【世界の映画館】上映前には前説も。公園の真下に位置する名画座「パルシネマしんこうえん」

パルシネマしんこうえん

【世界の映画館】上映前には前説も。公園の真下に位置する名画座「パルシネマしんこうえん」

4月30日(木) 18:00

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兵庫県神戸市、湊川公園の真下に位置する「パルシネマしんこうえん」(1スクリーン、135席)は、1971年に開館した名画座だ。かつて“東の浅草、西の新開地”と称され、“東洋一の興行街”と評された新開地で、今では珍しくなった“2本立て”のスタイルを守り続け、半世紀以上にわたって映画の灯を灯している。

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現在、同館の3代目支配人を務めるのは、祖父、父から映画館を引き継いだ小山岳志さん。全国的にも珍しい「公園の真下」というロケーションについて尋ねると「当館の前身は公園の中にあった『公園劇場』でしたが、公園の改修に伴い、1971年に現在の場所へ移転し『新公園劇場』としてオープンしました。公園下で開館した経緯はもうわからなくなってしまっているのですが、公園敷地内には前身の公園劇場のほかにも、テレビ普及前の時代というのもあり“ニュース館”という主にニュースを流す映画館も存在していました」

「また、新開地は、日本で一番映画を見た人物とも言われる淀川長治さんが生まれ育った街でもあり、大小さまざまな映画館が20館以上ところ狭しとひしめき合っていたような土地なので、いわば何でもありだったのかもしれません」と教えてくれた。その後、小山さんの父が映画館を引き継いだ際、名称を「パルシネマしんこうえん」に変更し、現在に至る。

同館の最大の特徴は、今では数少なくなった「2本立て上映」を貫いている点だが、観客の8~9割が2作品とも鑑賞するという。ラインナップの編成については「いわゆる人気作・話題作とあまり知られていないかもしれないが実は隠れた名作だったりする作品を組み合わせることで、『片方の作品だけを目当てで観にきたけど、ついでに観た作品の方が面白くてひろいもんやったわ!』、一見バラバラな組み合わせに見えても、続けて観た後で『なるほど!』と感じてもらえるような『2本立てならではの体験』をしてもらえるように、いろいろ試行錯誤で編成しております」と、熱く語った。

作品の魅力を直接伝えるのが、上映前に行われる名物の「前説」だ。台本はなく、作品の推しポイントや、パルシネマならではの2本立てをどういう想い・共通点で組み合わせたかを、スタッフと話し合って決めているというが、その日の客層や雰囲気に合わせて、小山さん自身の言葉で語りかける。「『前説を聞いて、迷っていたけど観ることにしたよ』と声をかけていただけるのが一番嬉しいですね。伝えることの難しさを日々実感しながらも、自分自身も作品への理解を深める貴重な機会になっています」

パルシネマでは、基本の2本立て上映の他にも、2本立てでの上映は難しいが、どうしても上映したい作品を、朝少し早めの時間帯や夜遅めの時間帯で上映する「朝パル」「夜パル」の枠やオールナイトも行っている。また、地元のサイレントピアニストによる無声映画の「ピアノ伴奏上映」や、近隣の寄席小屋「喜楽館」と連携した「落語会」、近隣のカフェと連携した「映画お茶会」、またファンサービスとして映写室の見学などにも意欲的に取り組んでいる。その狙いを小山さんに聞いてみた。

「映画館を映画を上映する場所としてだけではなく、色々と楽しいことをどんどんする場所にしていけたらなという考えがありました。面白そうな企画を持ち込んでもらったり、時にはこちらから興味のあることの関係者にお声がけしたり。時にはイベントの実施場所を探している方に積極的に近寄っていったりして、現在のような形になりました。とにかく楽しいことが大好きなので、一緒に何かしたいという方がおられましたらお声がけください!」

レトロでアットホームな映画館の佇まいは多くのクリエイターをも惹きつけてきた。NHKドラマ「心の傷を癒すということ」では、かつての神戸の映画館を彷彿とさせるロケ地として選ばれ、撮影時には主演の柄本佑と映画談議に花を咲かせたという。また、10年ほど前にはCM撮影のため深津絵里と共に訪れたリリー・フランキーが、劇場に飾られた「そして父になる」(13)のポスターに、遊び心たっぷりに共演者(福山雅治、真木よう子、尾野真千子)のサインを本人に似せて書き込み、後に「心の傷を~」の撮影で訪れた尾野を笑わせたという微笑ましいエピソードも明かしてくれた。

なお、パルシネマでは、昨年末に松居大悟監督を招きオールナイトイベントを実施しているが、今後も映画監督や俳優を招いたイベントを予定しているという。また、毎年夏休みには、大山のぶ代さんが声を担当した「映画ドラえもん」シリーズのフィルム上映を行っており、今年も開催を予定しているとのこと。上映スケジュールやイベントの詳細は、公式Instagram(@palcinema_kobe)やX(@palcinema)にて発信中。

最後に、映画ファンにメッセージをお願いした。「当館は先代の頃から“ラインナップが自慢!”でやってきておりまして、スタッフと日夜頭を悩ませながらこだわりのラインナップを編成しているつもりです。特に当館独自の2本立て上映は、2作品ともご覧いただくことで思わぬ映画との出会い・発見という醍醐味があります。お客様とスタッフとの距離が近いアットホームな映画館ですので、映画の話は勿論、お気軽になんでもお尋ねください。レアな映写室見学では、映写スタッフが実際に上映中の映写室を案内し、今では珍しくなった35mmフィルム上映時には動いているフィルム映写機を見ることもできます。劇場にお越しの際は映画と合わせて、“映画館“ごとお楽しみくださいませ」

【作品情報】
そして父になる

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写真提供(以下すべて):パルシネマしんこうえん
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