婚活を男性視点で赤裸々に描いた実録コミックエッセイ『独りで死ぬのはイヤだ』(集英社)が、大きな反響を呼んでいます。
作者は、29歳でくも膜下出血を発症した経験を描いた『くも漫。』(リイド社)で知られる漫画家・中川学さん。コロナ禍での過酷な自宅療養を機に「独りで老いる恐怖」を痛感し、マッチングアプリや街コンの世界へ飛び込みました。「48歳・年収200万円」という、婚活市場では決して有利とは言えないスペックで、中川さんはどう戦ったのか。
今回は、マッチングアプリでの現実や、身だしなみへの工夫、そして女性との関係を深めるための「開き直り力」について、中川さんに話を聞きました。
※本記事は全3回のうちの2本目です
「本当に出会える?」最初は半信半疑だった
――婚活をしていて、現実の厳しさを感じた瞬間はありましたか。中川学さん(以下、中川):比較対象がいないので断言はできませんが、マッチングアプリではなかなか「いいね」はもらえなかったですね。女性の人気会員だと数百件、数千件の「いいね」がつくこともあるそうですが、僕の場合は2年以上使って合計30件届かないくらい。これが現実なんだな、と。
――その数字だけ聞くと心が折れそうですが、手応えを感じた部分は?中川:「いいね」自体は少ないですが、そのうち約半数の方とはメッセージのやり取りまで進めました。そこから実際に会えたのは10人ほど。自分としては「意外と会えるもんだな」というのが正直な感想です。
初めてマッチングアプリを使ったので、「実際に会える人数はすごく少ないんじゃないか」と半信半疑だったんです。あと、ごくたまに女性から「かっこいいですね」と言ってもらえることがありました。今もその言葉を心の糧にして生きています。
目指したのは「坂本龍一」
――女性と会う時に身だしなみで気をつけていたことはありますか?中川:服装はあえて「1パターン」に固定しました。ユニクロの白いオックスフォードシャツに、黒のワイドパンツ。この組み合わせなら清潔感が出る気がして、同じものを何着か揃えて着回していました。
あと、靴はいつも同じショートブーツを履いているんですが、女性に会う前はなるべく汚れを拭いていました。婚活するようになってから、2か月に1回くらいは床屋にも行くようになったと思います。
――そのスタイルには、どうやって行き着いたのでしょうか。中川:婚活を始める少し前に、「坂本龍一になりたい」と思ったんです。それを目指して、この髪型にするようになりました。丸ぶちのメガネも購入しました。
――周りの方から、坂本龍一さんに似ていると言われたことがあるのですか?中川:全然言われてないです、「坂本龍一さんの雰囲気がかっこいいな」と思って、自分で勝手に寄せにいこうとしているだけです。僕は毛量はけっこう多いし、白髪になりやすいタイプなので、「あ、これは坂本龍一だ」と(笑)。自分で目標を決めたら、服装とか髪型とか決めやすいんじゃないでしょうか。
ただ、記事などの写真を見た読者からは「歯が汚い」「髭が不潔」と手厳しい指摘をいただくことも多いです。自分でも自覚はあるので、これからはそこを改善していきたいですね。
一回死にかけたから、開き直れた
――清潔感やオシャレに気を遣われていますし、実はモテる方なのではないでしょうか。中川:僕は結婚相手もいないのですが、友達もいないんです。比べる相手がいないので、モテるのかどうなのか全然わからないです。実際に深い仲になったお相手も、それほど多くはないと思います。
――コミュニケーションへの苦手意識があるとのことですが、どうやって女性と関係を深めていったのですか?中川:僕はとにかく「開けっぴろげ」なんです。駆け引きは一切せず、思ったことは正直に伝えます。本当に好きになったら「好きになりました」と言うし、ホテルに行きたいと思えばそのまま言葉にします。
――正直に伝えることに、不安や躊躇はありませんでしたか?中川:29歳のときにくも膜下出血で死にそうになった経験があるのですが、助かったとき、「これからの人生は余生だな」と思ったんです。漫画家を目指したのも、それからなんです。「どうなってもいい」という精神で20年くらい生きているので、「好きです」とかも開き直って言えてしまうのかもしれません。
「自分は一回死んだんだ」と思えば、大抵のことは怖くなくなる。その居直りが、婚活でも強みになっているのかもしれません。
<取材・文/都田ミツコ>
【中川学】1976年生まれ、北海道出身。北海道教育大学釧路校教員養成課程(数学)卒業後、中学の数学教師の職に就くが、仕事がつらすぎて失踪・辞職。その後、2005年、札幌の風俗店でくも膜下出血を発症し、闘病生活を経て漫画家に。著書に『僕にはまだ友だちがいない』『くも漫。』『探さないでください』などがある
【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。
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