた空気感がちゃんとあって、不思議だな、と思いながら見ていました。
――学校での3年間のシーンはどのように撮り進めていったのですか。
村田:くっきりとした綺麗な映像はカメラマンの萩原(脩)さんが撮ってくれて、他の淡い質感の映像などは私がおもちゃのカメラで撮りました。どちらも主に、撮影の合間で回しました。
――台本にト書きがあって、演出をつけて、という作り方ではなく、即興的に二人が一緒にいる様子を撮影していったんですね。
村田:そうですね。欲しい画があって構図を伝えて撮ってもらったカットもあるんですけど、二人は自然にそこにいてくれました。
大熊:最初は、コウに強い気持ちを向けなくては!と意気込んでいたので緊張したんですけど、凜ちゃんがすごく自由に、フラットにいてくれたおかげで、コウと3年間一緒に過ごしたセナとしての実感が溢れてきたというか。撮影の萩原脩さんと監督も自然にカメラを回してくれたので、私も楽しむことができました。
園:夕奈ちゃんから事前に「その場で何が起きるか、何が生まれるかを大事にしたい」と言われて、言葉の意味は頭で理解してるけど、お芝居の経験もないし、どうしたらいいんだろうという不安があって、私もすごく緊張していました。
でも園凜じゃなくてコウとして過ごすぞ、と思ったわけでも、花名実ちゃんじゃなくてセナとして接するぞ、と思ったわけでもないはずなのに、目が合ったら、手をつないだら、その場で起きることを大事にするってこういうことか、とわかりました。監督から参考としてもらったコウのイメージの曲を聞きながら、一人で校内をうろうろしたり、ベンチに寝転んだりしたのもいい思い出です。
大熊:示し合わせたわけではないんですけど、私もこの撮影のために作ったプレイリストを聞きながら、同じようにベンチに寝転んで過ごしました。私は私が演じたセナという役を村田夕奈に重ねる瞬間が多くて、監督がどんな思いでこの作品に臨んでいるかはよくわかっているつもりだったので、監督にも思いを馳せながら、学校という特別な空間のなかにいましたね。
■「この映画に出会えたから全部正解」「理解するより、何を思ったかを大切にしてもらえたら」
――完成した作品を観て、いかがでしたか。
園:教室のシーンは撮影したときにはセリフがあったんですけど、完成した作品だとゴーっと音が鳴っていて会話は聞き取れなくて、でも、たしかにこういう感覚だったな、と、現場で感じたことに近い編集だと思いました。
大熊:完成した作品を観て、ずっと一緒にやりたいね、と言っていて、私自身、素晴らしい才能だと思ってる村田夕奈と一緒に作品を作れたんだ、と実感しました。
人生って、何を選んでも絶対に後悔するじゃないですか。だから私のポリシーとして、その選択が正解だったと思えるように生きようと考えているんですけど、それでも遠回りしてしまったな、と思うことはあって。でも、違う生き方だったらこの映画に出会えなかったと思うと、全部正解だったなって、胸を張ってそう思えて、すごく幸せでした。
――この作品で描かれている夢や記憶、忘れることや思い出すことについて、大熊さんと園さんが本作への出演を通して考えたことを伺いたいです。
大熊:監督がよく「忘れるためにこの映画を作りました」と言うんですけど、私はもともと忘れることを怖がるタイプの人間で。でも、この映画に出演して、撮影を振り返ったり完成を観たりして、少しずつ忘れることを許容できるようになってきた気がします。
特に、第五章の「道」を観て、自分が演じた役柄が出会いと別れを体現しているのを客観的に観て、自分のなかでいい変化が起きた気がします。
園:私も終わることとか離れること、忘れることが怖いと思っていて、たとえば楽しみにしている日があったら、楽しみだと思うのと同時に、終わるのやだなって考えてしまうんですけど。でも終わったとしても消えてなくなるわけじゃない、その出来事を通じて感じたことは残るし、血肉になると信じて、もし忘れてしまっても思い出せるから大丈夫って。もともとそう考えるのが好きなんですけど、この作品に参加したことで、もう一度強くそう思い直しました。
――最後に、テアトル新宿、テアトル梅田で本作をご覧になる方々に向けて、ひと言ずついただきたいです。
大熊:この作品って、観るタイミングによって、セナとコウや他の登場人物に、誰を重ねるかが変わる作品だと思います。観る人それぞれの思い出と重なるんじゃないかと思うので、その感覚を大切にして、誰かのことを思い出したら、連絡とかしてみてほしいなって。そういうきっかけになるといいなと思います。
園:本当にどの時期に観るか、どの季節に観るかによって、感じ方が変わる作品だと思います。作りとしてはわかりやすくない映画かもしれないけど、 理解するとかっていうより、これを観て何を思ったかを大切にしてもらえたら嬉しいです。
【田辺・弁慶映画祭セレクション2026】上映日
テアトル新宿:5月25日(月)〜 5月28日(木)
テアトル梅田:6月12日(金)
・各回20:40より上映開始予定
・上映後アフタートーク開催
5月25日登壇者:大熊花名実、光嶌なづな、園凜、端栞里、小春、千田つむぎ、清水元太、下川恭平、野口天音、村田夕奈監督/松崎まこと(MC)
【作品情報】
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