喝采と笑いを呼んだ、映画がつなぐガールズコメディ「夜中のポップコーン」の藤本匠監督に聞く【インタビュー】

藤本匠監督

喝采と笑いを呼んだ、映画がつなぐガールズコメディ「夜中のポップコーン」の藤本匠監督に聞く【インタビュー】

5月8日(金) 12:00

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第19回田辺・弁慶映画祭で「キネマイスター賞」を受賞した藤本匠監督「夜中のポップコーン」が、「田辺・弁慶映画祭セレクション2026」でテアトル新宿(5月19日~24日)、テアトル梅田(6月14日~15日)での上映を皮切りに、全国各地で劇場公開される。わずかな気まずさが笑いの連鎖を生み、映画愛が息づくウェルメイドなコメディ作品を手掛けた藤本監督に話を聞いた。(インタビュー/GeneHeart)

■映画愛のある観客に受け入れられた喜び──映画祭会場での空気感

──第19回田辺・弁慶映画祭で「キネマイスター賞」を受賞された本作ですが、実際に会場でご覧になった観客の方々の反応はいかがでしたか?

藤本監督かなり直前まで微調整をしていたので正直不安はありましたが、会場から笑いが起きたり、後半につれて盛り上がっていく熱気を肌で感じられたのがとてもよかったです。そして何より、映画館で映画をよく見ている方々、映画愛を持っている方々に愛されたというのは、やはり一番うれしいことでした。

同日にちょうど山形の方でも第21回山形国際ムービーフェスティバルが開催されていて、本作の脚本の谷風作さんと出演者が登壇していたんですが、そちらでも笑いが起こったという報告を聞いて、「この作品はどこに行っても、ちゃんと受け入れてもらえるんだ」とわかって安心しました。

本作はコメディとは言っても、一発ギャグのような面白いことを言うわけではなく、間合いや映画としての空間の作り込みが伝わらないと生まれない笑いだったので、それが会場のお客様にも届いたようです。

■映画とは双方向の対話を生むもの──受賞時の思い

──本作が受賞した「キネマイスター賞」は、映画監督としてかなりうれしい賞だと思いますが、実際に受賞したときの気持ちはいかがでしたか?

藤本監督田辺・弁慶映画祭は上映後の夜に交流の場を設けているのですが、その際に審査員や観客の方々から生の感想を伺うことができます。そこでお話しした審査員の方が登壇して受賞作の発表をされたのですが、受賞の瞬間は「顔の見えるお客様に届いた」という実感が強くありました。映画は一方的に見せるものではなく、作品を通してコミュニケーションをするものだということを改めて感じました。私から問いを投げかけたり、あるいはエンターテインメントを提供したりするだけに留まらず、それに対するリアクションが直接返ってくるという、そこにとても感激しました。

本作は脚本家の谷さんとの二人三脚で始まって、スタッフも大学時代の同級生が集まって、出演者も劇団の仲間に集まってもらったり、脚本家の谷さんの父親に出演していただいたりと、おそらく映画制作としては考えうる中で最もミニマムな体制で撮った作品でした。それがまさか受賞して劇場公開までするとは、当初は考えてもいなかったです。だからこそ、それが実現して本当にうれしい気持ちでいっぱいですし、より多くの方に見ていただけるよう今も頑張っています。

■キャッチボールできる制作体制の強み──脚本家と組んだ背景

──本作の脚本は監督ご自身ではなく、谷風作さんが書かれていますが、そこには理由がありますか?

藤本監督谷さんと私は同じ劇団に所属していて、彼は普段は俳優を、私は毎公演の映像を撮影していたという関係でした。その中で彼が脚本を書いていることを知って、さらには大学時代から現在にかけて映像作品にもよく出演していることを知っていたので、一度やってみようと話したのがきっかけです。

彼から最初に出てきた脚本が、本作「夜中のポップコーン」のベースになっています。彼はコントというか、より演劇的なフォーマットに近い脚本を書くことに秀でていて、そことのコンビネーションが上手くいきました。

彼と組むことによって、創作のキャッチボールができるんです。これが一人で書き進めるのとは大きく違って、その過程で「どうやったら面白くなるんだろう」と話し合いながら作ることができる、そういうパートナーがいるということがとてもよかったなと思います。

──二人で対話をしながら作ることで、より深みが出たという印象ですか?

藤本監督映画はそもそも一人で作るものではないという前提があって、いかに他者の才能を一つの作品の中に詰め込むかというところに総合芸術としての旨味があると思っています。その中でも脚本には彼の特色がよく出ているので、そのことによる豊かさが本作に活きたのではないかと思います。

──本作のタイトルにもあるポップコーンが、作中でもモチーフとして非常に存在感がありました。

藤本監督これは谷さんの脚本の功績が大きいです。脚本の狙いとして、登場人物の心象風景をポップコーンが弾けること、あるいは弾けないで残っていることで暗喩していて、それが小道具として形や音を伴って画面に現れます。中でも主演の鳩川七海さんは、「実際にポップコーンを作る動きをしながら芝居できたことが、より演技に深みを与えることに繋がった」と話していて、その仕組みが上手くハマったのかなと考えています。ポップコーンがあるあるネタ的に出てくるわけではなく、テーマや人間の心を内包するアイテムとして現れるので、それをどう映像にするかという点を特に意識していました。

──作中で実際にテレビから聞こえてくる映画の脚本もオリジナルで作られたと聞きました。

藤本監督実は本編よりも作るのに時間がかかりました。この劇中映画の設定は、カルト的な人気を博すB級モンスターパニック映画の吹き替え版で、しかも制作が90年代という私たちが子どもの頃にはすでにあったようなテイストの映画です。その脚本を準備するにあたって、本作のスタッフを再び招集して、一緒に面白おかしく作っていきました。

元々の脚本の中で、「このときはこんなシーンが流れている」みたいな設定は台詞やト書きで決まっていました。一方で、観客の想像をかきたてるためにテレビ画面は映さないという演出を考えていたので、「聞こえてくる音」という形で遊びとしても効果があったと思います。特にラストシーンではこの劇中映画が本作を締めくくる展開も担っていくので、いかに遊ぶかというノリを大切に作りました。

■「気まずさ」の面白さとは──2つの重要な要素

──本作は、テレビで放送される映画を観る3人の女子会の話ですが、節々にクスッと笑ってしまうような気まずさが見られました。この「気まずさ」は制作する際に意識されましたか?

藤本監督まず、脚本に書かれている「関係性の伸び縮み」は意識しました。作中では、本当は親友と二人きりで映画を見ようと思っていたのに、その親友がいなくなってしまい、あとから来た初対面の人と二人で映画を観ることになるという、どちらかというとマイナスの関係性から物語がスタートします。それが「同じ友人がいる」「同じ映画が好きだ」という共通項で、グッと距離が縮まって、パッと明るくなっていく。そうした「伸び縮み」の部分、つまりは心の距離感の変容がきちんと成立していないと、そこにある「気まずさ」も浮かび上がってこないと思います。それが脚本の段階から表現できているか、そしてそれを俳優が理解し表現できるかという2点にかかっていたので、そこが伝わっていたという点は演出する側としてとても満足しています。

■監督の目指すコメディ像──「状況への反応」を映すこと

──コメディ映画にも様々な種類がありますが、藤本監督の考えるコメディとはどういったものでしょうか?

藤本監督私はハワード・ホークスという監督のコメディがとても好きです。この方はコメディについて「困った状況に対するユーモラスな反応だ」と話しています。起こった出来事に対してどうリアクションするかによって、その出来事が悲劇なのか喜劇なのかも変わってくると思います。

本作における困った状況、つまり「初対面の人と二人きり」という状況が生まれてしまったときに、でもそこには映画がある、人生を豊かにするものがあるということで新たな反応が起きてコメディになっていく。一生懸命にその瞬間を生きている中で、思いがけず滑稽な反応をしてしまったり、空回りしてしまったりすることでコメディになっていくのかなと考えています。

■ちりばめられた映画愛──作中のオマージュ要素

──本作では、小ネタとして映画「キートンのハイ・サイン」(原題:The High Sign)のポーズが出てきますが、それ以外にも映画ファンが楽しめるオマージュ要素はありますか?

藤本監督まず脚本家の谷さんが言っていたのは、劇中映画の「ザ・グロース」は「トレマーズ」や「ザ・グリード」のイメージだということですよね。他には、例えば「エボリューション」という映画は、そもそもがおかしな映画ではあるんですが、それが吹き替えになったときに一層そのおかしさが増してくる感じだとか。あとは、本作では劇中映画に出てくる「高跳びメガネ」という愛称のエキストラの存在が言及されるんですが、それは谷さん曰く「トロル2 悪魔の森」から着想を得ていたり、「ウィルヘルムの叫び」と呼ばれる様々な映画で使われる定番の叫び声であったりと、知っている人は連想できるような映画のミームをほのめかしています。「ハイ・サイン」のポーズはかなりそのままではあったりするんですが、直接的なオマージュはその辺りですね。

■映画館で見る時間の尊さ──監督からのメッセージ

──最後に、これからご覧になる方々へメッセージをお願いします。

藤本監督私が映画館に通いつめる中で作った映画なので、まずはやはり映画館で見ていただきたいということです。その没入感でもって初めてこの作品の一番大事にしている部分が伝わると考えています。何より、これは作中でも描かれていますが、実はみんなで一つのものを集中して見るという体験は他にあまり多くないんです。今や映画でもスマホやタブレットで見るスタイルが出てきている中で、みんなで同じ作品を笑いでもって共有するというのはとても幸せで尊い時間だと思います。そうした時間をこの「夜中のポップコーン」という映画で味わっていただけるはずです。ぜひ見に来てください。

「夜中のポップコーン」
B級映画のテレビ放送を機に集まった3人が繰り広げる、映画愛あふれる気まずい女子会を描いたワンシチュエーションのコメディ。金曜の夜、テレビ放送の映画を観るために集う女子3人。わずかな気まずさが笑いの連鎖を生み、物語は意外性に満ちた方向へと進む。脚本設計と場面シーンに映画愛が息づき、観るほどに発見のある、ウェルメイドな作品。

出演
鳩川七海、笠松遥未、 中尾多福、村上亮太朗、谷潤一
声の出演:谷風作、天知ひまり、淡海優、大沢真一郎

スタッフ
監督:藤本匠
撮影:藤田恵実
録音:渡邉玲
撮影助手・監督助手:羽蚋拓未
撮影助手:オウシュン
録音助手・制作:保立繁柾
助監督:千葉大輝
音楽:本城祐哉、藤本匠
配給・宣伝:GeneHeart

(C)「夜中のポップコーン」製作委員会
2025 年/日本/カラー/16:9/LCR/46 分

【映画「夜中のポップコーン」上映情報】
2026年5月19日(火)~24日(日)/テアトル新宿
5月19日(火):「夜中のポップコーン」「グランパ・エスケープ」
5月20日(水):「バカヤロウの背中」「グランパ・エスケープ」
5月21日(木):「自宅警備員と家事妖精」「グランパ・エスケープ」
5月22日(金):「夜中のポップコーン」「グランパ・エスケープ」
5月23日(土):「夜中のポップコーン」「グランパ・エスケープ」
5月24日(日):「夜中のポップコーン」「グランパ・エスケープ」

2026年6月14日(日)~15日(月)/テアトル梅田
6月14日(日):「夜中のポップコーン」「グランパ・エスケープ」
6月15日(月):「夜中のポップコーン」「グランパ・エスケープ」
※新宿、梅田ともに全日、上映後の舞台登壇あり。ほか全国順次公開。

「グランパ・エスケープ」(新作撮り下ろし/2026)
祖父母と孫たちが奔走する行き違い大捜索ムービー。
監督・編集:藤本匠
脚本:谷風作
出演:堀田眞三、天野眞由美、森脇康貴、水野蒼生、鳩川七海、畔柳棟多、中野弥生、宇留野花、大沢真一郎、谷風作

「バカヤロウの背中」(2019)
ポンコツ男と鬼嫁予備軍の婚前騒動記を描くサバイバルコメディ。
監督・脚本・音楽:藤本匠
出演:本城祐哉、鳩川七海、千国めぐみ、王細雨、中江聡、山城一乃、山村ひびき、藤井正子

「自宅警備員と家事妖精」(2021)
函館港イルミナシオン映画祭2019、第23回シナリオ大賞特別賞(荒俣宏賞)を受賞した潮喜久知のオリジナル脚本を映画化した劇場デビュー作。
監督・編集:藤本匠
脚本:潮喜久知
音楽:あがた森魚、Soulcolor
出演:大沢真一郎、木竜麻生、田之下雅徳、中島トニー、林家たこ蔵、本城祐哉、巻島みのり、流山児祥

【作品情報】
夜中のポップコーン

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(C)「夜中のポップコーン」製作委員会
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