『孤独のグルメ』原作者が「来世でも食べたい」と思った羽田空港の弁当…1600円でも高くなかった/久住昌之

羽田で最後の弁当はなんだ?

『孤独のグルメ』原作者が「来世でも食べたい」と思った羽田空港の弁当…1600円でも高くなかった/久住昌之

4月17日(金) 15:46

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『孤独のグルメ』原作者で、弁当大好きな久住昌之が「人生最後に食べたい弁当」を追い求めるグルメエッセイ。今回『孤独のファイナル弁当』として取り上げるのは羽田空港で買った弁当。果たして、お味はいかに?

孤独のファイナル弁当 vol.24「羽田で最後の弁当はなんだ?」

九州に行くので羽田空港に行った。テラス席に、焼き肉と白いごはんの弁当的なものを食べている人がいた。見た瞬間、

「今回のファイ弁(もう略してる)あれだ! あれはなんだ? どこに売ってるんだ?」

となった。お昼でお腹がすいているのもあるが、いわゆる連載病である。

並んだ店を見回ると、あった。トルコ料理店にあった。なるほど。いいじゃないか。メニューの写真でわかった。さっきのは「ミックスケバブプレート」1600円。ちょっと高いが、うまそうだし、決める。飲み物はウーロン茶にした。食べ終わり次第この文章を書くので搭乗まで時間がたっぷりあっても、たとえこれが一生の最後の弁当であっても、アルコールは飲まない(んなことわざわざ書かんでよい)。

席は出発階を見下ろす場所で、アリのように行き交う旅行者を眺めてゆっくり食べるのは、なかなか気分がよい。

ちょいと時間がかかって出てきたものは、弁当型容器に入った、焼き肉3種と、白米(安全安心のオーガニック米を使用、と書いてある)と、ぎゅっと詰まって見えるミックスサラダだ。飾り気ないのがいい。肉には一部ケチャップ色のソースがかかっている。

プラスチックのフォークとナイフを使って肉の一片を半分に切る。切りにくいかと思ったら、すいすい切れる。これは肉がいいのか、プラナイフがよくできてるのか。

む、うまし。切れるのは肉が柔らかいからだった。ケチャップ的なの、あっさりしていてよい。トマトピューレに近いソース。たぶんこれは脂身のない牛。トルコでは宗教上の理由で豚は食べない。羊か牛か鶏。この弁当の肉はその3種と思われる。

すぐにごはんを追っかける。細長いバスマティライスではなく、普通の白米だが、小粒で水分少なめにぱらっと炊かれており、肉に合う。弁当だがあったかいのは嬉しい。

サラダのドレッシングはヨーグルトの味がした。地中海系のサラダによくある。これも好き。野菜自体おいしい。

次に食べた肉は、明らかにラムだった。うまい。初めて食べた時は、臭いとさえ思った特徴が、今はなくてはならない羊要素。ケバブだケバブ。久しぶり。噛み応えもあるが、決して硬くはない。

鶏肉もうまい。そのまま塩味もいいし、ケチャ的なやつの余りをナスリっつけて食うのもうめえど。

この弁当、よい。値段と釣り合っていると思う。また羽田でこれ食べる気がする。いや、これはファイナル想定だ。ならば来世でもこれ食べてうまいと言いそうな気がする。いや、来世は菜食主義宗教の人間かも。いや、虫かも。羊か牛か鳥になって、空港で食われているかも、読者のあなたに。



【久住昌之】
1958年、東京都出身。漫画家・音楽家。代表作に『孤独のグルメ』(作画・谷口ジロー)、『花のズボラ飯』(作画・水沢悦子)など。Xアカウント:@qusumi

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