なぜ春ドラマは“女性バディ”ものが大豊作?『風、薫る』『銀河の一票』…業界人が明かす“求められる企画”の変化

『連続テレビ小説 風、薫る Part2』(NHK出版)

なぜ春ドラマは“女性バディ”ものが大豊作?『風、薫る』『銀河の一票』…業界人が明かす“求められる企画”の変化

4月17日(金) 15:47

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見上愛と上坂樹里がダブル主演を務める朝の連続テレビ小説『風、薫る』(NHK総合)。明治時代に活躍した看護師・大関和と鈴木雅、ふたりの活躍が描かれる“シスターフッドもの”としても注目されています。

シスターフッドとは、女性同士の連帯、絆、支え合いを示す概念のこと。2026年春ドラマではシスターフッドをテーマに置いたような、女性俳優ダブル主演の作品が多く見られるのです。そんな非常に珍しいクールである今期、その理由はいったいどこにあるのでしょうか。

女性「ダブル主人公」ドラマが8作品以上!



キャストのクレジットが1番手と2番手が女性である今期のドラマは、『風、薫る』はもちろんのこと、なんと8作以上。ざっと見ただけで、こんなに!

『銀河の一票』黒木華×野呂佳代(関西テレビ/フジテレビ系)
『月夜行路―答えは名作の中に―』波瑠×麻生久美子(日本テレビ系)
『水曜日、私の夫に抱かれてください』菅井友香×入山法子(テレビ東京系)
『サレタ側の復讐 同盟を結んだ妻たち』水崎綾女×篠田麻里子×矢吹奈子(テレビ東京系)
『未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3』鈴木京香×黒島結菜(テレビ朝日系)
『あざとかわいいワタシが優勝』大友花恋×桜井玲香(TOKYO MX系)
『エラー』畑芽育×志田未来(ABC/テレビ朝日系)

物語が進むにつれ“シスターフッドもの”ではない展開になる可能性もありますが、女性のダブル(トリプル)主演作がこれほど多く揃うのは前代未聞のことでしょう。

『風、薫る』のふたりはどう描かれていくか



現時点では『風、薫る』主演ふたりの人生は深く交わっておらず、それぞれの背景やキャラクター、そして看護の道に至る背景が丁寧に描かれている最中です。

史実では、モデルの大関和と鈴木雅が本格的にバディとして手を組んだのは40歳近い年齢の時。今までの朝ドラと同様に、大関和の足跡を描いた原案を大胆に再構成してオリジナルのフィクションとしてドラマで描くということから、展開的に二人がタッグを組んで動き出す時期は史実より早まるのでしょう。ふたりの人生が、どのように描かれていくのか見ものです。

男性バディものは数多く存在。一方、女性バディものは?



男性バディものは、古くから『あぶない刑事』シリーズ(日本テレビ系)『振り返れば奴がいる』(フジテレビ系)『人生は上々だ』(TBS系)、そして今でも続く『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)や、続編の声も高い『MIU404』(TBS系)など数多く存在し、人気の高いジャンルとなっています。

一方、女性ふたりを描いたものというと、ダブル浅野(温子、ゆう子)主演の『抱きしめたい!』、安田成美と中森明菜の『素顔のままで』、観月ありさと松下由樹の『ナースのお仕事』シリーズなど(いずれもフジテレビ系)、過去に名作はあれど継続的に制作されるようなものではありませんでした。

ではなぜ今期に“女性バディもの”や“シスターフッドもの”が多く放映されるようになったのでしょうか。その理由を、地上波の連ドラで脚本家として活躍するMさんはこう分析します。

女性は「サポートする側」という風潮だった



「これまでは男性中心社会であり、ドラマの中だとしても刑事や医療、ビジネスの最前線で女性ふたりがタッグを組んで活躍するというのは『非現実的』『ありえない』という根強い意識がありました。

男性が女性をサポートする、そんな価値観が強い中で女性がコンビを組んで社会の中心で活躍するということは“ファンタジー”という認識。細かな設定と大きな理由付けをしない限り、作品の違和感になりうる時代でした。

女性同士の友情は脆い、女性同士が集まるとドロドロしたり対立構造ができて物事が進まないというようなどというイメージもありましたね。

ですが昨今の多様性尊重や男女の役割差をなくそうとする潮流により、女性が中心となり社会の中で戦うシーンも増えていきました。先人たちが壁を破り、あり得ないと思われていた女性首相が誕生した今、『もしかしたら、女性が中心となったこの設定もありうるんじゃないか』と受け入れられるようになったのでしょう」(脚本家Mさん/以下同)

いま「女性バディもの」を制作するメリット



要するに、時代の流れによる意識変化があったからだとMさんは言います。また、制作側としても、同じバディものを男性から女性に変えるだけで、ストーリーの幅が広がるという利点があるそう。男性主人公でやりつくされた企画でも、女性主人公であるだけで、目新しく華やかに見えるのだそうです。

「さらに女性主要キャラが複数いることで、前時代のドラマや社会の中で確立された女性像とは異なるキャラクターをしっかり描くことができます。『風、薫る』でも、主人公ふたりのキャラや背景は全然違いますよね。そこも今後楽しみな点のひとつです」

『ハコヅメ』『極悪女王』などのヒットがカギか



加えて、近年生み出されたシスターフッドを描いた作品が良質で、好評を得てきた成果もあるでしょう。

映画『あのこは貴族』、Netflix『極悪女王』、『その女、ジルバ』(関西テレビ/フジテレビ系)、『団地のふたり』(NHK)、『ハコヅメ』(日本テレビ系)、そして先日スピンオフも放映された朝ドラ『虎に翼』(NHK)にもシスターフッドの要素がありました。

「迫力がない、骨太さがない、おままごとみたい――などと、女性ダブル主人公の映画やドラマは企画段階で敬遠されているイメージでした。ですがこれらの作品の成功や高評価によって、女性バディものが受け入れられる土壌ができ、風向きも変わってきたようです。その流れで女性が立ったドラマが企画制作され、花開いた旬のタイミングなのでしょう」

隆盛する女性ダブル主演ドラマ――まさに2026年春クールドラマは、今の時代を象徴しているということですね。

<文/小政りょう>

【小政りょう】
映画・テレビの制作会社等に出入りもするライター。趣味は陸上競技観戦

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