4月2日から始まった恋愛リアリティーショー『恋愛病院』(ABEMA)。番組のコンセプトは、「本気の恋を忘れたワケあり男女10人が恋愛だけに向き合う」というもの。俳優、元Jリーガーなどからなる男性陣と、ミス東大、西東京市議会議員などからなる女性陣との間で展開される恋愛ドキュメンタリーです。
世間を騒がせた「石丸構文」が恋愛リア参戦
そして、ここに元政治家の石丸伸二氏も出演することが大きな話題を呼んでいます。「恋愛ってエモーショナルなものだと思うんです。それを人為的にどうこうしようとする試み。この結末がどうなるか、刮目してください」と意気込みを語っています。
石丸氏は2024年の東京都知事選で2位になり、一躍脚光を浴びました。その際、記者やコメンテーターとのやり取りでの言動が注目を集めました。
なかでも社会学者の古市憲寿氏とのバトルは伝説です。都知事選後の選挙特番で、古市氏が“では石丸さんのしていることとあなたが批判している政治屋は何が違うのか”と問いただすと、言葉の定義をめぐって果てしない堂々巡りが勃発しました。
古市氏の問いかけに、「定義については先ほど申し上げましたよね」とか「同じ質問を繰り返されてます?」「それって相違点を訊かれてます?」「もっとまとめて質問してください」と応じた石丸氏。全く噛み合わない会話に、多くの視聴者は度肝を抜かれたのです。
そこから“石丸構文”なる流行語まで生まれ、その独特の会話センスでも注目を集める存在になりました。そんな人物が恋愛リアリティーショーに参戦するのだから、面白くないわけがありません。
その理由を考えていきます。
論理が通用しない「俗な舞台」で剥き出しになる素顔
政治家時代には、真面目な政治記者や評論家、コメンテーターが、真正面から批判を繰り広げてきました。しかし、その都度“石丸構文”によって、批判は無効化されてきた。核心に触れる時間を食いつぶす論法、トークにおける牛歩戦術こそが最も得意とするところだったからです。
しかし、今回は“恋愛リアリティーショー”という思いっきり俗な舞台です。
しかも、相手は年下の女性たち。彼女たちからの忖度のないリアクションが答えになる。ニュース番組の評論家が言葉を尽くして反論するのとは違って、分かりやすい表情によってイメージが画面に刻まれるからです。存分に語る石丸氏を見つめる女性陣の生々しい表情。その絵ほど雄弁なものはありません。
つまり、『恋愛病院』では、初めて素で困った石丸氏を見ることができるかもしれないのです。政治家時代に批判的だった人たちにとっては、鬱憤を晴らすようなシーンになることでしょう。
それでも、今回の出演は石丸氏にとってもメリットがあると言えます。質問する人たちを笑いものにしてきた人間が、初めて笑われる立場に置かれる。そうした価値の逆転を体験することは、決して小さくない出来事だからです。
彼の恋愛が成就するかどうかに加え、この荒療治を経て言動がどう変わっていくのかにも注目したいところです。
「不器用なこだわり」が暴く、政治家・石丸伸二の真実
ネット上では、『恋愛病院』出演を機にソフトにイメチェンして、政界への復帰を狙っているのではないかと警戒する声もありました。
しかし、「恋愛ってエモーショナルなものだと思うんです」と語る人間に、そんなことを企むことができるでしょうか? 言葉の定義にこだわりまくっては、ロジックとも屁理屈ともつかないものをこねくり回して、挙げ句の果てに会話を破綻させてしまう。
そんな強いこだわりを持つ男に、計算で動く引き出しがあるでしょうか? 彼はただ、自分のロジックに忠実すぎるのです。その意味で、彼は政治家になるにはピュアすぎたのです。『恋愛病院』は、真の石丸伸二を映し出してくれることでしょう。
<文/石黒隆之>
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。いつかストリートピアノで「お富さん」(春日八郎)を弾きたい。Twitter: @TakayukiIshigu4
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