4月28日(火) 5:30
そもそも医療費控除とは、1年間に支払った医療費が「一定の基準額」を超えた場合に、その超えた金額を所得から差し引くことで税負担を軽減できる制度です。
多くの人が勘違いしているのが、この「基準額」の考え方です。一般的には「10万円」と認識されていますが、実際にはもう1つのルールが存在します。それが、「その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%」という仕組みです。
給与収入から給与所得控除などを差し引いた「総所得金額等」が200万円未満となる場合、この5%ルールが適用され、医療費控除のハードルは10万円よりも低くなります。
つまり、パートなどで年収が約297万円以下の人であれば、医療費が10万円に届いていなくても、控除を受けられる可能性が十分にあるのです。
「夫の年収400万円、妻の年収200万円」の夫婦で、年間の医療費が世帯合計で8万円だった場合を具体的に見ていきましょう。
まず、年収400万円の夫が申告するケースです。この場合、総所得金額等は200万円を超えるため、基準額は原則通り「10万円」が適用されます。そのため、医療費が8万円では基準に届かず、控除額はゼロです。
一方、年収200万円の妻が申告する場合を考えてみます。妻の総所得金額等は約132万円となり、この場合は5%ルールが適用されます。基準額は132万円✕5%で「6万6000円」です。
医療費8万円からこの基準額を引いた「1万4000円」が控除対象となります。この金額が課税所得から引かれることで、所得税(約5%)と住民税(約10%)を合わせて、約2100円の税負担軽減につながります。このように、同じ医療費であっても「誰が申告するか」によって結果が大きく変わる点は、見落とされがちなポイントです。
医療費控除の金額を底上げするうえで重要になるのが、「どこまでを医療費として計上できるか」という視点です。病院の窓口で支払った診療費や処方薬代だけでなく、対象となる費用は意外と幅広く認められています。
代表的なものが「通院のための交通費」です。電車やバスなどの公共交通機関を利用した場合の運賃は、領収書がなくても、利用日・区間・金額を記録しておけば医療費として合算できます。
また、ドラッグストアで購入した市販の風邪薬や頭痛薬なども、「治療目的」であれば対象です。家族分を含めて日常的に発生するため、積み上げることで無視できない金額になるでしょう。
一方、自家用車での通院にかかるガソリン代や駐車料金、予防目的のサプリメントや健康増進のためのビタミン剤などは対象外です。判断に迷う支出も多いため、「治療に直接関係するかどうか」を基準に整理しておくことが大切です。
そのため、年末が近づいた段階で、家族全員分の医療費や交通費、市販薬のレシートを一度集計し、世帯全体でいくらになるかの確認が重要になります。
「医療費控除は年間10万円以上」というのは、あくまで一般的な目安であり、すべての人に当てはまる絶対条件ではありません。年収が約297万円以下の家族がいる場合には、基準額が引き下げられ、少額の医療費でも控除を受けられる可能性が広がります。
医療費控除は、生計を一にする家族全員の医療費をまとめて申告できる制度です。そして、今回のケースのように、「夫と妻のどちらで申告すれば基準額が有利になるか」を比較検討することで、控除額を最大化できます。
何も考えずに収入の高い人で申告してしまうと、本来受けられたはずの控除を逃してしまう可能性があるため、注意しながら制度を活用しましょう。
国税庁 No.1120医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税局 No.1122医療費控除の対象となる医療費
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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昨年の医療費が11万円でした。「医療費控除」でいくら還付されますか?大した額ではないなら手間もかかるし確定申告したくないのですが。