義父の家に行く度、自分だけが無視され透明人間になったようで……。
今回は、そんな孤独に耐えた日々に、ある変化を起こした女性のエピソードをご紹介しましょう。
義父から無視され続ける日々
中嶋葉子さん(仮名・29歳)は、結婚して3年になりますが、義父から名前で呼ばれたことが一度もありません。
「呼ばれるのは、たまに投げつけられる『おいっ』だけですね」
義実家に行けば、義父と夫が延々と昔話をし、義兄弟のエピソードが止まらない……葉子さんだけが、いつも家族の輪の外側に置かれたままでした。
「なんとか話に入ろうと、『あ、その場所なら私も行ったことあります』『それってどういうことですか?』などと質問しても、義父は毎回絶対に聞こえないふりをするんですよね」
普段は気さくな義母も、義父の前では急に黙り込んでしまうため、葉子さんの孤独感は増すばかりなんだそう。
夫に訴えても「父さんは昔からああいう人だし、無視しているわけじゃないよ」と軽く流され、理解されない日々が続きました。
「義実家に行くたびに“無視される痛み”と“嫌味”がセットでついてきて、気づけば帰り道はいつもため息ばかりついていたんですよ」
態度が変わったきっかけは“BBQ”だった
実は、義父の態度が急に冷たくなった原因はこれなのでは? と思い当たる出来事があったそう。
「結婚直前に、義父が『花嫁さんを歓迎しなきゃ!』と張り切って家族バーベキューを開催してくれて。もちろん私も大喜びで参加したんです」
気を遣った葉子さんは、少し奮発してお高いお肉とシャインマスカットを差し入れで持参。するとそれが想像以上に大好評で、義母も義兄弟も「美味しい!」「すごい!」と大盛り上がり。
「そしてその横で、義父が用意した“お得パックのスーパーのお肉”や“ソーセージ”はほとんど手をつけられず残っていて……その時の義父の苦々しい表情は今でもはっきり脳裏にこびりついています。それ以来、私にだけ態度が冷たくなった気がするんですよね」
自分的には何も悪いことをしていないのに、義父のプライドに触れてしまった。そのこじらせた感情が、3年経った今でも続いているのだと思うと、葉子さんは虚しくなるばかりでした。
我慢の限界で放った“本心”
「そんなある日、義実家に行くといつものように義父の思い出語りが止まらなくて。私がやれやれといった感じで黙って聞いていると、義父がチラリとこちらに視線を向け、私を指さしてこう言い放ったんですよ『今日も仏頂面で可愛くないねぇ』と」
その瞬間、我慢の限界がきて血が沸騰するような怒りが込み上げたそう。
「はぁ? なんでお前にそんなこと言われなきゃいけないんだよ! と心の中で叫びながら……もうどうしようもできませんでしたね」
葉子さんはゆっくり顔を上げ、静かに、でも確実に届く声で「はい。だって全く知らない話ばかりですし、質問しても無視されて……正直、本当につまらないです。では、お先に失礼しますね」と気がつくと本心を伝えていました。
「部屋の空気が凍りつくのを背中に感じながら、私はそっと立ち上がり、そのまま義実家を後にしたんですよね」
玄関を抜けた瞬間、冬の冷たい空気がふわっと頬を撫でたそう。
「寒いはずなのに、驚くほど気持ちよくて。久しぶりに肺の奥まで息が吸えた感じがしましたし、あぁ……やっと自分を取り戻せたって思えたんですよ」
関係が変わったその後
帰宅すると、慌てた様子の夫が必死に謝ってきました。
「私が帰った後、義父は『最近の若いモンは失礼だ』とプリプリ文句を言っていたらしいのですが、夫は『そんなの気にしなくていいから』と言ってくれて嬉しかったですね」
そして後日、義母から個別に電話があったそう。
「『ごめんなさい……あなたの気持ち、分かっていたのに何も言えなくて』と涙声でした。義母は心優しい人なのですが、義父の前ではどうしても強く出られないんですよ」
その後、義母は精一杯の思いやりで「これからは、無理して来なくていいからね」と続けました。
「その言葉のお陰で、私の心は一気に軽くなって……本当の気持ちを伝える勇気も時には必要だなと思った瞬間でしたね」と微笑む葉子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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