正体不明の存在“名無し”とは何者か?佐藤二朗「完全な絶望は、人とのつながりが消えたときに訪れる」

佐藤二朗が初の漫画原作を手掛け、脚本・主演を務める「名無し」

正体不明の存在“名無し”とは何者か?佐藤二朗「完全な絶望は、人とのつながりが消えたときに訪れる」

5月7日(木) 18:00

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俳優・脚本家・映画監督としても活躍する佐藤二朗が初の漫画原作を手掛け、脚本・主演を務める「名無し」。本記事では、正体不明の存在“名無し”を、佐藤のコメントから紐解いていく。

過激なテーマと特殊な世界観ゆえに、お蔵入り寸前となっていた佐藤のオリジナル脚本が編集者の目に留まり、永田諒の作画によって漫画化した本作。数奇な運命を背負い“名前のない怪物”と化した男の希望と絶望、そして狂気を描破するサイコバイオレンスは好評を博し映画化が決定した。「悪い夏」の城定秀夫がメガホンをとっている。

昼下がりのファミレスで、残忍な殺人事件が発生する。防犯カメラには、犯人と思われる坊主頭の中年男が映っていたが、男の手には凶器のようなものはない。男が近づき、軽く接触するだけで人が血を吹き出して倒れていくという異様な光景が記録されていた。捜査を進める警察は、坊主頭の男が11年前に万引きの疑いで調書を取られた「山田太郎」と同一人物であることを突き止める。山田の自宅住所に急行した捜査員が目にしたものは、腐敗した女性の遺体だった。

佐藤は、原案・脚本・主演を自ら務め、“名無し”と呼ばれる未曾有の怪物を創り上げた。「右手で触れたものの存在を消す」という恐るべき異能を持ち、動機不明の大量殺戮を繰り返す同人物。だが、その狂気の根源は悲惨な過去に秘められており、単なる“異能の殺戮者”という言葉では括れない。

佐藤は“名無し”という存在について、こう語る。

「社会は機会の均等を唱えているけど、現実にはそれができていない。神さまから与えられたカードが圧倒的に『貧困』だったり、どう考えても逆転不可能なカードしか配られない場合も残念ながらたくさんあるし、それによって社会的な事件も起こっている。理不尽なのは仕方のないことだとわかりきっていても、人間の温もりやつながりがそれに負けて欲しくないという思いが僕の中にはあるんです。完全な絶望というのは人と人のつながりがなくなったときに訪れるような気がしていて、誰かとつながれているうちは、とりあえず明日は生きていけるんじゃないかと。神さまの気まぐれなカード配りに勝てるのかどうか、山田太郎はそれを試されている存在でもあるんです」

この言葉が示す通り、“名無し”は単なる恐怖の象徴ではなく、理不尽な現実の中で追い詰められ、それでもなお人とのつながりを求める存在。その歪みと切実さが、観る者の心に強烈な違和感と問いを残す。笑いで人間の滑稽さを体現してきた佐藤が、今度は“狂気”を通して人間の本質に迫る。映画「名無し」は、そのキャリアの集大成にして、新たな到達点となるような衝撃作だ。

「名無し」は、5月22日から全国公開。

【作品情報】
名無し

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(C)佐藤二朗 永田諒 / ヒーローズ (C)2026映画「名無し」FILM PARTNERS
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