4月30日(木) 5:20
日本銀行によれば、一度発行された紙幣は特別な法令による措置がとられない限り、いつまでも法的に有効で、通用力を失いません。
しかし、法的に有効であることと、日常生活でスムーズに使えることはまったく別の話です。新紙幣発行から年数が経過し、自動販売機やセルフレジなどの機械類のほとんどは新紙幣への対応が完了しています。古いお札ばかり持っている場合、今後、機器の更新などに伴い「旧紙幣が読み込めない」といった物理的な不便さに直面するリスクは高まる一方です。
近年、マネー・ローンダリング(資金洗浄)対策が急速に厳格化されており、多額の現金を一度に持ち込むと、銀行から「このお金の出所はどこですか?」と詳細な説明を求められることもあるようです。
・過去数年分の通帳の履歴
・給与所得の証明
・なぜ自宅で長期間保管していたのかという合理的な理由
これらを客観的に証明できない場合、銀行側が入金を拒否したり、税務署への報告対象となったりする可能性も否定できません。つまり、ただ持っているだけだったはずの300万円のタンス預金が、ある日突然「動かせないお金」に変わってしまう危うさをはらんでいると言えるのです。
「300万円の札束」という見た目のボリュームは変わりませんが、物価高の昨今、そのお金で買えるものの量は、今この瞬間も確実に減り続けています。総務省が発表している最新の消費者物価指数(CPI)を見ても、食料品を中心に私たちの生活コストは高止まりし、家計への負担は増しています。
今の300万円で買えるものは、このペースで物価上昇が続けば10年後には約366万円出さないと買えなくなっているかもしれません。言い換えれば、タンスに眠らせている300万円の価値は、10年後には現在の価値に換算して約245万円程度まで目減りしてしまう計算になります。
・数年前まで100円で買えたおにぎりが130円、150円になる
・電気代やガス代の基本料金が上がる
・車の買い替え費用が以前より数十万円単位で高くなる
こうした世の中の変化に対し、タンス預金は何の対抗手段も持っていません。銀行の預金金利が少しずつ引き上げられている中、利息もつかずにただ放置されているお金は、文字通り「腐っていく」のを待つだけの存在となっているのです。
「銀行は信用できない」などという気持ちから、タンス預金をしてきた人もいるかもしれませんが、現代において現金を物理的に隠し持つことは、盗難や火災のリスクに加え、「マネロン対策による入金拒否」と「インフレによる目減り」という、より現実的で困難な波にさらされることを意味します。
タンス預金をしているという場合、まずは、自分の資産が「今、本当はいくらの価値を持っているのか」を正しく把握することから始めてみてはどうでしょうか。Aさんも、クローゼットの奥で静かに眠る300万円を、自分の未来を守るための「生きたお金」に変えるときが、もう来ているのかもしれません。
日本銀行 新しい日本銀行券特設サイト
総務省統計局 2020年基準 消費者物価指数(CPI)
執筆者 : 西村和樹
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士
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