4月20日(月) 8:10
まず押さえたいのは、法律上、企業には65歳までの雇用確保措置が求められていますが、それは必ずしも「全社一律で定年を65歳にしなければならない」という意味ではないという点です。
定年延長への対応は、企業によって異なります。定年を65歳に引き上げる企業もあれば、60歳定年のまま再雇用制度で65歳まで働けるようにしている企業もあります。
また、退職金は法律で必ず設けなければならない制度ではありません。ただし、制度を設ける場合は、支給要件、計算方法、支払い時期などを就業規則に定める必要があります。
つまり、「65歳まで働かないと満額が出ないのか」「60歳で退職したら減るのか」は、法律で一律に決まるものではなく、会社の退職金規程を見なければ判断できません。
厚生労働省の「モデル就業規則」の第52条第2項では、継続雇用制度の対象者について、定年時に退職金を支給し、その後の再雇用期間については退職金を支給しないとしています。ただし、退職金制度の設計は会社によって異なります。65歳で退職する時点でまとめて支給する会社もあるため、まずは自社の就業規則と退職金規程を確認することが大切です。
60歳退職が退職金の面で損になるかどうかも、一概にはいえません。例えば、60歳で退職しても退職金がほぼ満額で支給される会社の場合は、必ずしも大きな不利とはかぎりません。一方、65歳到達を支給条件にしていたり、60歳以降の勤続分が上乗せされたりする仕組みの場合は、60歳で辞めると受取額が下がる可能性があります。
また、60歳以降の給与水準も重要なポイントです。65歳まで働くことで退職金が増えたとしても、60歳以降の給与が大きく下がれば、60歳で退職する場合との差はそれほど広がらないこともあります。
一方で、安定した給与で働けるのであれば、65歳まで勤めるメリットは大きくなります。このように、退職金だけを切り取って考えると判断を誤りやすいため、60歳から65歳までの収入全体を見たうえで考えることが大切です。
なお、公的年金の老齢基礎年金は、原則65歳から受け取る仕組みです。そのため、60歳で退職する場合は、退職金の額だけでなく、年金開始までの生活費をどうつなぐかも考えておく必要があります。
60歳退職を考えるなら、最低限確認したい点は3つです。
1つ目は、就業規則や退職金規程に「定年時支給」「65歳支給」「自己都合退職時の計算方法」などがどう書かれているかで、ここが最も重要です。
2つ目は、制度変更の経緯です。会社は、就業規則を自由に変えられるわけではありません。労働契約法第9条・第10条では、就業規則の変更によって労働者に不利益な変更を行う場合に、内容の合理性や周知が問題になります。会社が定年延長に合わせて退職金制度が見直している場合は、説明資料や労使協議の内容も確認しておくと安心です。
3つ目は、例外的な扱いがあるかどうかです。国税庁は、定年延長前の旧定年で生活設計を立てていた人などについて、一定の条件を満たせば、旧定年時点での一時金支給を退職所得として扱える場合があると示しています。すべての会社で使える方法ではありませんが、経過措置が設けられている可能性はあります。
会社の定年が65歳に延長されたからといって、必ず65歳まで働かなければ退職金を満額でもらえないとはかぎりません。退職金の支給条件は会社の規程次第であり、60歳退職が損になるかどうかも、退職金の計算方法、60歳以降の給与、年金開始までの家計状況によって変わります。
大切なのは、「65歳まで働くべきか」「60歳で退職すべきか」を感覚で決めないことです。まずは就業規則と退職金規程を確認し、不明点は人事担当者に確認しましょう。そのうえで、60~65歳までの収入と支出を試算すれば、自分にとって納得しやすい選択をしやすくなります。
制度の内容を早めに確認し、必要な準備を進めておけば、定年延長に対する不安を減らしやすくなります。その結果、今後の働き方や退職の時期について、落ち着いて考えやすくなるでしょう。
厚生労働省 高年齢者の雇用
厚生労働省労働基準局監督課 モデル就業規則
デジタル庁 e-Gov 法令検索 労働契約法 (就業規則による労働契約の内容の変更) 第九条、第十条
国税庁 定年を延長した場合に一部の従業員に対して旧定年時に確定給付企業年金から支払われる一時金の所得区分について
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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