【プロ野球】"異様な全力疾走"がスカウトを震わせた男無名から這い上がる「ギータ2世」寺本聖一の現在地

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【プロ野球】"異様な全力疾走"がスカウトを震わせた男無名から這い上がる「ギータ2世」寺本聖一の現在地

3月30日(月) 17:00

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キャンプで見つけた金の卵④〜オリックス・寺本聖一

2月の南九州。梅、桃、早咲きの桜......。多くの種類の花がいっせいに開花する季節だ。なかでも、沿道のそこここに輝く菜の花の「黄」の美しさに思わず息を飲む。あの透き通った黄の鮮やかさは、いったい誰がつくり出すものなのか。普段はあまり意識しない「神」という存在を、すぐそこに感じてしまう瞬間でもある。

支配下登録を目指して練習に励むオリックス2年目の寺本聖一photo by Nikkan sports

支配下登録を目指して練習に励むオリックス2年目の寺本聖一photo by Nikkan sports





【プロ志望高校生合同練習会での衝撃】オリックスの育成2年目外野手・寺本聖一については、彼の広島商業高当時から何度かコラムやメディアで推しているので、ご存じの方も多いかもしれない。

新型コロナウイルスの影響で、選抜も夏の甲子園もなくなってしまった2020年。その夏、プロへのアピールの場を失った球児たちのために、スカウトの前で技量を披露する「プロ志望高校生合同練習会」が開催された。

寺本との最初の出会いは、その時だった。

フリーバッティングで左打席から甲子園のライトスタンドに何本か放り込んだパンチ力がメディアの話題にはなったが、私が目を奪われたのは、まずライトで受けたシートノックだった。

矢のような軌道と勢いのあるバックホームを見せてくれたあと、三塁ベンチへと戻る際に見せた猛烈ダッシュのスピード。何か怖いものと出会って、ビックリして必死に逃げて帰ってくるような......。そんな異様な全力疾走が、「このオレを見てくれ!」と絶叫しているようで、こちらの胸にグサリと刺さったものだ。

【ベテラン指揮官も驚く練習の虫】高卒でのプロ入りは叶わなかったが、広島経済大に進学。ケガや壁にブチ当たった時期も挟みながら、4年間でリーグ戦通算12本塁打、4年春秋はいずれも3割台をマークするなど、ベストナインを3度獲得する好選手へと成長した。

粗けずりで力まかせだったバッティングも、大学3、4年でだいぶ安定した滑らかなスイング軌道を描けるようになっていた。

4年秋。取材で訪れた広島経済大のグラウンドで、全方向に同じような飛距離と打球スピードで快音を響かせていた。

50メートル6秒フラット。高校時代、甲子園で見せた走りは、さらにスピードを増していた。

そして遠投115メートルの強肩から、伸び感抜群で低い軌道を描くスローイング能力。人知れず、励みに励んだトレーニングで鍛え抜いたボディビルダーのような筋骨は、まるでギリシャ彫刻の「ヘラクレス」のようだった。

「人一倍どころか、二倍も三倍も練習しますね、寺本は。とにかく、こっちが『やめろ!』って言うまで、バットを振っていますから」

広島経済大の東賢孝監督は、社会人野球の伯和ビクトリーズ(東広島市)を率い、都市対抗に9度導いたベテラン指導者である。

「全身のバネ、瞬発力、バッティングのパワー、強肩、俊足に、伸びようとする意欲......。長く指導者をやっていますけど、寺本ほどいろんな条件が揃っている選手は初めてかもしれないですね」

横で耳を傾けていた寺本は、力強い眼差しをこちらに向け、言いきった。

「自分は、ネームバリューはまったくないので、認めてもらうには、実力を上げていくしかないんです。だから、今(大学)の環境でやれることはすべてやってきたつもりです。どれだけやっても、まだ足りないと思って頑張ってきたので。

高校、大学の先輩で、左打ちの外野手でもある柳田悠岐(ソフトバンク)さんと比べられたりしますけど、自分なんか、まだ全然比較の対象になっていません。でも、せっかく柳田さんの後輩になれたんですから、何年かしたら、近づいてきたんじゃないかって言ってもらえるような三拍子揃った選手になってみせます」

【支配下登録へ懸命のアピール】その日、オリックスのキャンプ地・清武総合運動公園野球場では、社会人「サムティ」とのオープン戦が行なわれることになっていた。

サムティは昨年立ち上げられたチームで、兵庫県三木市を拠点としている。まだ若いからか、試合前のバッティング練習でも、快打には元気いっぱいの称賛の声が飛ぶ、活気に満ちたチームだ。オリックスや横浜(現DeNA)で活躍した小川博文監督はじめ、指導陣の多くがプロ出身なので、試合前には、「お久しぶり!」の交歓風景も見られた。

その直後、オリックスのシートノックが始まる。社会人チーム相手とあり、ルーキーも交えた若い選手たちでのチーム編成だ。ノックの打球が強いゴロになって、ライト前に飛ぶ。

おそらく、わざと深めに位置していた寺本が、打球に向かって突っ込んでくる。そのスピードと弾力、そして、打球に働きかける意志と意欲。拾って素早くバックサード、バックホームする猛肩の生命力。学生時代の寺本を思い出させる光景だった。

「6番ライト」でスタメン出場すると、渾身のスイングからセンターとライトに痛烈打球の2安打。さらに絶妙のスタートから、二盗も決めてみせた。今の彼にとっては「ベストパフォーマンス」だったに違いない。

ただ、この試合、センターを守った7年目・遠藤成は2安打3打点、1番DHで出場した2024年ドラ1の麦谷祐介は3安打3打点2盗塁。外野のライバルたちは、やすやすと彼以上の結果を出してみせた。

「寺本、悪くないですよ。足も速いし肩も強い。バッティングもツボを持っていますしね。あとは、ちょっとガーッといきすぎるところがね......」

ある球団関係者はそうつぶやいていた。

2024年育成ドラフト4位でプロの世界に飛び込み、怖さをあれこれ体感したはずのルーキーイヤー。昨年はキャンプ前の新人合同自主トレ中に肋骨を折って、スタートで出遅れた。

少し離れたところで見ていた試合前のアップの時に目が合い、「ギータ2世」の顔が一瞬、パッと華やいだ。今年は、いい状態で野球ができているのだろう。よく陽に焼けたその笑顔の輝きに、これから伸びていく人のみずみずしさが発散されているようだった。

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