北村匠海主演「しびれ」内山拓也監督Q&Aジーナ・ローランズに重なる宮沢りえの存在感、新潟を撮った理由【第27回全州国際映画祭】

「しびれ」内山拓也監督

北村匠海主演「しびれ」内山拓也監督Q&Aジーナ・ローランズに重なる宮沢りえの存在感、新潟を撮った理由【第27回全州国際映画祭】

5月8日(金) 19:00

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第27回全州国際映画祭World Cinema部門に出品された「しびれ」が5月5日上映され、内山拓也監督が観客とのQ&Aに応じた。

本作は、「佐々木、イン、マイマイン」で高い評価を得た内山監督による最新作。内山監督の故郷の新潟を舞台に、母に対する愛と憎しみという相反する感情に揺れる主人公の大地が、居場所とアイデンティティを模索していく様を、内山監督の自伝的作品として描き出す。大地の青年期を北村匠海が演じ、大地の母・亜樹を宮沢りえ、父・大原を永瀬正敏、大地の少年期を榎本司、加藤庵次、穐本陽月の3人が演じた。

今年のベルリン国際映画祭パノラマ部門、東京フィルメックスなどでも上映され、すでに高い評価を受けている本作。全州でも多くの若い世代の観客から質問が寄せられ、上映後には内山監督にサインを求める長蛇の列ができていた。第27回全州国際映画祭では、コンペティション部門以外の作品の中で最も優秀なアジア映画に贈られる特別賞のNETPAC賞を受賞した。

Q&Aで新潟を舞台にした理由を問われた内山監督は、「自分が約20年育った町であり、個人的な経験に根ざしながら映画的な再解釈を試みたかった」と回答。そして、新潟を知らない観客に向け、「海沿いの町で、時代によって変化はありますが、僕が生まれた時代は東南アジアやロシアから出稼ぎに来た方々が多く出入りをしていて、そして北朝鮮の拉致問題なども盛んに話されるような場所でした。日本の重要な港の都市ですが、ちょっと陸の孤島のような面がある。地形や気候から新潟を見ると、厳しい海があって反対側には大きな山脈があって、冬は西から来た雲から雪が落ちる。僕は新潟の青色を鉛色だと思うのですが、あのパレットをどうやったら描けるんだろう……そんな海や空が広がっています。日本の中でもそんな特別な文化が形成される新潟の景色も主人公にしたいとフィルムで撮ることを決めました」と解説し、変わりやすい新潟の天気も活かす撮影を行ったという。

大地の少年時代を演じた子役たちが印象的だったという感想には、「4人の大地をリレーして撮ること、それがこの映画の特徴でありながら、一番難しい課題になることは最初からわかっていました。僕にとって(全員が)似ているということは重要ではなく、 大事にしたのはその目です。心の窓である目が大地として何より重要で、そのまなざしを持っている人物を、長い時間かけて探しました」とキャスティングで重視したポイントを語る。

俳優たちへの演出について質問が及ぶと、「僕にとって演技とはその人の主体性、その人たちから感情がこぼれ落ちて紡がれるものだと思っています。もちろん北村さんに台本は渡しましたが、彼と脚本について話したことは正直ほとんどありません」ときっぱり。

また、子どもたちに対しては、彼らが子役であるという考えではなく、まずは一人の人間であると考えて接したという。「僕自身、子どもの時に大人に枠組みにはめられるのは嫌でした。その経験からも、子どもらしさを指導、演出するようなこともしたくありませんでした。ですから、『こうしてみて』という指示はせず、『どう思う?』とか、『なんでこうなってるんだろうね?』『僕もそう思うから、じゃあ、一緒にそうやってみようか』こんな風にひたすら対話を続けました」と振り返り、台本にはないワークショップのようなコミュニケーションを重視したそう。

観客からは「湯を沸かすほどの熱い愛」(中野量太監督作)での宮沢りえの母親役を挙げ、今作ではまったく異なるキャラクターの母親を演じた宮沢の演技力を絶賛するコメントも寄せられた。「この映画にとって母親はとても重要で、ある種圧倒的な存在感、オーラを放つ俳優に演じていただきたいという思いがあった」と内山監督。

宮沢が演じた亜樹の人生の背景を説明し、「この母親像を形成する際に、ジョン・カサベテス作品におけるジーナ・ローランズのような俳優でなければいけないと考えていました。そういう意味で宮沢りえしかいない、それが簡潔な答えです。宮沢さんは、俳優として長い歴史を紡がれていて、チャーミングでとても無邪気な方。僕に『敬語を使わないで』と言い、友達みたいに接して下さる彼女のその姿勢や無邪気さが、亜樹役にぴったりでした。宮沢さんが僕の『佐々木、イン、マイマイン』が大好きだったらしくて、 『最後まで監督の思うように台本を製本してください』と仰っていただき、亜樹役を託しました」と宮沢の起用の経緯を明かす。

さらに、内山監督がこの映画で決めたことは、“右側を未来にすること”だという。「ある種そのような映画の文法を信じると決め、大地は人生の中で必ず左から右、未来に進み続ける。それを撮影技法として取り入れて、細かいシーンも、必ず主人公が画面の左から右に進みます。すべては言及しませんが、いくつかのシーンでは大地が右から左に進む瞬間があります」とも明かした。「しびれ」は9月25日より日本公開。

【作品情報】
しびれ

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