映画の製作と配給を主な事業とする「K2 Pictures」は5月16日、カンヌ国際映画祭の併設マーケット「Marche du Film」の公式カンファレンスにて、本裕一郎氏(三菱UFJ銀行 常務執行役員)、本柳祐介氏(西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー)と共に登壇し、日本映画におけるファイナンスの現在地と未来をテーマにしたセミナーを実施。さらに、翌17日にカンヌのJWマリオット・カンヌにて、K2 Picturesとしては2回目となる会見を開き、今後のラインナップと共に、現在開発中の企画や監督たちの発表を行った。
17日の会場には、15の国と地域より約80人の記者や映画関係者が集まり、会見冒頭、登壇したK2 Picturesの紀伊宗之代表取締役CEOより、コーポレートコピーである【ATTACK.】を発表。“遠回りでも、困難でも、まだ誰も踏み込んでいない道を選ぶ”、というコンセプトのもと、既存の価値観や境界線に挑み、世界を驚かせる新たな映画体験を世界に発信していくという決意を表明。さらに、2024年に同じくカンヌにて発表した映画製作ファンド・K2P Film FundⅠ(ケーツーピーフィルムファンドファースト)の進捗および成果についても説明し、今年2月に総額約50億円規模でクローズした同ファンドの現状と、今後の展開について報告した。
ラインナップの一つとして、歌舞伎俳優・市川團十郎が主演し、三池崇史監督が自身初のドキュメンタリー作品となる映画「襲名」について、特報映像を本会見で世界初公開。今年9月公開が決定したことも新たに発表した。
また、会見ではK2 Picturesの製作を担うプロデューサー(小出大樹、高橋大典、鈴木徳至、上浦侑奈)の紹介や、会場に駆けつけていた永田琴監督も急遽登壇。永田監督はこの会見で発表された、岩井俊二が企画プロデュース・脚本を務め、K2 Picturesが製作する「藻屑蟹」について「(原作の)小説を読んだとき、私は非常に衝撃を受け、正直に言って恐ろしさを感じました。なぜなら、福島第一原発事故の後、除染ビジネスを通じて膨大なお金が動き、それが人間の強欲さや欲望をまざまざと浮き彫りにしていたからです。そのため、最初は、この物語は自分が向き合うにはあまりに困難なものだと感じていました。しかし、前作(「愚か者の身分」)を制作する中で、人間の欲望の裏側に隠された孤独や愛について考え続けてきました。その経験を経て、この映画、この新しいプロジェクトを通じて、人間の欲望というものをさらに深く探求してみたいと思うようになったのです。社会問題の背後にある、実に深い人間ドラマを描き出したいと思っています。ぜひ、このプロジェクトの今後にご注目ください。本日は本当にありがとうございました」とコメントした。
K2 Picturesが推進するK2P Film FundⅠは、今年2月にクローズし、総額約50億円規模の資金を調達。主な投資企業として、三菱UFJ銀行、日本政策投資銀行をはじめとする金融機関や事業会社が参画し、日本映画における新たな資金調達モデルを構築したことを発表した。現在の進捗として、すでに3作品が完成(うち1作品は今年2月に劇場公開)し、3作品がポストプロダクション中で、今年6月から12月にかけては5作品の公開を予定している展望を語った。また、年内に5作品がクランクイン予定と、継続的な製作・公開体制が構築されていることも報告した。
■発表済み作品
・「禍禍女」監督:ゆりやんレトリィバァ/2026年2月6日
・「ルックバック」監督:是枝裕和 /2026年公開
・「トロフィー」監督:孫明雅 /2026年7月10日公開
・「わたしの知らない子どもたち」監督:西川美和 /2026年10月16日公開
・「このごにおよんで愛など」監督:広瀬奈々子/2026年11月27日公開
・「国境」監督:井筒和幸 /2027年公開
【企画発表作品・監督コメント】
●劇場用アニメーション映画「GIGANT」
「GANTZ」の原作者・奥浩哉の人気コミック「GIGANT」の劇場用アニメーション映画。あることをきっかけに巨大化してしまうことになったセクシー女優パピコが、愛する彼を守るために巨大化して未知の怪物と戦うSFセクシーヒロインアクション。K2 Picturesで初のアニメ映画企画。
●永田琴監督作品「藻屑蟹(仮)」
「愚か者の身分」は昨年の釜山国際映画祭でコンペティション部門に選出され、主演の北村匠海、林裕太、綾野剛の3人が揃ってThe Best Actor Awardを受賞する快挙を達成。歴史的権威の高い日本の映画賞である第35回日本映画批評家大賞にて作品賞/監督賞/主演男優賞/新人男優賞の4部門を受賞するという快挙を成し遂げた永田監督が描く東日本大震災後の福島を背景に、原発事故による放射能汚染と補償金問題、除染ビジネスの裏側や被災者遺族など、現地の人々が抱えた分断を描く社会派ノワール作品。脚本は原作者の赤松利市と映画監督、脚本家の岩井俊二で、企画プロデュースも務める。
<永田琴監督コメント>
紀伊宗之さんはやんちゃでありながら、繊細で鋭い感性を持ち合わせた、頼もしい人です。
今の日本で、原発に関わるこの企画を引き受けてくれるプロデューサーがほかにいるでしょうか。
大げさではなく、この企画は紀伊さんがいなければ成立しなかったと思います。
そして今回は、師匠でもある岩井俊二さんに脚本を書いていただくというこの巡り合わせに、
ありがたさと同時に大きな責任を感じています。
K2 Picturesの日本映画界に風穴を開ける新しいファンド方式の成功を心から願うとともに、その先に新しい日本映画界の未来が拓かれていくことを期待しています。
<企画プロデュース・脚本:岩井俊二コメント>
赤松利市という作家を知ったのはテレビ番組。続けて好きなYouTubeチャンネルにも登場し、まずはこの人物の人生に興味を持ちました。社長業から一転、原発事故後には除染作業員に従事。大藪春彦新人賞を受賞したのが62歳。当時彼はホームレスで、ネットカフェでパソコンを借りて原稿を書いていた。そんな作家が一体どんな小説を書くのだろうと最初に手に取った小説が「藻屑蟹」だった。ご本人の除染作業員の実体験を基に描かれたその内容は実に衝撃的で、そんな話を永田琴にすると、しばらく反応がなかったが、久方ぶりに会った時に、「この作品やりたいです!」と。決して軽くない原作。この作品を自分に落とし込むのにも、彼女なりにかなりの時間がかかったようで。原発事故のあった福島を舞台に映画を作る。同じ東北地方出身の自分にとっても意義のあるプロジェクトである。同時に赤松利市というオンリーワンな作家とのコラボレーションも意義があると感じている。
●加藤拓也監督作品「NAP(仮)」
演劇界で注目を集め、ロンドン、台北公演をはじめグローバルに活躍。時代性を落とし込んだスタイリッシュな作品を生み出す新進気鋭のクリエイター。人前で食事ができない「会食恐怖症」の主人公がある日「睡眠アレルギー」にかかる。現実とフィクションが入り混じる中、三大欲求を共有できない恋人たちはどうするのか。「恋人らしさ」に代表される、人が無意識に受け入れている「らしさ」に疑問を投げかける実験的な映画。日本、フランス、アイスランドの国際共同製作作品。
<加藤拓也監督コメント>
「誰かといると喉が閉じる」ということを、この作品のなかでは恋愛映画として描きます。食べるということや眠るということは、他者と何かを共有する行為です。それができない主人公・永茉の、旅の中で眠れない夜と沈まない太陽を重ねながら、「共有する」とはどういうことかを問いたいと思います。
●片山慎三監督メキシコホラー
ポン・ジュノ監督の助監督を務め、映画「岬の兄妹」「さがす」、配信ドラマ「ガンニバル」「ガス人間」の片山慎三監督による、メキシコ×Jホラー企画。アメリカのMiércoles Entertainment(ミエルコレス エンターテイメント)およびメキシコのThe Lift(ザ・リフト)とパートナーシップのもと開発中。
●大友啓史監督作品「コンデコマ(仮)」
「るろうに剣心」シリーズ、Netflix「10DANCE」などの大友啓史監督作品。第一次世界大戦前夜、日本発祥の柔術を携え世界へ渡り、後にグレイシー柔術、さらにはUFCやMMAなどの現代格闘技へとつながる潮流を生んだ男・前田光世(コンデ・コマ)。国境を超えた壮大な柔術の歴史とこの男の謎に迫るアクション超大作。日本、ブラジル、アメリカとの合作を予定。
<大友啓史監督コメント>
ある日、紀伊さんから連絡があった。一緒に飲んだ時に僕が話した企画を、新しく立ち上げたK2 Picturesで是非実現したい、という内容だった。10年来考えていた、どこに話しても誰に話しても、日本映画の土俵ではまるで誇大妄想狂であるかのように(笑)扱われていた企画。色々話したけど、「絶対面白いやん」という紀伊さんの一言がすべてだった。 立ちふさがるであろうリスクや困難も含め、面白いと思うものに、そしてハードルが高いものにこそ、純粋に、どん欲に真正面からぶつかっていく。どうやらそれが紀伊さんの、K2 picturesのファイトスタイルらしい。他者がやらないこと、手を出せないことをやる、日本映画をかき回して面白くする。その志と挑戦に共鳴しつつ、未来に向けて。「映画という戦場」を共に走りながら、一つ一つ不可能の壁を取り除いていきたい。よろしくお願いします。
●ノ・ドク監督作品「私の先生」
日本と韓国の共同製作で、2013年の上海国際映画祭最優秀アジア新人賞を受賞した「恋愛の温度」で脚本・監督、Netflixシリーズの「グリッチ青い閃光の記憶」で監督を務めるノ・ドク監督と、「狐狼の血」、Netflixシリーズ「極悪女王」の脚本家・池上純哉のタッグで開発中。
<ノ・ドク監督コメント>
今回、ずっと映画として描いてみたいと思っていた題材を開発しています。
その物語を、日本のクリエイターたちとともに新たな視点から見つめ直す機会を提案してくださったK2 Picturesさんに深く感謝しています。
まだ開発段階ではありますが、このコラボレーションが今後どのような映画として結実していくのか、私自身も大きな期待を抱いています。
●藤谷文子監督作品「HOLD(仮)」
女優として庵野秀明監督作「式日」、ミシェル・ゴンドリー監督作「TOKYO!」などで主演を務める一方、小説執筆や脚本家としてパク・チャヌク監督やデイブ・ボイル監督と共同脚本を手がける藤谷文子の長編初監督作品。現代の京都を舞台に、見知らぬ二人の女性—日本人女性と外国人女性―が運命的な絆で結ばれ、それぞれの人生がうごめきだすロマンティックドラマ。
<藤谷文子監督コメント>
この脚本を最初に書いたのは2015年だった。母と子、そして、異文化間のラブストーリーを書いた。その後10年の間に私自身が二児の母になり、知っていた自分の闇を消化できたと思ったら、違うところからドス黒い闇が予期せぬ形で顔を出してきたり(ところてん式か私の心は)色んな別れや新しい出会いや再会もあって、やっと。それら全部のフィルターを通して書き直した脚本を監督出来る、それは、私の想いみたいなものを信じてくれるK2ピクチャーズさんと、三宅はるえプロデューサーがいるから。でも、まだこれからです。今からです。どんな物が出来上がるか、楽しみにしていてもらえたらと思います。
●金子実怜奈監督作品「UFO Club」
今年のウディネ・ファーイースト映画祭の企画マーケットにも選出され、国際的にも注目を集めている本作は、デザイナー藤原ヒロシ企画の“NIKE”の短編映画の監督も務めた金子実怜奈監督による長編デビュー作品。“理解されない孤独”を抱えた少女が、UFO探しを通して他者と出会い、自分の世界を広げていく、カミングエイジ&SFムービー。“自分を宇宙人だ”と語る少年・ナカジマとの出会いをきっかけに、主人公・ヒナは、これまで見えていなかった人々の感情や、小さな美しさに触れていく。
●二宮健監督作品 手塚治虫生誕100周年プロジェクト「人間昆虫記」
手塚治虫生誕100周年プロジェクトとして始動する「人間昆虫記」。日本が世界に誇る“マンガ文化”を生み出し、“マンガの神様”と呼ばれる手塚治虫が遺した作品の中でも、最も先鋭的で、時代を予言していたとも言える問題作「人間昆虫記」を、今回、日本発・世界照準のダークミュージカルとして映画化。今年2月にはベルリン国際映画祭併設マーケットEFM「Spotlight on Japan」にて公開ピッチを実施。世界に向けて、本格始動した。監督を務めるのは、「チワワちゃん」「真夜中乙女戦争」などで国際的評価を集める二宮健。手塚治虫が遺した“禁断の傑作”が、圧倒的な音楽と映像体験によって、新たに世界に発信する。
2024年の映画製作ファンド組成発表から2年。ファンドの資金調達の成果、そしてその資金を活用した映画製作の具体的な進捗を提示し、新たな挑戦における現在地をカンヌで発表。K2 Picturesは今後も、クリエイターとの強固な連携のもと、国内外に向けて質の高い作品製作を推し進めていくとしている。
【作品情報】
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