当時、僕と兄は父が経営する会社で働いていました。長い闘病の末に父が亡くなり、葬儀の日、母も交えて家族で会社の今後について話し合うことになったのです。ところがその場で、兄が耳を疑うようなことを言い出して……。
葬儀のすぐ後で…
父の葬儀の日、僕は祭壇の前で静かに手を合わせました。長い闘病の末に旅立った父を思うと、悲しみと寂しさが込み上げてきます。
控え室では、後輩のA子さんが目を真っ赤にして涙をこぼしていました。A子さんは僕と同じ部署で働く、信頼できる後輩です。震える声で「社長…もっと一緒に働きたかったです…」と話すA子さんに、僕も思わず胸が熱くなりました。僕が「父を慕ってくれてありがとう。きっと父も喜んでいると思うよ」と伝えると、A子さんは小さくうなずき、ハンカチで涙を拭いました。
その直後、兄から「家族だけで今後の話をしたい」と呼ばれました。兄は会社で営業部長を務めています。きっと、父亡き後の会社について相談したいのだろうと思いました。悲しみも癒えないまま、僕はその場を離れたのですが……。このときはまだ、自分の人生が大きく揺れることになるとは思ってもいなかったのです。
兄の裏切り
控え室に入ると、母と兄、そして僕の婚約者であるB美が待っていました。母が「会社のことと、今後のことを少しだけ話しておきたいの」と切り出した、その直後です。
兄が「次の社長は俺がやる。だったら親父の遺産だって実質俺が引き継ぐようなもんだろ? あ、あとB美も俺についてくるってさ」と言い放ったのです。B美まで「正直、これからのことを考えたら、お兄さんのほうが安心できるの。私はお兄さんについていくつもり」と口にしました。最近B美がよそよそしいと感じていた理由が、その瞬間、すべてつながった気がしました。
僕は気持ちを落ち着かせながら、「もう僕と結婚するつもりがないなら、婚約は白紙にしよう。でも、相手が兄だったなんて……それはさすがに想像していなかったよ」と伝えました。
すると、それまで黙っていた母が、きっぱりと「次の社長になるのは、あなたではなく弟のほうです」と言ったのです。兄は「何言ってるんだよ。長男は俺だろ!」と声を荒らげましたが、母はひるみません。
母は「株式や今後の運営については、お父さんから私が託されています。後継のことも、あなたが勝手に決められる話ではありません」と言い切ったうえで、これまで兄が闘病中の父の見舞いに一度も来なかったことや、日ごろの仕事ぶりに触れながら、「お父さんは生前、会社を誰に託したいのか、はっきり意思を示していたの」と告げ、保管していた書面を取り出しました。
その場の空気が一変する中、僕は覚悟を決めて、「任せてもらえるなら、僕なりに精いっぱいやってみるよ」と母に伝えました。
新たな日々へ
逆上して大騒ぎを始めた兄とB美を置いて部屋から出ると、A子さんが待っていました。僕たちの表情を見て、何かを察したようです。
母が「これからは、この子が中心になって会社を支えていくことになると思うの。どうか力を貸してあげてね」と伝えると、A子さんは背筋を伸ばし、「しっかり支えていきます!」と言ってくれました。そのまっすぐな言葉に、僕の中で張り詰めていた気持ちが少しだけほぐれて、A子さんに「ありがとう。これからもよろしく」と伝えました。
それからしばらくして、兄は会社を去り、B美とともに新しい仕事を始めたと聞きました。ただ、思うようにはいかなかったようで、いつの間にか二人の話を耳にすることはなくなりました。
一方の僕は、父から受け継いだ会社を守るため、必死に業務をこなす日々を送っていました。そんなある日、忙しく働く僕に、A子さんが「社長、少し働きすぎです。まずはちゃんと食べてください。よかったら今度、体にやさしい和食でもいかがですか」と声をかけてくれたのです。僕は少し驚きながらも、「ぜひ」と答えました。
父を亡くした寂しさは、今もふとした瞬間に胸に込み上げてきます。それでも、父が遺してくれたものを守りながら、前を向いて進んでいこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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著者:ライター ベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班
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