アカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を受賞した「ミスター・ノーバディ・アゲインスト・プーチン(原題)」の共同監督で主人公でもあるパベル・タランキンのオスカー像が、ニューヨークのJFK空港で行方不明になった。その理由を米Deadlineが報じた。
タランキン監督、3月にオスカーを受賞して以来、これまで十数回以上、同像を持って飛行機に乗ってきたが、一度も問題はなかったと説明している。しかし4月29日(現地時間)、JFK空港ターミナル1の保安検査場に到着したところ、米運輸保安局(TSA)職員から、重さ8.5ポンド(約3.9キロ)のオスカー像は「武器として使用できる」と判断し、機内への持ち込みを認めなかったという。
ドイツ・フランクフルトに到着したタランキン監督は、「彼らがどうしてオスカー像を武器だと考えるのか、まったく理解できない」と語った。これまでさまざまな航空会社の便で「機内に持ち込んできたが、一度も問題はなかった」という。
タランキン監督によると、保安検査場へ呼ばれた航空会社の職員は、搭乗ゲートまで同行し、飛行中は自身がオスカー像を預かるという妥協案を提示した。しかし、TSA職員はこれを拒否。さらに同職員は、飛行中にオスカー像をコックピット内で保管する案も提案したが、当局と航空会社職員に退けられたという。
タランキン監督は、「貨物室に預けなければならない」と言われたと説明している。ロシア出身のタランキン監督は、当局および航空会社職員とのやりとりの際、映画で製作総指揮を務めたロビン・ヘスマンに連絡し、通訳を依頼した。
ヘスマンはDeadlineに対し、「運輸保安局の女性職員はまったく譲らなかった」と証言している。タランキン監督はオスカー像を入れるハードケースを持っていなかったため、航空会社側がフランクフルト行きの便に預けるための段ボール箱を用意。タランキン監督がスマートフォンで撮影するなか、職員2人がオスカー像を緩衝材で包み、荷物タグを渡したうえで、その箱を輸送のために持っていった。
しかし、タランキン監督が目的地のフランクフルトに到着すると、その箱は見当たらなかったという。ヘスマンは、「今朝、パシャからフランクフルトで電話があり、航空会社はオスカー像を持っていない、なくしたと言われた」と語る。
タランキン監督は、ロシアの工業都市で小学校教員を務めていた人物。ロシアによるウクライナ全面侵攻後、クレムリンが全国の学校に対して国家主義的かつ軍国主義的なカリキュラムの導入を命じたことに反発し、現在は亡命生活を送っている。デビッド・ボレンスタインが監督し、タランキンが共同監督を務めた同作は、学校で愛される職員だった彼が、やがて孤立した存在へと追い込まれていく過程を記録している。
ボレンスタイン監督はInstagramで、「オスカー像を預け入れ荷物にするよう強制された事例を、私はひとつも見つけられなかった。もしパシャが有名俳優だったら、あるいは英語を流暢に話せる人物だったら、同じ扱いを受けていただろうか」と投稿した。
【作品情報】
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ミスター・ノーバディ・アゲインスト・プーチン(原題)
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