リバプールにチャンピオンズリーグ制覇の可能性 カギを握るのは超絶技巧と八面六臂のMF

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リバプールにチャンピオンズリーグ制覇の可能性 カギを握るのは超絶技巧と八面六臂のMF

3月24日(火) 6:55

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西部謙司が考察サッカースターのセオリー

第92回ドミニク・ソボスライ

日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。

今季プレミアリーグで苦戦している昨季王者のリバプールですが、チャンピオンズリーグ(CL)ではベスト8に進出。この先のカギを握るのは、トップ下での起用が多くなってきたドミニク・ソボスライになりそうです。

【狙って回転をかけたスーパーシュート】 強いリバプールが帰ってきた。CLのラウンド16第2節、0-1のビハインドでホームにガラタサライを迎えたリバプールは4-0と圧勝。2試合合計4-1でベスト8進出を果たした。

ソボスライはシーズン終盤のリバプールのカギを握るphoto by Getty Images

ソボスライはシーズン終盤のリバプールのカギを握るphoto by Getty Images



25分の先制点はドミニク・ソボスライ。アレクシス・マック・アリスターが蹴った右CKを、ペナルティエリア外から走り込んで左足で合わせて左隅へ決めているのだが、このシュートが絶妙だった。

マック・アリスターは右足でCKを蹴っている。ゴール前の密集ではなく、その手前、ほぼペナルティエリア内外の境界線あたりへ低く速いボールを飛ばした。この時のボールの回転は反時計回り、アウトスイングの軌道である。

フリーで走り込んだソボスライは、グラウンダーのパスを左足のインサイドで合わせる。ほとんど足は振っておらず、インサイドの面に当てただけだった。しかしシュートはかなりのスピードでゴール左隅へ入っている。しかもボールの回転は反時計回りのままだった。

通常、左足のインサイドで蹴れば、ボールは時計回りの回転がかかる。しかし、ソボスライのシュートは反時計回り。

33分にも同じ種類のシュートがあった。この時自分の左側から来たパスを右足で蹴ってゴール右側を狙っている。この時も右足で蹴っているのにボールの回転は時計回りだった。

得点場面では右側から来たボールを左足で左方向へ、その後のシュートでは左側から来たボールを右足で右方向へ。回転のかけ方も同じなので明らかに狙ってやっているようだ。

【トップ下起用が当たる】 どちらも体を開きながら、インサイドの面をしっかり作って当てている。感覚的にはトラップと同じなのだと思う。右からのボールに対して、体を開きながら左足インサイドで回転を吸収して左側に置くような感じ。

得点になったシュートではマック・アリスターからのパスに強い回転がかかっていた。左足で止めるなら回転は吸収される。しかし、ソボスライはボールを止めるのではなく蹴っているので、回転を吸収しながら押し出す形になって回転トルクを上げている。

蹴るといっても足はほとんど振っていない。パスが速かったこともあるが、蹴り足の左足への荷重だけでシュートの威力を出している。もともとの回転に負けない面の固定と、何よりボールの少し右側の点を狂いなくとらえているのがほぼすべてだろう。

野球のバッティングなら流し打ち。この操作を利き足でない左でやれているのは非凡としかいいようがない。ほとんど足を振っていないのは、精密なインパクトが必要だからだ。

ガラタサライ戦のリバプールは、これまでの停滞を払拭する出来だった。ソボスライのトップ下起用が当たっていた。

1トップにウーゴ・エキティケ、2列目右にモハメド・サラー、左はフロリアン・ビルツ、そして中央にソボスライ。ただ、サラーはエキティケと2トップの形で攻め残っていて、本来サラーの守備範囲のはずの右サイドをソボスライがカバーしている。

サラーのポジションを下げず、前方に残したことで攻撃の威力が増していた。だが、それもふたり分の働きができるソボスライがいてこそ。ゲームを組み立て、決定的なパスを供給し、強烈なミドルシュートを放ち、守備では広いエリアをカバーし、長いリーチを利したタックルでボールを奪う......。八面六臂の活躍だった。

前半アディショナルタイムにソボスライへのファウルで得たPKをサラーが蹴ってGKに止められたが、後半に入るとソボスライ→マック・アリスター→サラーと渡って、サラーのパスをエキティケが決めて2-0。そこからは怒涛の攻撃で2点を追加して試合を決めた。

【万能な力をピッチの広範囲で生かす】 ハンガリー代表のキャプテン、攻守を司る別格のMFであるソボスライだが、その万能性ゆえに今季のリバプールでは右サイドバック(SB)に起用されていた。SBとしてもすばらしいプレーぶりだったが、これだけの才能をサイドに限定するのはもったいない。その意味では、ジェレミー・フリンポンが右SBに入ったことが大きかったとも言える。ソボスライはSBから解放され、サラーが蘇った。

ソボスライのトップ下は右サイドハーフとの兼任なので、攻撃時にはボランチのマック・アリスターが左のハーフスペースに進出する。これによりビルツ、マック・アリスター、ソボスライの連係が発揮されるようにもなった。タイミングを逃さずピンポイントのパスを供給できる3人がつながったことで、ボールは遅滞なく前進し、面白いようにゴールへ迫るようになっていた。

ソボスライの力をトレント・アレクサンダー=アーノルドの穴埋めに使っていたのを、本来のポジションに戻してより広範囲に影響を及ぼすようにした。この変化が相乗効果をもたらしているわけだ。

今やソボスライは主役であり脇役でもある。リバプールはソボスライを軸に回り始めた。プレミアリーグ連覇のためには遅すぎたが、CL制覇の可能性はまだ残っている。

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