■既成概念を壊す「NO」と言えるアイドル像
「世界中の戦争が早く終わりますように」
4月3日、27年ぶりに「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)に出演した小泉今日子は、そう言ってゴダイゴの名曲「ビューティフル・ネーム」を歌った。政治的発言はおろか、「世界平和」を願うという当たり前のことすら、芸能人が公然と口にするのが憚られるような風潮がある中で、彼女は堂々と主張した。
1981年に「スター誕生!」(1971~1983年日本テレビ系)に出場したことをきっかけにアイドルとしてデビュー。しかし、1年ほど経った頃には、自分はこの仕事に向いてないのではないかと思い始めた。「どうせやめるから自己主張とかしてみて怒られてみたら気持ちいいんじゃないかな」(「コトバのお年玉―」2016年1月1日NHK総合)と考え、長かった髪をバッサリ切った。
当時は、松田聖子全盛時代で、若い女性はみんな“聖子ちゃんカット”。小泉も例外ではなかったが、ある日、「みんなおんなじ髪型してる!」と気づいたことがきっかけだった。事務所のスタッフはその髪型を見て、怒ることこそなかったが、腰は抜かしたという。
その新しいイメージに合わせてリリースされたのが「まっ赤な女の子」。主演デビュー作「あんみつ姫」(1983年フジテレビ系)の主題歌だった。演じたあんみつ姫のようにやんちゃでお転婆。既成概念を壊す「NO」と言えるアイドル像を体現していった。
■“自分が見たい女の子像”をプロデュース
しかし、やがて演技力や歌唱力の壁にぶつかる。そんなときに「そもそもアイドルって何だろう?」と考えるようになった。辞書には「偶像」とある。それを見て、「アイドルはジャンルではない」と気づいた。
「だったら、誰もやったことがないようなことに、常にチャレンジしていったら楽しいのかなとか、いままで見たことがなかった女の子像っていうのを、みんなで作ってみよう」(「NHK MUSIC SPECIAL」2022年3月10日NHK総合)と発想を転換した。
つまり、「私が見たい理想の女の子像をプロデュース」(「ハフポスト」2020年9月2日)するようになった。「きっと、歌うことよりもそっちの才能、プロデュースする方がちょっと上手かも」(同)という自覚もあったのだ。
とはいえ、アイドルは、自分のやりたい仕事を自由に選べる立場にはなかった。だから「やりたくない仕事を振られたときに『分かった。それやるから、こっちもやるね』」(「ほぼ日刊イトイ新聞」2020年6月11日)といった“駆け引き”をしていたという。
■プロデュース力を活かして会社を設立
当時はグラビアアイドルという区分もなく、アイドルはグラビアもこなし、バラエティに出演することも、むしろ当たり前のことだった。だから、小泉も、ザ・ドリフターズやとんねるず、ウッチャンナンチャンらとコントに挑んでいる。
「お笑いの人たちとやった時に、こんな表情ができるんだと思ったら、それが演技の時にあったり」といった「フィードバック」ができた(「ボクらの時代」2026年3月22日フジテレビ系)。実際、「最後から二番目の恋」シリーズ(2012年ほかフジテレビ系)は、「コントの収録の緊張感」(同)で撮影していたという。
2015年には、もともと得意としていたプロデュース力を活かし、制作会社「明後日」を設立。「遠い未来ではなく、明後日くらいの未来を目指して、仲間たちと一緒に何が出来るか模索」(「株式会社明後日公式HP」2015年2月4日)する姿勢で、映画や舞台のプロデュースを手がけるようになった。
その根底にあるのは「『大人』として、後ろから歩いてくる人たちの道が少しでも明るいほうがいい」(「ほぼ日刊イトイ新聞」2020年6月16日)という思いだ。「『あそこに街灯つけとこう』みたいな感覚」(同)で発信を続けている。
■小泉今日子に影響された若者たち
いまでは彼女のファッションに影響されてデザイナーになった、出演ドラマをきっかけにテレビの制作会社に入ったといった若者に現場で会うことも少なくないという。「理想の女の子像」を提示し続けてきた彼女にとって、それはまさに「思惑通り」の結果だ。
「自分が役に立てることはなんだろうって、ずっと考えてますね。面白い人に出会ったら、あの人に紹介してあげようとか。それはファンの人に対してもそう。私のことは応援しなくなってもいいし、ファンを続けなくてもいいから、私をきっかけにして、世界を広げてほしい」(「Pen Online」2023年10月22日)。
それこそが、いわば理想の“アイドル”にほかならない。
文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」
※『月刊ザテレビジョン』2026年6月号
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