「同じ車種なのに、なぜこんなに値段が違うの?」。新車のカタログを開いて、まず最初にぶつかるのがこの疑問ではないでしょうか。
たとえばトヨタの人気ミニバン「アルファード」。ハイブリッド車で2WDの一番下のグレード「X」が510万円なのに対し、最上級グレード「Executive Lounge」はなんと860万円。その価格差、実に350万円です(※いずれも消費税込みの車両本体価格。トヨタ公式サイトより)。装備の違いだけで、もう一台クルマが買えてしまうほどの金額が上乗せされていく——。初心者にとって、これほど悩ましい選択もありません。
しかも厄介なのは、「とりあえず安いエントリーグレードでいいや」と選んだ結果、数年後の下取りで泣きを見るケースが珍しくないこと。新車価格で「100万円も安かった!」と思っていたのに、5年後の下取り査定でエントリーグレードはさらに安く買い叩かれ、“上のグレードを選んでおけば結果的にお得だったのに……”と逆転することも、中古車市場ではよくある話です。
今回は過去に反響の大きかった、元ディーラー営業マンが教える、初心者が後悔しないためのグレード選びのヒントをお届けします。実は、装備を選ぶだけでなく『そのクルマとどう別れるか』までを見越した戦略にあるという。
■ 車の選び方は個人の車の価値観で決まる
はじめに結論から申し上げると、買うクルマをどれくらいの期間乗るのかで決まってきます。一度買って10年近く乗るのであれば、どのグレードを選んでも問題ありませんが、短期間で乗り換えを考慮するなら、ある程度は的を絞ったグレード選びが必須となります。以下よりグレード選びのヒントを挙げていきます。
一番下のグレードでも基本的には問題ない
多くの車は「エントリー」「標準」「上位」というようにグレード分けされています。グレードによって装備が異なってきますが、クルマとしての基本的な「走る・曲がる・止まる」といった性能については、どのグレードを選んでも問題ありません。シートの生地や内装デザインが下のグレードのほうが気に入っているなどの理由があれば、エントリーモデルでも問題ないでしょう。
リセールを考慮するなら中間以上のグレードを選ぶ
5年程度で車を買い換える予定がある人は、一番下のエントリーモデルを買ってしまうとリセールに影響する可能性があります。中古車市場において「一番下のグレード」は売れにくいので、中間(標準)以上のグレードを選ぶのが無難です。また色選びも重要な要素の一つで、万人ウケしやすい「白・黒・シルバー」は失敗がありません。ただし、マツダ車の「赤色」のようにメーカーが推している色については選んでも問題ありません。
また、売却を考慮した装備(メーカーオプション)を選ぶことも重要です。新車購入時にしか取り付けられないオプション、SUVのオートバックドアやミニバンの両側電動スライドドアはリセールだけでなく利便性の向上にもつながりますので必須装備といえます。
最上級グレードでしか選べない装備もある
一番上のグレードは標準グレードにレザーシートや運転を補助する装置など、快適装備を充実させたグレードとなります。その装備が本当に必要なら選ぶ必要がありますが、基本的には所有することで得られる満足感を高めるものだと筆者は考えます。
ですが、最上位グレードを買わないと選べないメーカーオプションを用意しているクルマもあります。最近の国産車においては「サンルーフ」が最上位グレードでしか選べない仕様となっている車も多いです。当然、どうしてもサンルーフが欲しい場合は、最上位グレードしか選択肢がなくなります。
グレードによって選べる装備や選べない装備は、車のカタログやメーカー公式ホームページの「主要装備表」で確認できますので、あらかじめ見ておくと予算感を把握できます。
■「乗る期間」と「譲れない装備」が、グレード選びのヒント
新車のグレード選びは、装備の豪華さや価格の安さだけで決めてしまうと、後々「こうしておけば良かった」という小さな後悔がついて回るもの。今回の元ディーラー営業マンによるお話で印象的だったのは、判断の軸として「自分が何年乗るつもりか」というシンプルな問いを置いている点でした。
長く付き合うつもりなら好みを優先しても良し、数年で乗り換えるなら中間グレードと無難な色でリセールを意識する。そう考えると、肩の力を抜いてカタログを眺められそうな気がしてきます。
そして編集部的に「なるほど」と膝を打ったのが、記事の終盤で触れられていた「サンルーフ問題」。たかが屋根の窓、されど屋根の窓。青空の下を走るときの開放感や、夜のドライブで見上げる星空は、一度味わうと癖になるもの。それなのに、最近の国産車では最上位グレードでしか選べない設定が増えており、たった一枚のガラスのためにグレードを一段、二段と上げざるを得ないケースも少なくありません。
ただし、サンルーフには少し切ない「あるある」も存在します。「憧れて高いお金を払って付けたのに、気づけばもう何年も開けていない」というオーナーが、実は世の中には案外多いのです。納車直後こそ意気揚々と開け放っていたものの、夏は日差しが強すぎて娘さんに「焼けるから閉めて!」と猛抗議され、冬は冷気が入ってきて家族から不評。せっかく夜のドライブで開けてみても、高速道路では走行音がうるさくて会話もままならない……。気づけば、開閉スイッチに指をかけるのは年に一度あるかないか、なんてことも。
それでも「青空が見える天井がある」という事実そのものが、所有する喜びにつながるのもまた事実。後付けが効かない装備だからこそ、「自分は本当に使うか?」を冷静に想像してから判断したいところです。
この記事を読んだ皆さんが、次に新車のカタログを開いたとき、ふと「乗る期間」と「譲れない装備」の話を思い出してくれたら……。グレード表の数字とにらめっこする時間が、ほんの少しでも軽やかなものになるお手伝いができれば、これほど嬉しいことはありません。
数年に一度の大きな買い物が、納車の朝に「これにして良かったな」と笑顔で迎えられる一台になりますように。
<文/宇野源一再構成/日刊SPA!編集部>
【宇野源一】
埼玉県在住の兼業ライター。大学卒業後、大手日系自動車ディーラーに就職。その後、金融業界の業務・教育支援を行う会社に転職し、法人営業に従事しながら、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP資格を取得。X(旧Twitter):@gengen801
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