医師を目指す元ラグビー日本代表・福岡堅樹の勉強法「時間で縛ることはせず、『できた』という感覚を大事に」

photo by web Sportiva

医師を目指す元ラグビー日本代表・福岡堅樹の勉強法「時間で縛ることはせず、『できた』という感覚を大事に」

4月29日(水) 6:45

提供:
連載:NEXT STAGE~トップアスリートのセカンドキャリア

福岡堅樹インタビュー(中編)

◆福岡堅樹・前編>>現在医学部6年生「運動ってこんなにしないものなんだ」

15人制と7人制のラグビー日本代表として、ワールドカップとオリンピックの舞台にまで上り詰めた福岡堅樹。現在は順天堂大学医学部の6年生。数々の試練が待ち受けている最終学年を迎えたばかりだ。

福岡がラグビーのトッププレーヤーだけでなく医師を目指したのは、ごく自然な流れだったと言える。信頼の厚い町医者の祖父と、ラグビーの師でもある歯科医の父を間近で見ながら育ったからだ。

医師の家系で育った福岡堅樹がその道を志したきっかけとは?photo by Yuuri Tanimoto

医師の家系で育った福岡堅樹がその道を志したきっかけとは?photo by Yuuri Tanimoto



「もともと医師の家系で、医療が身近な存在だったことが大きいですね。そして、すばらしい先生との出会いも医師を志(こころざ)す大きなきっかけになりました」

その先生とは、福岡の負傷からの復帰をたびたびサポートしてきたスポーツ医学専門の整形外科医で、のちにトップリーグ(現・リーグワン)やラグビーワールドカップでも選手を支えることになるドクター、前田朗(あきら)氏だ。

「花園」として知られる全国高校ラグビー大会に出場することは、福岡高校ラグビー部当時の福岡にとって大きな目標だった。しかし、高校2年生で人生初の大けがを負い、診断の結果は左ひざ前十字じん帯断裂。その年の花園出場は断念せざるを得なかった。

それでも「手術をしてリハビリをしっかりすれば、前のスピードに戻る」という前田氏の言葉が支えとなり、前田氏による手術とリハビリを経て、高校3年生で戦列への復帰を果たす。

だが、出場のラストチャンスとなる花園の予選を3カ月後に控えた7月、再び練習中に負傷し、今度は右ひざ前十字じん帯断裂の診断。前田氏は手術を勧めたが、手術をすれば花園とその予選出場は叶わなくなる。「花園に出る」という福岡の強い意志をくみ取った前田氏は、手術せずにひざ周りの筋肉を強化する保存療法を選んだ。

決して勧められない治療法ながら前田氏は最善を尽くし、福岡は県予選の準決勝で復帰。そして福岡高校は夢の花園出場を手にした。花園1回戦で福岡はペナルティトライにつながる60メートルの独走を見せ、劇的な勝利を呼び込んだ。

【右ひざはすでに限界を迎えていた】花園2回戦で敗退した時、保存療法を続けていた福岡の右ひざはすでに限界を迎えていた。しかし、それまでの前田氏による手術と真摯なアドバイスは、福岡が医師の道へと進む大きな動機となった。

その意志をくみ取った前田氏は、その後行なわれた福岡の右ひざの内視鏡手術の模様を福岡自身に見せることを提案。下半身麻酔で意識が明瞭な状態で自身の手術を生で見た福岡にとって、将来が定まった瞬間だった。

当初は一本に絞って志した筑波大学医学群の受験で、現役と1浪の2度不合格となった(最終的に筑波大学情報学群に合格して入学した)福岡は、前編で触れたラグビー選手としての輝かしいキャリアを経て、順天堂大学医学部への合格を果たした。

医大生として5年生まで、具体的にどんなことを学んできたのだろうか。

「1年生の段階では、専門的な医学はそこまでメインではなく、まず高校の生物の延長から始まり、いわゆる一般教養の授業なども受けつつ、後半に入るにつれて少しずつ医学の入門が始まります。

2年生は1年間を通して介護実習がメインとなり、同時に座学もしっかりとやっていきます。

3年生は主に座学で、医学のより専門的な内容を1年間通してやっていきながら、4年生では臨床実習に出るために必要なCBT(知識・問題解決能力を評価する全国統一の医学生共用試験)とOSCE(オスキー。技術・態度を評価する客観的臨床能力試験)というふたつの試験を乗り越えて、そこから臨床実習に入ります。

5年生は1年間を通して臨床実習に取り組み、6年生の頭までそれを続けて、8月末ごろから卒業試験に臨みます。順天堂大学は試験期間が8週間あるので、だいたい10月末ぐらいまで卒業試験があり、終わったらそこから先は2月の国家試験に向けた準備期間となります」

これまで取り組んできた「臨床実習」とは、どのようなものなのだろうか。

「臨床実習は病院内のすべての科を回っていく実習です。循環器や消化器、血液の病気、小児科といったあらゆるところを回るのですが、科によって特色が大きく異なっていて、実際に現場を体験することで、授業で学んだものだけでは足りない部分を学べますし、本当にいい刺激をもらっています。

実習では自分が実際に患者さんを受け持ち、お話をうかがってレポートを作成していました。そこから学ぶことも多かったですね」

【元日本代表のメリットを最大限に享受】5年生までの手応え、実感はどうだったのだろうか。

「非常に充実した生活をさせてもらっています。プロラグビー選手を社会人と表現していいのかどうかはわかりませんが、社会人の経験を経てから日々勉強することができるのは、すごくありがたい時間です。

ひとつの知識を学ぶにしても単純暗記ではなく、『なぜそうなるのか』がわかるように理屈から自分のなかに落とし込めているので、今は本当に楽しく勉強できています」

学びへの意欲が充実につながっているようだ。そして、ラグビーのトッププレーヤーとしての経験も、現在の充実した医学生ライフに生きているという。

「純粋に自分がそこ(世界のトップレベル)までやりきって成し遂げたという自信は、もちろん生きていると思います。また、こうして僕の名前が広まったことで、みなさん知ってくださっているからこそ話が弾みやすくなる、というメリットもあります。

実習では先生が『実はラグビーファンなんだ』と言ってくださり、指導にも少し熱が入っていろいろなことを教えてもらえた時もあったので、今後もそのメリットを最大限に享受していきたいと思っています」

この4月から6年生になった福岡の、直近の1日のタイムテーブルはこうだ。

「4年生の10月から6年生の6月末までは病院での臨床実習がありますので、その間は基本的に早くて朝8時、通常は9時前後からスタートになります。9時スタートの日は8時に起床し、8時半に家を出て、9時から夕方5時ごろまで実習を行ないます。

その後は帰宅して、ご飯を食べてから追加で勉強します。(自宅室内で)少し運動をして、その後お風呂に入り、少しだけ自分の趣味の時間をとってから深夜1時か2時前後に就寝しています。

やはり6時間くらいは寝ておかないと本来学ぶべきことを吸収できないですし、集中力も散漫になりますので、睡眠時間はなるべく確保するようにしています」

【集中が途切れたら一旦違うことをやる】規則的かつ効率的な生活習慣も、これまでの経験の賜物だという。

「時間の使い方や効率化については、うまくできているほうだと思います。そうしないと何事も両立するのは難しいですからね。もともと僕は何かを長時間やり続けるのが苦手で、しっかりと切り替えることで複数のものをうまく両立してきました。むしろ両立が自分には合っていたのかなと思います。

ただし、何時まではこれ、何時からはあれと、やるべきことを時間で縛ることはせず、自分なりに『できた』という感覚を大事にしています。集中力が切れたのに決まった時間までやらないといけなくすると、かえって効率が上がらなくなるので、集中が途切れたら一旦違うことをやるとか、15分だけ仮眠を取るとか、そうやって切り替えるようにしています」

どのように時間を使い、どのように学んでいけば自分の身になるのか。福岡はラグビーをはじめとする経験からその術(すべ)を体得し、今に生かしている。

(つづく/文中敬称略)

◆福岡堅樹・後編>>AIが台頭してきた時代に考える未来の医者像



【profile】

福岡堅樹(ふくおか・けんき)

1992年9月7日生まれ、福岡県古賀市出身。5歳でラグビーを始め、中学生で100m11秒台を記録した俊足WTB。福岡高3年時に全国高校ラグビー(花園)出場。筑波大では1年生からレギュラーとなり、全国大学選手権での活躍が評価されて2013年4月に日本代表初選出。2015年と2019年のラグビーワールドカップに出場し、後者は4トライを決めて日本代表初の決勝トーナメント進出に貢献した。通算38キャップ。男子セブンズ(7人制)日本代表として2016年のリオデジャネイロ オリンピックにも出場。パナソニックワイルドナイツ(現・埼玉ワイルドナイツ)ではラストイヤーとなったトップリーグ(現・リーグワン)2021シーズンで優勝を果たしMVPにも輝いた。同年から順天堂大学医学部に通う医大生。身長175cm。



【関連記事】
【部活やろうぜ!】堀江翔太「理不尽な上下関係はいらん」と帝京大の伝統を変えた部活をがんばる学生にアドバイスも
【部活やろうぜ!】早稲田大時代の五郎丸歩は「アゴを骨折して鼻から流動食を入れて」試合に出て社会人チームに勝った
<アスリート医学生対談>柔道世界女王・朝比奈沙羅と元プロ野球・寺田光輝が考える文武両道とは...テストを乗り越える「必殺技」も語った!?
Sportiva

新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ