2008年に東京・世田谷で「串カツ田中」をオープン。大ヒットを受けて急速に拡大し、現在は約350店舗を展開する
『週刊プレイボーイ』で連載中の「坂本慎太郎の街歩き投資ラボ」。株式評論家の坂本慎太郎とともに街を歩き、投資先選びのヒントを探してみよう。金のなる木はあなたのすぐ近くに生えている!
今週の研究対象
串カツ田中の新業態(ユニシアHD)
「串カツ田中」を展開する串カツ田中HDが、社名を変えたというのをご存じ? その決断の裏にあったのは、ビジネス戦略の大転換。これは投資のタネのにおいがするぞ~!
坂本
五反田の昼どきは、いい店ほどすぐ埋まるなぁ。お、新しいとんかつ店があるね。「厚切りとんかつ厚とん」。外から見ても活気があるし、ほぼ満席。入ってみましょう。
助手
ウリは庄内豚の厚切りロースカツ定食ですね。税込2970円かぁ。ランチとしては少し高いけど、羽釜で炊いたご飯が出てくるあたり、ただの定食より"ごちそう感"があります。ご飯やキャベツに加え、漬け物もお代わり自由みたいだし。
坂本
パクチーを添える食べ方や最後にカツ丼風に締める食べ方も提案してますね。食べ方も含めて体験として売ろうとしている感じがある。
助手
来ました。量がすごい!厚切りというだけあって、肉の存在感が強くておいしいけど、脂身も大きくて、後半はちょっと重いかも。
坂本
新店らしい課題ですね。体験を売って単価を取れる業態に育てようとしているけど、まだ正解が見えてないんでしょう。どこの会社がやっているのかな......あっ、ユニシアHDの新業態か!
助手
なんの会社でしたっけ?
坂本
もともとは串カツ田中HDで、今年3月に社名を変えたんです。複数業態を持つ外食グループを目指すという意思表示だとか。
助手
へぇー。でも、誰でも知ってる「串カツ田中」っていうブランドを引っ込めるなんて、よほどですね。
坂本
居酒屋は景気に左右されやすいし、若い世代の酒離れや深夜帯の人手不足などもあって課題が多いんです。そこで、昼も夜も集客できて、酒に頼らずとも客単価を上げやすい業態を増やそうとしてるわけ。
助手
とんかつは有望なんですか?
坂本
ええ。家では作りにくい、高単価を狙える、外国人にも喜ばれる、の三拍子がそろってるからね。まず、とんかつは家庭で作ると油の処理が面倒で、外で食べることになりやすい。そして肉料理はそもそも高単価を狙いやすいんだけど、厚とんは食事を特別な体験として演出することで3000円近い単価を実現しています。映えるから、SNSでの拡散なども期待できる。加えて、とんかつって外国人観光客にも人気の日本食なんですよ。「揚げた厚切りの豚肉」の魅力って直感的に伝わるから。串カツで培った揚げ物のノウハウを生かせるのも有利です。
助手
確かに、串カツ田中のノウハウを生かせるのに、けっこう違う種類の強みがありますね。
坂本
そのとおり。業態を広げて選ばれるシーンを増やしたほうが事業の安定性は高くなる。そういう意味では、郊外型イタリアン「PISOLA」を昨年買収したのにも注目です。駅前の居酒屋、郊外のファミリー向けイタリアン、都市型の高単価とんかつ。使われる時間帯・客層・立地がそれぞれ違うから、ラインナップとして強固なんです。
助手
業態の複数化で成長の余地はありそうなんですか?
坂本
同社は2028年11月期に売上高480億円規模、総店舗数604店を目指しています。2025年11月期の売上高は約211億円、総店舗数は357店だったので、計画どおりなら会社のサイズはかなり変わります。株式市場の評価も、居酒屋チェーンからガラッと変わるだろうね。
助手
おおっ。でも、PERは48倍近く。高すぎて投資しづらいなぁ。
坂本
今期は買収や出店投資で純利益が減ってPERが高く出てしまうんです。ただ、居酒屋一本足からの脱却を狙う成長株として、長期投資で期待できる銘柄だと思います。
今週の実験結果
PERが高く見える理由は買収などが原因。気にしすぎる必要はありません
構成/西田哲郎撮影/榊 智朗
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