毒親、クズ男、薬物依存…傷ついても出産を選んだ5人の少女が母になる歩み映す「そして彼女たちは」監督インタビュー

毒親、クズ男、薬物依存…傷ついても出産を選んだ5人の少女が母になる歩み映す「そして彼女たちは」監督インタビュー

3月28日(土) 8:00

提供:
ベルギー出身のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督最新作「そして彼女たちは」(公開中)。来日したダルデンヌ兄弟が本作を語るインタビューが公開された。

第78回カンヌ国際映画祭で脚本賞と、エキュメニカル審査員賞をダブル受賞した本作は、若くして妊娠した女性を支援する施設で共に暮らす5人の少女を描いた群像劇だ。「CLOSE クロース」のルーカス・ドン監督が共同プロデューサーに名を連ねている。

当初は、一人の若い母親の物語として脚本を書いていたそうだが、その人物が母子支援施設にいる設定だったので、リサーチとして実際にその場所を訪れたのが始まりだという。

「そこで見たのは、一人の物語では捉えきれない現実でした。複数の若い母親たちが赤ん坊とともに暮らし、教育係や心理カウンセラー、看護師、さまざまな大人たちに支えられている。そこには、命を守ろうとする力がありました。子どもたちがよりよく生きていくための支えが、確かに存在していたんです。

食事や入浴、会話といった日々の積み重ねに強く惹かれました。同時に、それぞれの少女が抱える不安や葛藤も見えてくる。最初の構想を手放して、複数の若い母親――最終的に5人――を描くことにしました。そして私たちは、それぞれの少女に「出口」を持たせたいと思いました。彼女たちはある意味で、それぞれの状況の中に閉じ込められている。その状況からどう抜け出していくのか——それを描きたいと考えたんです」

ジェシカ、ペルラ、アリアンヌ、ジュリー、ナイマの5人の少女たち。親に捨てられた過去を持つ者、恋人に認知を拒まれ、音信不通にされてしまう者、不幸な環境から逃避する手段として、薬物に手を出してしまう少女も。家族の問題で傷つき、頼る人を持たず、貧困や暴力などさまざまな問題を抱える彼女たちは、戸惑い、悩み、目指すべき家族像を見いだせず、自分自身もまだ子どものまま母親になる。

「5人の物語は、それぞれ独立した人生です。一人ひとりに段階があり、その人だけの道筋があります。そのうえで重要だったのは、物語同士をどうつなぐかということでした。別の人物へと移っても関心が途切れないように、時間の流れや感情の連続性を大切にしました。母子支援施設という場所は、彼女たちを結びつける場ではあります。ただ、それが彼女たちの人生を決定づけるものではありません。同じ場所にいても、彼女たちは深い孤独の中にいます。共同生活という時間がある一方で、それぞれが自分の不安や選択と向き合う“ひとりの時間”もあるんです。

それでも、人は完全にひとりでは生きられません。教育係や心理士、そして同じ境遇の少女たちとの関係のなかで、少しずつ支え合いが生まれていきます。私たちが描きたかったのは制度そのものではなく、そこに生まれる人間的なつながりです」

親やパートナーに愛される経験を持たずに、親になった少女たち。その理由を「彼女たちの多くは、貧困や家庭内暴力のなかで育ち、母親との関係に問題を抱えています。それらはしばしば、世代を超えて繰り返されているものでもあります」と分析する。

「私たちは、心理士や教育係から話を聞きながら物語を構築しました。母に十分に愛されなかった経験や、その不在が次の世代へと影響していく現実があります。ただ、それを社会問題の典型として提示したいわけではありませんでした。これは典型的なケースではありません。一人ひとりが、それぞれまったく異なる“個”なのです。同じような背景を持っていたとしても、その人生は決して一括りにはできません。観客には、“こういうケースだ”と理解するのではなく、一人の人間として出会ってほしいと思っています」

それでも、彼女たちとその子どもたちが、他者との出会いによってもたらされる光を描きたいと願っている。

「私たちはこれまでも、社会の中で弱い立場にある人々を描いてきました。ただそれは、弱者としてではなく、一人の人間として描くということです。観客がその人と出会うこと。それが映画の役割だと考えています。そして、彼女たちが困難から抜け出すとき、そこには必ず誰かとの出会いがあります。ひとりでは難しくても、他者との関係のなかで、人はわずかに前へ進むことができる。だからこそ本作では、それぞれの物語の終わりに、小さな光を残したいと思いました。

それは確かな救いではなく、これから続く困難の中にあるものかもしれません。それでも、人生には力があります。優しさがあります。どんな状況の中でも、それは失われないと思っています。その“生の力”や“かすかな喜び”のようなものを、この映画の中で感じてもらえることを願っています」

【作品情報】
そして彼女たちは

【関連記事】
【動画】「そして彼女たちは」予告編
【インタビュー】ダルデンヌ兄弟が6年ぶり来日、麻薬ビジネスに手を染める移民の若者をサスペンスタッチで描く「トリとロキタ」
「文化とは他者と一緒にいること」ダルデンヌ兄弟、カンヌ受賞の新作とコロナ禍の生活語る

(C)Les Films du Fleuve - Archipel 35 - The Reunion - France 2 Cinéma - Be Tv & Orange - Proximus - RTBF (Télévision belge) / Photo(C)Christine Plenus
映画.com

エンタメ 新着ニュース

合わせて読みたい記事

編集部のおすすめ記事

エンタメ アクセスランキング

急上昇ランキング

注目トピックス

Ameba News

注目の芸能人ブログ