せっかくの癒しの時間のはずなのに、なぜかピリついた空気が流れていたら……あなたならどう感じますか?
今回は、昔ながらの銭湯で“ある違和感”に直面した女性のエピソードをご紹介しましょう。
「そこ私の場所!」すごい威圧感で声をかけられて
田辺真紀さん(仮名・35歳)は、仕事帰りに近所の昔ながらの銭湯へ立ち寄りました。
「ここに来ると、なんだか気持ちがリセットされるんですよね」
古いながらも隅々まで掃除が行き届いたその銭湯は、どこか懐かしく心がほどけていくような空間でした。湯気の向こうには味わい深い富士山のタイル絵があり、日常の疲れを優しく包み込んでくれるそう。
その日も真紀さんはゆっくりと体を洗い、湯船に浸かろうとしたその瞬間でした。
「突然、『あっ! そこ私の場所』と浴場に響き渡る甲高い声がして、私はビックリして思わず肩をすくめてしまったんですよ」
声の主は、湯船の縁に置かれたタオルや洗面器を指差しながら、鋭い視線を向けてくる60代くらいの女性。まるで自分の家に侵入されたかのような剣幕です。
「どうやら湯船の縁に置かれたタオルなどで、場所取りをしているようでした。私はたまにしか来ないので分かりませんが、いつも当たり前のようにこうやっているという威圧感がすごかったんですよね」
女性は「そこは私が座るとこなんだから、違うところに入りなさいよ」と一方的に言い放ちながら、当の本人は洗い場で体を洗い続けています。しかもその間も、何度もこちらを振り返っては不満げに視線を送り、ブツブツと文句を言い続けていました。
静かに現れた“小柄なおばあちゃん”
「場所取りおばさんが湯船に入っていない時も、お気に入りの陣地に他人が侵入すると怒るので、周りの人たちも困った顔をしていて」
せっかくの癒しの時間が台無しになり、真紀さんは思わずため息をつきました。
「するとその時、脱衣所の方から、この銭湯の番台の70代ぐらいの小柄なおばあちゃんが、白い割烹着姿でゆっくり歩いてきたんですよ」
空気を読むように現れたそのおばあちゃんに、女性は待っていたかのように「ちょっと聞いてよ! この人、私の場所取ろうとしているのよ!」と声を張り上げたそう。
「私は内心、『え〜! 私は一応場所取りおばさんの言うことを聞いて、ちゃんと違う場所に入ったのに……』と、あまりのことに面食らってしまいましたね」
番台の女性がとった、意外な行動とは?
しかし番台の女性は慌てる様子もなく、ただ静かにうなずきながら問題の常連客の前に歩み寄ると、「これ、全部あなたの?」と穏やかに確認しました。
そして次の瞬間、何の躊躇もなく湯船の縁に置かれていたタオルや洗面器をひとつひとつ手に取り、片付け始めたのです。
「そしたら場所取りおばさんはムッとして『なにするのよ! 私は常連なんだから!』とヒステリックに声を荒げたんですよ」
その言動は、自分の行為を無理やり正当化して、周囲を従わせようとする強い圧を感じさせるものでした。
「すると、おばあちゃんが優しく『常連さんはね、場所を取る人じゃなくて、場所を譲る人なの』と諭すように言って、湯船にいた人たちがハッとして思わず顔を見合わせたんですよね」
女性は言葉を失い、口を開けたまま固まってしまいます。
「そしておばあちゃんは『ここはね、みんなで温まるところよ』と、タオルと洗面器をまとめて渡すと、『荷物は棚に置いといたら? お湯は逃げないから』と、“場所取りおばさん”に語りかけたんですよ」
銭湯の平和は、この人が守ってくれている
やわらかな口調でありながら、逃げ場のない正論。その場にいた誰もが、胸の中で深くうなずいていました。
すると女性の顔はみるみるこわばり、落ち着きを失った様子で視線を泳がせ、「……わかったわよ」と観念したように呟くと、ようやくタオルを手に取りしぶしぶと片付け始めたそう。
「その瞬間、さっきまで変な緊張があった浴場の空気がふっと緩んで、再び癒しの空間に戻ったんですよね」
ようやく落ち着いて湯船に身を沈めた真紀さんは、しみじみと感じたといいます。
「この銭湯の平和は、あのおばあちゃんが守ってくれているんだ。それならこれからも安心して通えそうだな」
理不尽な振る舞いにも、声を荒げることなく正していく。その静かな強さこそが、この場所の日常を支えているのだと真紀さんは心からホッとしたのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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