蘇る名馬の真髄
連載第43回:アドマイヤベガ
かつて日本の競馬界を席巻した競走馬をモチーフとした育成シミュレーションゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』(Cygames)。2021年のリリースと前後して、アニメ化や漫画連載もされるなど爆発的な人気を誇っている。ここでは、そんな『ウマ娘』によって再び脚光を浴びている、往年の名馬たちをピックアップ。その活躍ぶりをあらためて紹介していきたい。第43回は、名牝ベガの子として期待を背負い、見事に1999年の日本ダービーを制したアドマイヤベガの軌跡を振り返る。
「3強」の争いを制して日本ダービーで戴冠を遂げたアドマイヤベガ(写真左。白帽)photo by Kyodo News
『ウマ娘』のキャラクターのなかでも、ことさら意味深なプロフィールを持つ存在がいる。アドマイヤベガだ。
実際に彼女のプロフィールを見ると、こんな文言が記されている。
どこか影を背負い、周りと関わろうとしないウマ娘。 幼少期に何かあったらしく、レース活動は、何かの罪滅ぼしのためにやっている節もある――。
幼少期に何かあったという設定は、このウマ娘のモデルとなった競走馬・アドマイヤベガからきている。同馬は、現役時代に牝馬クラシック二冠を達成したベガの子として生まれてきたが、ベガは双子を受胎し、出産までの間に片方の子は堕胎されているのである。
サラブレッドが双子を出産するのは、母子ともにかなり危険性が高いとされている。また、仮に2頭が無事に生まれたとしても、身体が発達しづらいと言われているため、どちらかを堕胎するのはやむをえない選択だった。いわば、サラブレッドの世界では仕方のないことではあるが、こうしたストーリーが反映されて、ウマ娘・アドマイヤベガのプロフィールは意味深なものになっているのだろう。
誕生した瞬間から数奇な運命をたどることになった競走馬・アドマイヤベガ。3歳(現2歳。※2001年度から国際化の一環として、数え年から満年齢に変更。以下同)秋の1998年11月にデビューしたが、その初陣では後続に2馬身半差をつけてトップでゴールするも、進路妨害によって4着降着となってしまう。
それでも、続く500万下(現1勝クラス)を快勝。新馬戦で見せた強さをすかさず証明して見せた。さらに、出世レースであるGⅢラジオたんぱ杯3歳S(阪神・芝2000m)も勝って連勝。一躍、翌年のクラシックの最有力候補に名乗りを上げた。
迎えた4歳初戦。GⅡ弥生賞(中山・芝2000m)では圧倒的な支持を得たが、先に抜け出したナリタトップロードをとらえきれず、2着に屈した。さらに、クラシック第1弾のGⅠ皐月賞(中山・芝2000m)でも1番人気に推されたが、6着と完敗。代わってレースを制したのは、5番人気の伏兵テイエムオペラオーだった。
クラシックの主役と見られながら、よもやの連敗を喫したアドマイヤベガ。世代の頂点を決するGⅠ日本ダービー(東京・芝2400m)では、もはや断然の存在ではなくなっていた。直前のオッズでは、1番人気ナリタトップロード(3.9倍)、2番人気アドマイヤベガ(3.9倍)、3番人気テイエムオペラオー(4.2倍)が僅差で人気を争って、レースは"3強"の様相を呈していた。
注目の大一番、名牝ベガの子はその血筋を誇る圧巻の走りをついに披露した。
大歓声のなかでゲートが開くと、テイエムオペラオーとナリタトップロードは中団で、アドマイヤベガは後方からレースを進めた。アドマイヤベガに騎乗するのは、武豊騎手。母の主戦も務め、その息子ともデビューからコンビを組んできた天才ジョッキーである。
3コーナーから4コーナーにかけて、ライバル2騎は早くも先団へと取りついていく。アドマイヤベガもその後ろから徐々に進出していく構えを見せる。そして直線を迎えると、下馬評どおり"3強"の熾烈な争いとなった。
まず先頭に立ったのは、一冠目を手にしたテイエムオペラオー。だが、残り200mをきったところで、その外から猛追してきた1番人気ナリタトップロードがトップに立つ。
このまま栄冠を手にするのか――そう思われた直後、さらに外からやってきたアドマイヤベガの凄まじい末脚が炸裂。ゴールを目前にしてナリタトップロードをきっちりかわし、鮮やかな差しきり勝ちを決めた。
熱狂の東京競馬場。テレビ中継の画面からはこんな実況のフレーズが聞こえてきた。
「母ベガの二冠達成から6年、またもその息子が輝く一等星に!アドマイヤベガ!」
その後、アドマイヤベガは秋初戦のGⅡ京都新聞杯(京都・芝2200m)を快勝したが、三冠最終戦のGⅠ菊花賞(京都・芝3000m)ではライバルのナリタトップロード(1着)とテイエムオペラオー(2着)が勝ち負けを演じるなか、6着に終わる。以降、ケガなどもあり、レースに出ることはなかった。
わずか8戦の短い競走生活。しかし、そのなかで見せた走りは間違いなく"一等星"の輝きだった。
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