移動に欠かせない交通手段のひとつである電車。しかし、通勤や通学の時間帯は混雑するため、殺伐とした雰囲気がある。車内では譲り合いの精神を持って、お互い気持ちよく過ごしたいものだ。
今回は、子ども連れで電車に乗っていた際に、強い言葉を浴びせられたという2人のエピソードを紹介する。
母子を襲った突然のトラブル
井口真由さん(仮名・30代)は、3歳の息子を保育園に迎えに行った帰りに、いつもの電車に乗っていた。
「運よく座れたので、ホッとしました」
息子を膝に乗せ、窓の外を眺めさせながらひと息ついた。隣には50代くらいの女性が座り、イヤホンをつけてスマートフォンを見ていたそうだ。息子は機嫌がよく、今日あった出来事を小さな声で話していたという。すると……。
「いないいない……」といった息子が体をひねり、隣の女性に向かって「ばあー!」と顔を近づけてしまったようだ。
井口さんは「すみません」と言い、すぐに息子を引き寄せて頭を下げた。
「よくあることだし、軽く流してもらえると思っていたんですが……」
車内に響いた“信じがたい暴言”の瞬間
女性はイヤホンを外し、露骨に眉をひそめた。そして、車内に響く声で言い放ったのだ。
「なにこの子、気持ち悪~い」
空気が凍り、周囲の視線が集まった。息子は意味を理解していない様子だったが、井口さんの胸の奥は一気に熱くなった。
「まだ3歳なんです。だから絶対に悪気があったわけじゃないんですよ。怒りが込み上げましたが、声には出しませんでした」
そして井口さんは「申し訳ございませんでした」と、もう一度頭を下げると女性は舌打ち。わざとらしく席を立って隣の車両へ移っていった。
息子を抱きしめながら、井口さんは唇をかみしめていた。窓の外を無邪気に眺める横顔を見るほど、“怒りと悔しさ”が消えなかったという。
空いている優先席に座ったら…
夫と3歳の子どもと一緒に電車に乗っていた石田里穂さん(仮名・30代)。電車内は比較的空いており、子どもが「座りたい」と言ったため、状況を確認したうえで優先席に座っていた。
「混んできたら立つつもりでした」
周囲には空席もあり、立っている人はいなかった。小声でしりとりをしながら静かにしていたという。
すると、途中駅で60代くらいの女性が乗り込んできた。女性は、まっすぐ石田さんのほうへ歩いてくると、突然声を荒げた。
「優先席になんで元気そうなあんたたちが座ってんだ!」
電車内の空気が一瞬で張り詰め、石田さんは「え?」と戸惑いながらも立ち上がろうとした。
「日本は終わったな!」と言い捨て…
女性は「病院帰りなんだ」と言い、大量の薬を取り出して見せたきたそうだ。
「毎月1時間かけて通院しているんだよ!あんたたちみたいなのがいるから座れないんだ!」
怒りは止まらなかった。すると、夫が口を開く。
「優先席は専用席ではありません。乳幼児連れも対象です」
しかし、説明を重ねるほど、女性の声は大きくなった。
「日本は終わったな!」
そう言って、女性は先に電車を降りていった。石田さんは、しばらく言葉が出なかったという。
「誰かを押しのけて座ったわけではありません。それなのに、“マナー違反の象徴”のように扱われたことが悔しかったです」
電車では個人のマナーが大いに問われる。だが、不快に感じても声をあげにくい空気があるのは事実だ。自分の何気ない行動が周囲の迷惑になっていないか、あらためて意識する必要があるだろう。
<取材・文/chimi86>
【chimi86】
2016年よりライター活動を開始。出版社にて書籍コーディネーターなども経験。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。
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