2010年にTBSに入社し、『朝ズバッ!』『報道特集』などを担当したのち、2016年に退社したアンヌ遙香さん(40歳・以前は小林悠として活動)。
TBS退社から紆余曲折を経て20年生活した東京を後にして活動拠点を故郷北海道に戻したアンヌさん。アラフォーにして再スタートを切った「出戻り先」でのシングルライフの様子や心境をつづる連載です。
第77回となる今回は、推し活にまつわるエピソードを綴ります(以下、アンヌさんの寄稿です)。
“推しがいること”の素晴らしさ
「Vaundy DOME TOUR 2026 “SILENCE”」札幌公演に足を運んでまいりました。会場は、旧札幌ドーム、大和ハウスプレミストドーム。
実は普段家の中ではテレビやラジオ派なので、音楽を鑑賞する習慣そのものはあまりないのですが、Vaundyは私がよく聴くJ-WAVEでもおなじみ。CMやドラマのタイアップも多いし楽しめるはず! と期待と不安が入り混じった気持ちを抱きながらの参戦でしたが、まあやっぱり本当にすごい! 最高すぎました。
Vaundyの動きに呼応して一つになる観客席の熱気。「踊り子」「不可幸力」でテンションが激しく上がり、「しわあわせ」では思わず息をのみ胸の前で手を重ね合わせてちょっと涙ぐんだり。
中でも印象的だったのが、「怪獣の花唄」。自然と観客の声が大きな合唱になり、広い広いドームで何万人もの人が同じメロディーを口ずさむ光景は、やっぱりぐっとくる。音楽そのものの持つ力、それ以上に「同じものが好き」という気持ちが集まると、こんなにも温かい空気になるのかと「これが平和な景色だよな」なんてしみじみとドーム中を見渡した私。
みんな目がキラキラしている。そして「かっこいいよー!」「ありがとう!!」と声を上げる。
やっぱり「推しがいる」って素晴らしい。
私にとっての推しといえば、北海道日本ハムファイターズ。
北広島市のエスコンフィールドに足を運べば、建物の外観を目にしただけでワクワク感が。
試合に勝てば一日中嬉しいし、負ければとんでもなく残念な気持ちになる。そんなふうに、生活の中にもはや自然と入り込んでいる存在。
ファイターズananを手に取り思い浮かんだある人物
つい最近、ファイターズの選手が表紙に起用された雑誌『anan』が発売されました。
昨年に引き続き2回目の試みですが、私がもっとも応援している清宮幸太郎選手を中心に、ルックスも実力も兼ね備えた選手陣が、アイドルのようにフィーチャーされている特別な特集号なのです。
ファイターズファンなら男女の別なく皆が覗きたくなる特別な一冊。
予約しなきゃと思っているうちにあっという間に発売日に。たまたま入ったコンビニで偶然発見! 手にとりレジへとまっしぐらに向かおうとしましたが、棚にはまだもう一冊残っていました。
一冊は自分用、もう一冊、その瞬間頭に浮かんだのが友人のお母さま。仮にA子さん(70代)とします。
郡司選手のファンで、会うたびにいつもファイターズの話に花が咲く「推し活」仲間だと私はとらえていました。そのA子さんにもさしあげよう! と一冊1300円というなかなか高価なananを2冊お買い上げ。
サプライズでプレゼントすると……
ただ当の友人は「野球はよく観ているけどわざわざ雑誌を買うほど好きかな? 欲しがるかな?」と微妙な反応。ま、でもでもせっかくだし、と“ファイターズanan”を手に友人のお宅にお邪魔した私。サプライズでA子さんにプレゼント。
すると「わあ!」と大きな声をだして飛び上がって抱きしめ、「病院の売店でみかけていたけど、私の年齢で買ってよいのかなって思っちゃってたのよね……本当にありがとう!」と満面の笑み。熟読を始め、その場でリビングの目立つ場所に陳列。
友人は母親がそこまで飛び上がって喜ぶとまで想像がつかなかったらしく、とにかくびっくり、というのが本音のよう。
長く一緒に暮らしていても、家族の“好き”の深さって、意外と知らないものなのかもしれません。彼女にとっても、友人にとっても、嬉しい出来事となったようでした。
“持っていなければいけないもの”ではない
ここまで喜んでもらえるなんて。やっぱり「推し活」は偉大なり。こちらまでホクホク。そんなことを思い出していたとき、以前、ある人から聞かれた言葉をふと思い出しました。
「自分には推しがいないんだけど、何か推せるものを見つけたい。どうしたらいいと思う?」というもの。
そう、「推す」という概念自体よくわからないという方もいらっしゃいますよね。
推しは、頑張って見つけるものなのか、それとも自然と出会うものなのか、どちらなのでしょう。
少なくとも、推しというのは、履歴書の趣味欄のように“持っていなければいけないもの”ではないはず。
でも、気づいたら好きかも、というレベルで始まっていた距離感が、もしかしたらいつのまにか自分の人生の根幹をなす存在にまで大きくなることもあるわけで。
断言できるのは、札幌ドームで聞いた「怪獣の花唄」の大合唱や、雑誌を見て飛び上がるほど喜んだ友人のお母さんの姿を思い出してみれば、推しというのは、人生を間違いなく明るくするし、平和にしてくれるということ。もし少しでも「気になる」ものに出会ったら、ちょっとずつ深掘りしてゆくと良いことがあるかも。
国際情勢も緊迫している昨今。誰かを存分に推せる状態があるというのは、穏やかな日常がある証拠だし、「同じものが好き」という状況は不思議な連帯感を人々にもたらします。
推し活は平和への近道。この、好きなものを思い切り好きと言える当たり前の日常がずっとずっと途切れることなく続きますように。
<文/アンヌ遙香>
【アンヌ遙香】
元TBSアナウンサー(小林悠名義)1985年、北海道札幌出身、在住。現在はフリーアナウンサーとしてSTV「どさんこWEEKEND」メインMCや、情報番組コメンテーターして活動中。北海道大学大学院博士後期課程在籍中。文筆家。ポッドキャスト『アンヌ遙香の喫茶ナタリー』を配信中。Instagram: @aromatherapyanne
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