パチンコ店が次々と「クレーンゲーム専門店」に。元営業マンも驚く“リピート率8割”の衝撃と、Z世代・家族を狙う収益の柱

クレーンゲームが遊戯業界に新たな旋風を巻き込むか

パチンコ店が次々と「クレーンゲーム専門店」に。元営業マンも驚く“リピート率8割”の衝撃と、Z世代・家族を狙う収益の柱

5月16日(土) 15:54

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パチンコ業界が狙う新市場

パチンコホールの店舗数が減少傾向にある一方で、アミューズメント業界ではプライズゲームが存在感を強めている。日本アミューズメント産業協会によれば、2023年度のプライズゲーム売上は3643億円で、業界売上全体の68%を占める。

業界大手のマルハン東日本カンパニーが都内で運営する、アミューズメントブランド「ME TOKYO」もその先行事例だ。マルハン東日本カンパニー営業部部長の高原安未氏は、「クレーンゲーム事業はもともとゲームセンター部門の延長にありましたが、近年は明確な経営戦略のもとで拡張が加速しています」と話す。

遊技市場は過去10年で1.5倍に拡大し、インバウンド需要も追い風となった。その成果は数字に如実に表れており、マルハン東日本では既存のパチンコ事業も堅調に推移しているなか、現在7店舗あるクレーンゲーム事業もまた、同社の店舗運営力や集客ノウハウを生かした新たな収益領域として着実に存在感を増している。

景品を獲得して持ち帰るというわかりやすい顧客体験が、若年層や女性客にも広がる理由のひとつになっており、なかでも「ME TOKYO」は、ターゲットを18〜24歳のZ世代女性に絞り込み、来店客の8割以上を占める。「来ること自体がイベントになる空間」を目指し、若いスタッフの感性を活かした内装設計、非常階段を鏡で加工したフォトスポットなど、SNSでの自然な拡散を誘発する仕掛けが随所に施されており、ハロウィンには開店前に200人が列をなした。

地方でも、こうした事例に触発されるように、パチンコ業界の各社もクレーンゲームへの参入を加速させている。その一つが宮城県を拠点に宿泊・飲食・不動産など多角的な事業展開を進めるアムズグループだ。2026年5月、台湾最大手クレーンゲームブランド「熊嗨星樂園(スターベアリー)」と合同で株式会社べライズを設立し、宮城県富谷市にクレーンゲーム専門店「スターベアリー富谷」を開業した。

台湾発ブランドが宮城に上陸

クレーンゲームへの参入を決断したのは約半年前、台湾で偶然見かけたスターベアリーとの出会いだった。同社の清水博文社長は「あまりの売上に『嘘でしょう』と思った」と振り返る。その後、複数のマーケティングデータと台湾側のデータを照合し、その信憑性を確認してから決断に踏み切った。

参入を後押しした最大の根拠は、家族向けであることと投資効率の高さだ。初期投資はパチンコ店と比べて抑えやすく、郊外型店舗としての収益性にも期待できるという。

同社のマーケティング担当の分析によれば、一般的な大手クレーンゲームチェーンの原価率は売上の35%前後、獲得率は約5%(20回に1個)程度とされる。一方、近年台頭している最新の専門店では、原価率55%、獲得率9%(11回に1個)まで引き上げることで集客を強めるモデルが主流だ。

しかし、スターベアリーは最新専門店の水準をさらに上回る、極めて高い還元率を想定しているのだという。

1店舗目の成功でビジネスモデルの検証が終われば、その後の展開は「かなりスピード感を持っていける」と見立てている。実際、プレオープン期間(5/1〜5/10)の来客数は、なんと累計約22万人に上った。その盛況ぶりは「景品の補充が追いつかないほどだった」(担当者)といい、すでに2店舗目・3店舗目の物件探しも始まっているとか。

ファミリー層を呼ぶ高還元戦略



景品も5割が食品で、残りの2.5割が洗剤、トイレットペーパーいった生活必需品でファミリー層に特化している。年齢制限も緩やかなためファミリー層を丸ごと取り込め、リピート率もパチンコの5〜6割に対して7〜8割が期待できる。郊外の立地にある富谷店はフロア700坪を活用し、来客の6〜7割をファミリー層として想定して展開する。

郊外に設定した主な理由は、「駅前立地では家賃が高い分、お客様への還元ができない」ため。ただし、この収益モデルを支える最大の難題が物流だ。原価率5割を超える高還元のビジネスでは商品の回転が凄まじく速く、500種類を超える景品が「店舗の倉庫在庫だけでは1日もたない」。店内補充と外部倉庫の連携を常時維持するオペレーションが、事業の要になるのだという。

何より、今回の合弁事業が他の参入事例と一線を画すのは、台湾最大手クレーンゲーム企業の成功ノウハウをそのまま持ち込む点にある。富谷店では台湾式と日本式の筐体を約半々ずつ設置するスタイルで展開する。

アパレル企業であった熊嗨星樂園は9年前にクレーンゲーム業界に参入し、コロナ禍前後の2022年から2023年の間に大成功を収めた。同社の楊修毓(ヤン・シウユィ)社長は、日本進出を決めた背景を次のように話す。
「日本はクレーンゲーム文化の発祥の地であり、世界で最も精巧な筐体と最高品質の景品を持っています。台湾市場が成熟期に入り海外展開の機が熟したこと、そしてアムズグループとの理念が一致したことが後押しとなりました」

“台湾式”が変えるクレーン体験

台湾式の目玉となっているのが「雪崩式(山崩れ台)」と「振り子アーム(甩爪)」の二つ。公式特許こそないが、「長年の調整経験が凝縮された無形資産であり、台湾固有の筐体改造文化から育まれた技術」だと楊社長は胸を張る。

雪崩式は重心原理を応用した景品の積み重ね技術で、客が重要なポイントを掴んだ瞬間に標的の景品と周りの景品が連鎖して落下することで、爽快感が生まれる。

振り子アームは、掴んだ景品を景品の山に投げつけて崩すなどさまざまな応用もでき、エンタメ性が高い。台湾では開業直後に1日5000人を超える来客を記録した店舗もあるという。記者がプレイしてみたところ、最初は上手くいかなかったが一度、山が崩れるポイントを掴むと、面白いほど景品が落下してきた。アームが商品の大きさや重さごとに調整されており、「全く取れない」ということも起きない。また、景品用カートも用意されているのも射倖心を刺激する。

楊社長は、日本市場での展開にも強い手応えを示す。

「『家族全員で戦利品を持ち帰れる熱狂と笑顔』は万国共通であると思います。私たちが観察したところ、日本のお客様は最初は少し控えめかもしれませんが、私たちの“非常に獲りやすい”設定や現場での各種イベントを通じ、景品でいっぱいのカートを押して帰る満足感を体験していただけると思います」

一方で、前出の高原氏は「ここ数年はブームが続く」と見通しつつも、「パチンコが急成長したときとかなり似ている」とも分析する。“取れやすさ”をめぐる競争が過熱すれば「お互いに首を絞め合って業界全体が停滞する」懸念があるといい、「業界の皆様ともしっかり情報交換しながらやっていきたい」と話す。マルハン東日本カンパニーでは今後、ME TOKYOブランドでの都心一等地への展開に加え、郊外型の新業態も別ブランドで計画しており、都心と郊外の二軸で事業拡大を進める方針だ。

都心でZ世代女性を取り込むME TOKYO、郊外でファミリー層を狙うスターベアリー富谷。クレーンゲーム市場の拡大は、単なる“パチンコの代替”ではなく、立地、客層、景品設計によって複数の勝ち筋が生まれつつあることを示している。

パチンコ業界が長年培ってきた店舗運営力と、台湾式の体験設計が交差するなか、日本のアミューズメント市場は次の局面に入りつつある。

<取材・文/SPA!編集部>



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