【F1】アストンマーティン・ホンダ「我慢のレース」は夏までアロンソ「自信の差でゲインできるのは0.05秒くらい」

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【F1】アストンマーティン・ホンダ「我慢のレース」は夏までアロンソ「自信の差でゲインできるのは0.05秒くらい」

5月22日(金) 16:45

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カナダGPの舞台──ジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは、"万博跡地"だ。

1967年に開かれたモントリオール万博の際、地下鉄建設で出た土砂を使ってセントローレンス川を埋め立てて作られた人工のノートルダム島は、水と緑豊かな公園として整備されて今に至る。

当時フランス館として建築された白亜のモダン建築や、アメリカ館として整備された球体バイオスフィアが、見事に自然と調和してそこに存在している。そしてそのことに驚きを感じないほどに、60年の時を経た今もなお、この公園の顔として現代的な雰囲気をたたえている。

パドックを歩くランス・ストロール(左)とフェルナンド・アロンソ(右)photo by BOOZY

パドックを歩くランス・ストロール(左)とフェルナンド・アロンソ(右)photo by BOOZY



そんな美しい風景のサーキットは、突然、牙を剥く過酷な場所でもある。

4本のストレートをヘアピンとシケインでつないだレイアウトは、洗練された空力性能よりも、加速・減速の鋭さと、縁石を乗り越えるしなやかさが求められる。

アストンマーティン・ホンダは、前戦マイアミGPでようやく今季初のトラブルフリーの週末を過ごし、シーズンのスタート地点に立った。次はパフォーマンスの向上に目を向けるべきフェーズに入ったが、空力パッケージやパワーユニットの物理的な変更はできない。

しかし、電子制御面の改善に注力することはできる。それによってドライバビリティを改善し、ドライバーが自信を持ってマシンの限界まで攻められるようにしようというわけだ。

ホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネジャーは、ドライバーのスロットル開度以上にエンジンを回し、モーターで制動をかけて発電をする場面がしばしば発生する2026年規定では、そういったパーシャルスロットル時の制御をいかにドライバーの感覚に近づけるかが難しいという。

「今年はパーシャルスロットル時やエンジンブレーキ時でも、エンジンの負荷は高くなっています。ですので、去年までと比べてかなり異なる領域でのオペレーションになっていて、そのフェーズにおいていくつか特殊な挙動が出ている状況でした。

そういった部分のコントロール性を向上させるべく、今は取り組んでいるところです。特にドライバビリティはラップタイム改善のメインになる部分ですし、その最適化に集中しています」

【稼げるラップタイムはごくわずか】その背景には、パワーユニットの制御のみならず、ギアボックスの挙動も密接に関連している。

前戦マイアミGPでは、ギアボックスの不調によってタイムロスを喫する場面があった。「クイックシフト」と呼ばれる、トルク伝達をカットする必要のないシームレスシフト機構がスムーズでなければ、コーナーから立ち上がっていく際のアップシフトも加速に影響を及ぼすだけでなく、ダウンシフトがブレーキング時の挙動を乱すことにもつながる。

アストンマーティン・ホンダが改善しなければならないドライバビリティというのは、パワーユニット単体の話ではなく、ギアボックスとの連係を含めた部分のことだ。

アストンマーティンのチーフトラックサイドオフィサー(CTO)マイク・クラックはこう説明する。

「今年はシフトアップやシフトダウンも含めたドライバビリティ全体の複雑さが増している。ダウンシフト時にはるかに大きなリチャージができるようになった一方で、ダウンフォースレベルは小さくなっている。

そして我々は、ギアボックスに関しては新参者だということも忘れてはならない。だからこれは複雑な問題で、徐々に理解を深めていっているところなんだ。ギアボックスは非常にチャレンジングな問題だ」

フェルナンド・アロンソはこうしたドライバビリティの改善によって、コーナーをより攻めていけるようになるだろうと語る。

しかし、それによって稼げるラップタイムはごくわずかであり、トップから2秒も3秒も後れを取るアストンマーティン・ホンダにとっては焼け石に水だという。

「パフォーマンス自体は変わらないと思う。ダウンシフトやアップシフトやエンジンブレーキングをスムーズにして、ドライバビリティを改善する必要があることは事実だ。それによって、コーナーにアタックする際に少し自信が持てるようになる。

でも、その自信の差でゲインできるのは、おそらく0.05秒くらいだろう。今の僕らが後れを取っている2秒や3秒の差を埋められるわけじゃない。だから(相対的な)パフォーマンスを劇的に変えることにはならないよ」

アロンソの言うように、車体にもパワーユニットにもアップデートがまだ入らない以上、ライバルと戦えるところまでギャップを縮めるような根本的なパフォーマンスアップは不可能だろう。ダウンフォース不足とパワー不足というのが根本的な問題であり、それらを改善することはできないからだ。

【2月から続いた長いトンネルは脱出】チームとしては、2027年に向けた中長期的な視野で開発計画を練り直し、車体とパワーユニットの両方の大きなアップデートが完成する夏までは目先の小さなゲインを追わない方針を固めている。つまり、夏までは我慢のレースが続く。

それでも、すでに明るい兆候は見え始めていると折原GMは語る。

「自分たちのパワーユニットの改善すべき点がどこなのかは理解しています。どのようにパフォーマンスを向上させるべきかというアイデアもあります。

ADUO(追加開発アップデート機会の救済措置)によるアップデートに限らず、燃焼系とフリクションロスの低減に関して改善が必要なのは認識していますし、ダイナモ上ではすでにいくつかポジティブな結果も出ています。具体的な数値は申し上げられませんが、自分たちが進むべき方向性が間違っていないということもわかっています」

しばらくは苦しい時期が続くが、その先には光が見え始めている。実際に、2月から直面し続けてきた問題は解決し、長いトンネルからは脱出した。

「フラストレーションを感じながら暗い顔でレースをしても仕方がないし、我々にはやるべき仕事がある。現状のマシンパッケージからパフォーマンスを最大限に引き出し、現状を受け止めて努力し続けるしかない。

負け犬のような態度を取っても何も変わらない。重要なのはモチベーションを高く保ち、プロ意識を持って自分たちの最善を尽くすというルーティーンを確立することだ」(クラックCTO)

ふだんのジル・ヴィルヌーヴ・サーキットは公園として使われているだけに、金曜の走り始めは非常にダスティで、低グリップ状態からの走行となる。それが金曜、土曜、日曜と急激に変化していく。

そして今週末は、日曜に雨の予報がある。何が起きるかわからない。

60年にわたって美しさをたたえ続けるサーキットは、時に牙を剥く。牙にやられる者がいれば、それによって恩恵を受ける者もいる。

しかし、その幸運は誰にでも訪れるものではない。それをつかみ獲るべく努力し、その場所にいた者にしか、つかみ獲るチャンスはやって来ない。

実力では届かない場所にいるからこそ、アストンマーティン・ホンダには最大限の努力で、可能なかぎり手を伸ばしてもらいたい。



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