焼き鳥のタレで天ぷらを食べる!?『孤独のグルメ』原作者が20年ぶりに食べた天丼/久住昌之

久しぶり過ぎる天丼弁当が、焼き鳥だった

焼き鳥のタレで天ぷらを食べる!?『孤独のグルメ』原作者が20年ぶりに食べた天丼/久住昌之

4月25日(土) 8:53

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『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは天丼。果たして、お味はいかに?

孤独のファイナル弁当 vol.27「久しぶり過ぎる天丼弁当が、焼き鳥だった」

天丼。ずいぶん長いこと食べていない。

最後に食べたのは「てんや」の天丼。仕事でマンガに描かねばならず、必要に迫られて食べに行った。でも、もはやどんな天丼だったかさえ思い出せない。

たぶん、20年近く前だ。以来天丼というものを食べていないと思う。ちょっと意外だった。

天丼が嫌いなわけではない。若い頃は神保町の「いもや」の天丼をよく食べた。今思い出したら食べたくなった。でも考えたら、いもや以外で天丼を食べた記憶がない。

天ぷらは好きだ。天ぷら屋には時々行く。といっても数年に一度だけど。

自宅では揚げ物は一切やらない。

そういうわけで、久しぶりに食べてみようと思って「房総産菜の花と小エビの天丼(玄米)」の小さいのを買ってみた。手に持った時、まだ少し温かかったのもある。作ってそれほど時間がたっていないと思われる。何度も書いているが仕事場には電子レンジがないのだ。カップ味噌汁も買った。前回冷たい弁当がこれにすごく助けられたので。具は前回なめこだったので、豆腐とわかめにした。

仕事場に着いてさっそく食べた。まず菜の花から食べた。

うん、菜の花だ。たしかにその天ぷらだ。青臭いというか新鮮な植物の香りがする。もちろんサクッとしてはないが、悪くない。ちょっとタレが甘いかな。

玄米は冷たくはなかった。おいしい。が、ちょっとタレが多いのでは。

友達のタキモトさんが、銀座の天丼屋で注文の時「タレ、少なめで」と言えるようになるのに5年ぐらいかかった、と昔言っていた。それ、今とてもよくわかる。

次に小エビ天ぷらを食べてみた。かき揚げ的にすべてまとめて揚げるのではなく、一尾一尾揚げてある。それは食べやすくありがたい。

が、やはりちょっと甘いな、と思った。

味噌汁を啜って口直しをしてから、弁当の内容物説明を読んでちょっと驚いた。

「焼き鳥のタレ(醤油、砂糖、みりん、その他)」

と書いてあるではないか。

焼き鳥のタレで、天ぷらを食べる。そんなことしたことがない。甘いわけだ。いいのかそれで? ごはんを食べる。たしかにこれは焼き鳥のタレごはんかもしれない。そう思いたくない。天ぷらのタレごはんであってほしい。

急に紅生姜に、目が舌が心が、頼りたくなっている。それにしては紅生姜の量が心細い。味噌汁に逃避。その熱い味噌味に救われる。口の中の焼き鳥のタレ感が拭える。

うーん。数えたら小エビは残り6個もある。タレは全部にかけ回してある。ごはんにもたっぷりかかっている。タレだく、とまでは言わないが。箸を止めてため息つく。

紅生姜を大切に一本一本食べつつ、味噌汁の力を借りながらコツコツ食べた。

久々にいもやの天丼を食べに行こうと胸に誓った。しじみの味噌汁もいいんだ。

【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi

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