祝マンガ大賞2026受賞!【インタビュー再録】「青木まりこお断り」の児島青は大型店ほど催す書便派だった!

『本なら売るほど 1 (ハルタコミックス)』児島 青KADOKAWA

祝マンガ大賞2026受賞!【インタビュー再録】「青木まりこお断り」の児島青は大型店ほど催す書便派だった!

3月26日(木) 16:00

☆入社一周年記念に編集部・近藤碧がいま会ってみたい人に話を聞きに行く、福利厚生企画「近藤碧のいま会いに行きます」。お相手は、作中に「青木まりこ現象」が登場することでただいま本誌界隈で話題沸騰の古書店漫画『本なら売るほど』の作者・児島青さんだ(浜本も付き添いとして同行)
(本の雑誌2025年6月号掲載)

近藤 『本なら売るほど』1巻の最終話、「さよなら、青木まり子」に「本の雑誌」を出していただいてありがとうございます。
児島 こちらこそ。作中で雑誌をスクラップにしてしまって申し訳ありませんでした。
浜本 いえいえ。アートの素材を提供できたわけですから。
青木まりこ現象はいつからご存じだったんですか。
リアルタイムで特集を読んでいたわけじゃないんですけど、本好きの間で「それは青木まりこ現象っていうんだよ」みたいなことを言われたことがあって、その名前のインパクトで覚えていました。たまたま八〇年代の本の雑誌のバックナンバーを知り合いにいただいて、見返したら青木まりこさんの投稿が載った号もあって、そういえば、と着想しました。
実際に古本屋で「青木まりこお断り」の注意書きを見たわけではない、と。
見たことはないですね(笑)。でも、ある世代とかある層にとっては「青木まりこ」といえば共通認識ですからね。書店界の歴史に名を残された。すごいです。
実際、そういう経験はあるんですか。
はい。書便派です。それも店の規模が大きいほどなぜか...。
本の多寡によるということですかね。
私の場合はどうもそのようです。でも、最近落ち着いてきたかな。年齢にもよるんでしょうか。
その時、書店には長くいますか。
長くいますね。でも、棚を見始めたら「う?」っとなる(笑)。そんなに長居しなくても、ということが多いですね。
規模が大きいとなると新刊書店のほうがなりやすい?
そうですね。古本屋さんだとキュッとなっているので。紀伊國屋さんとか(笑)。でも本屋さんにトイレがあって、すごく助かったということは何回もありました。


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書便派の児島青さんが漫画家デビューを果たしたのは三年前。「キッサコ」「本を葬送る」が続けて「ハルタ」に掲載されたのである。児島さんがネットに上げた作品を見た「ハルタ」編集部の淺井康平さんが「この人の描く話をもっと読んでみたい」と思い、依頼したという。

単行本のあとがきに「どう断れば老後の自分が後悔しないか真剣に考えた」と書かれてますが、これはどういう気持ちだったんですか。
淺井さんに声をかけていただいた当時はコロナ禍だったんですが、私、体調を崩して入院していまして、タイミング的に今の仕事を続けていけるのかとか在宅でできる副業を持ったほうがいいんじゃないかなとか考えたり、そもそもあと何年生きられるんだろうみたいなことを考えたりしている時期でもあったんですね。あ、いまは元気です。それで、とりあえず二作描かせていただいたら、もうへとへとになって(笑)。これは大変なことだと思ったんですけど、お受けしたからには、若い漫画家志望とはちょっと違いますし、即戦力にならなければみたいな(笑)、プレッシャーを勝手に感じていて、「評判がとても良いので続けましょう」って言っていただいた時に、まあ、これは本来は嬉しい言葉なんですけど、正直、ゴールがわーっと遠くにいってしまったような気がして、どうしようと(笑)。「老後の自分が後悔しないか」というのは、考えたら、後悔しないのは、描き続けるっていうことしかやっぱりないなという裏返しです。
ネットに上げていたということですが、ずっと漫画を描いてたんですか。
いえ、描いてたわけじゃないです。子どもの頃から本を読むのと絵を描くのは好きだったので、この二つのことはずっと続けていたんですけど、漫画は描いたり描かなかったりで、たとえばコミケに出たりとか賞に応募するというような積極的な活動はしていませんでした。
好きな漫画家さんはいますか。
はい。子どもの時に家に誰が買ったものか、あだち充先生の漫画がばーっとありまして。『タッチ』とか『みゆき』とか。小学校の低学年の頃ですけど、よく読んでいて、原体験というか、あだち充先生の作風みたいなものが「これが漫画なんだ」っていう意識はいまもあります。その後、小学校高学年の時は、冨樫義博先生の漫画がすごく好きで、その時に漫画を描く真似事みたいなのを始めたんですけど、好きな連載が終わることを考えると怖くて漫画を読みたくなくなって(笑)。そこからしばらく漫画を読まなかった時期があるんです。その時期は司馬遼太郎先生の小説を読んだりとかしてまして。
おお、司馬遼は何を?
ベタですけど『燃えよ剣』とか。その延長で高校生の時だったかな、黒鉄ヒロシ先生の『新選組』を読んだんですけど、その時に「こんな漫画表現があるんだ」と。それはけっこう衝撃を受けました。
ほかにはどういうものを読んでいたんですか。
司馬遼太郎先生以外だと、村上春樹さんとか。文体を真似して小説を書いたりとかしてました(笑)。無駄にパスタを茹でたりとか。
ビール飲んだり(笑)。
飲んだこともないのに(笑)。原稿用紙の体じゃなくて、普通のノートに書いてました。漫画もそう。司馬遼太郎先生の短編とかを勝手に漫画化して(笑)。
へえ。司馬遼を!歴史ものだからちょんまげ結わせたり?
そうですね。ちょんまげ結ってる人を鉛筆で描いて。誰にも見せずに机にしまって、いまはもう捨ててしまいましたけど。でも、そうか。その時に知らず知らず漫画を描く練習をしてたんですね。プロの小説に沿って描いていたわけだから、「ここで盛り上げて」みたいなことを学んでいたのかもしれません。
その後はどんな本を?
広く浅く読んでました。これを言うと漫画は全部おまえのことやないかいって突っ込まれそうですけど、大学生の時は江戸川乱歩にハマってました。最近は忙しくて本の話を描いているのに本が読めないというジレンマを味わっています。読んで面白かった話とかもしちゃうと描けなくなるなあ、と思って(と笑いながら読書ノートを取り出す)。
近・浜 うわあ、読書ノート!
今年は自分にいろいろ課してみようと思って、有名だけど多くの人が読んでいない長編を読んでみる、というのをひとつ課していて、いま、『ユリシーズ』に挑戦しています。注釈を引くのが大変で、ぜんぜん進まないんですけど。
ご自宅にはたくさん本がありそうですね。
そんなにないです。紙の本が好きで残しておきたいんですけど、きりがないので、取捨選択して、これはもういいかなと思ったら、それこそ古本屋さんに引き取ってもらって、いまここにあってほしいという本だけを残しています。
本棚はいくつあるんですか。
三本です。本棚は自分で作りました。
漫画のジョージさんみたいにホームセンターで板を買って?
まさにそういう感じで。大変でしたけど、本棚って棚の高さとか奥行とか、自分の望むジャストサイズのものがなかなかない。じゃあ、作ればいいじゃないかと思って、見取り図を作って、文庫用と単行本用と作ったんです。肩が上がらなくなるくらいのこぎりを使いましたので、多少使いづらいところがあっても可愛いなって(笑)。
本棚を作る「201号室入居者あり」はその体験が基になっているんですね。
そうです。本好きだけどあまり本が読めないジョージさんが部屋中に本棚を作るんですけど、意外なことにあの人に励まされたっていう方がかなり多くて。「本が好きなんだけど、どうしても積読になってしまう。こんな自分でも本好きって言っていいのかと悩んでいたけど、ジョージさんを見てこんな私でもいいんだって思いました」とか。私も読むのが遅くて大量に読めなくて、こんな自分が本好きを名乗っていいのか、こんな漫画を描いていいのか、と思っていたので少し安心しました(笑)。

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読者から感想のハガキも多数届いているらしい。それも「久しぶりに漫画を読みました」といった年配層からのハガキが多いとのこと。

九十代の方もいらしてびっくりしました。ご本人のエピソードや身内の方の本の遺品のことなどを書いてこられる方も多くて、それも印象に残っています。
次のネタになりますね。
ほんとに漫画にしたいくらい。おばあ様が推理小説がお好きでクリスティーをたくさん持っておられたんだけど、亡くなってから遺品というか本を整理しようとしたら本の間から犯人を推理したメモが見つかったという素敵な話もありました。
古本屋にも取材されてるんですか。
このお店に特別にっていうのはないんですけど、まあ、あちこちでいろいろ話を聞いたりとか。古本屋ではないんですけど、過去に古いものを売り買いするような仕事をしたことがあったので。その点の心情とかは共通するものがあるかなと思って、想像で書いてる部分もあります。
古本屋といえば乱雑で埃っぽいイメージがありますけど、漫画の舞台となってる十月堂はきれいですよね。
そうですね。若い人がやってる最近の店っていうような感じで、神保町の本屋さんとは違う雰囲気で描いてるんですけど。
「あなたがモチーフにされてるんじゃないの?」とお客さんに言われたって、すごくうれしそうに話していた若い店主がいたんですけど、モデルにした古本屋さんとかはあるんですか。
店主のキャラクターのモデルですか。特定の方というのはないんですけど、古本屋さんに限らず、最近自分でお店を始めたりとか、ちっちゃな規模の商売を始めたりされる二十代、三十代の若い人に共通する外見のイメージみたいのをひとつ取り入れたのと、あとは中身もいかにも古本屋らしくない人がいいなと思って。そういう造形にしました。「何でも知ってるぞ」「本のことなら何でもお任せ」みたいな成熟した店主のイメージじゃなくて、ちょっと人間的にも未熟な感じで。
客と一緒に成長していくような。
2巻を読ませていただきましたけど、本の存在価値がダイレクトに描かれていてお客さん同士の輪が広がっていく感じもあって、今後の展開も楽しみです。
ありがとうございます。

(本の雑誌2025年6月号掲載)


追記『本なら売るほど』3巻は 4/15に発売予定!

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『本なら売るほど 1 (ハルタコミックス)』
著者:児島 青
出版社:KADOKAWA
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