第79回カンヌ国際映画祭開幕審査員長パク・チャヌク、政治と映画「分けて考えるべきだとは思わない」

第79回カンヌ国際映画祭

第79回カンヌ国際映画祭開幕審査員長パク・チャヌク、政治と映画「分けて考えるべきだとは思わない」

5月13日(水) 14:00

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第79回カンヌ国際映画祭が、現地時間の5月12日に開幕した。合計22本並んだ今年のコンペティションは、ヨーロッパ系の映画が多いと同時に、日本映画とスペイン映画が最多でそれぞれ3本。アメリカはインディペンデント系のジェームズ・グレイとアイラ・サックス。かたやイタリア、中国、ブラジル、さらにアフリカ大陸の映画もない、かなり偏ったセレクションとなった。

開幕前に会見をした映画祭ディレクターのティエリー・フレモーは、「各国の映画の傾向に因るのかと訊かれても、それに応えるには50年ぐらいの推移を見なければならない」と語り、たまたま今年のセレクションの結果がこうなったということを強調した。実際昨年はブラジル映画が大活躍だったことを思い起こせば納得がいく。一方、ハリウッド映画の不在については、「スタジオやプロデューサーの意向を尊重するしかない」と語り、カンヌとしては欲しくても叶わなかったものもあることを匂わせた。

日本映画はパルムドール受賞者である是枝裕和監督の新作「箱の中の羊」、初めてコンペティション入りを果たした深田晃司監督の「ナギダイアリー」、「ドライブ・マイ・カー」(2021)をカンヌで披露した濱口竜介監督がパリで撮影した、フランス色の濃い「急に具合が悪くなる」が、パルムドール候補として鎬を削る。

またコンペティション外では黒沢清監督の「黒牢城」(カンヌプレミア)、岨手由貴子監督の「すべて真夜中の恋人たち」(ある視点部門)、監督週間部門に門脇康平監督の長編アニメーション「我々は宇宙人」と矢野ほなみ監督の短編アニメーション「エリ」が並ぶ。

今年の審査員メンバーは、デミ・ムーア、ルース・ネッガ、ステラン・スカルスガルド、アイザック・バンコレ、クロエ・ジャオ監督、ローラ・ワンデル監督、ディエゴ・セスペデス監督、ポール・ラバティ、そして彼らをまとめる審査員長にパク・チャヌク監督。

パク監督は、「歴代の審査員長を務めた監督たちから『審査員長はストレスが溜まる仕事』と聞いていたので、最初はやめようかと思いましたが、これまで自分も賞を頂いたりお世話になっているので考え直しました(笑)」と表明。また今年のベルリン国際映画祭で炎上した、政治と映画の関わりについて、両者を分けて考えるか否かについて問われると、「分けて考えるべきだとは思いません。なぜなら芸術自体がある意味政治的なステートメントであるし、政治はアートの敵ではない。両者を対立するコンセプトとして考えることが奇妙だと思います。同時に、政治的な映画ではないからといって軽んじられるべきでもない。また政治的なステートメントが素晴らしくても、芸術的な表現が優れていなければ、たんなるプロパガンダ映画になってしまうでしょう」と語った。

一方、長年ケン・ローチ監督のパートナーとして脚本を執筆してきた社会派を自認するラバティは、カンヌの審査員を依頼されたことについて、「わたしたちはいま、ガザにおける虐殺など、暴力が当たり前に起こるダークな時代に生きています。そんななか、映画祭というアイディアは、祝祭、インスピレーション、ダイバーシティ、思いやりなどを讃える美しいものだと思います」と語り、さらに今年のポスターの絵柄である映画、「テルマ&ルイーズ」のスーザン・サランドンに関連して、「彼女やハビエル・バルデム、マーク・ラファロなどハリウッドの人たちがガザを支援する運動をしていることを、とても尊敬しています」と付け加えた。

オープニングを飾ったのはピエール・サルバドーリ監督のフランス映画、「La Vénus électrique」。1928年のパリのサーカス小屋を舞台にしたロマンティック・コメディで、アナイス・ドゥムースティエ、ピオ・マルマイ、ジル・ルルーシュと、フランスで人気の俳優たちが顔を揃えた。

数年前から開幕作品はフランスで同日公開することが条件づけられたため、結果的にフランス映画が続いているが、そのなかには率直に言って国際的な映画祭の看板を背負うにふさわしい作品とは言い難いものもあった。それに比べれば本作は、映像の華やかさやレトロなパリの魅力、芸達者な役者たちの掛け合いの妙はあるものの、老若男女を意識した商業性が全面に出て、深みに欠ける印象がある。(佐藤久理子)

【作品情報】
箱の中の羊

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