■名バイプレイヤーとして活躍、2025年連ドラ初主演
「天音の時代が来る」
菅田将暉は、岡山天音についてコメントを求められ、「無敵」「無双」状態だと評した上でそう語った(「あさイチ」2025年11月28日NHK総合)。「天音にしかできない感情表現とか動きとか仕草みたいなものが映える」と。長らく名バイプレイヤーとして映画・ドラマで支え続けた岡山は、2025年の夜ドラ「ひらやすみ」(NHK総合)で連続ドラマ初主演を果たした。
基本的には気楽にほのぼの生きるヒロトの姿は見ている者に癒やしを与えた。その一方で、かつて俳優をしていたヒロトが悩み疲弊した末に辞めたという過去の描写があったのが効いていた。
■自分を責め続けた苦悩の日々
岡山もまた、10代の頃、大きな悩みの中にいた。シャイで学校嫌いだった岡山が、俳優の世界に入ったのは15歳の頃。大好きだった「中学生日記」(1972~2012年NHK総合ほか)の世界に入ってみたいとオーディションを受けた。「夢はマンガ家」という実生活を反映した“岡山天音”役でデビューした。
そのときは、俳優になるというよりも大好きな番組に出るという感覚だった。けれど、演じてみて「晴れた」感じがした(「ほぼ日刊イトイ新聞」2024年1月11~15日)。何か得体のしれないものにずっと怯えていた自分の心が晴れたのだ。お芝居ってスゴい、あれをもう1回やりたいと思い、自分で探して事務所に入った。
だが、そこから苦悩が続いた。事務所に泥を塗るわけにはいかない。けれど実力がなくて自分を責める、そんな日々が続いたという。「不器用なんだと思います。気にしなくてよいことを気にして自分の首を絞めちゃう(笑)。もっと自由にやったほうが結果よかったりするかもしれないのですが、そういう癖」(「文春オンライン」2019年9月5日)。
■楽しんでこそ生まれる感覚
役者の世界は周りに器用な人たちが多く、どんどんいい役を掴んでいく。でも自分はうまくできない。「みんなが飄々とやっていることとか、飄々と通り過ぎることが出来ることでも、僕は血だらけになっちゃったりする」(「MORE」2023年12月23日)のだ。何よりどう演じればいいのかがわからなかった。
「セリフや台本を読んでも、この言い方が正しいのかどうかとか、めちゃめちゃ的外れな読み方をしているんじゃないかとか。考える技術、悩む技術みたいなのが無かったので、ただ闇雲に、壊れない壁にずっと頭を打ち続けてるみたいな感覚」(「mirroRliar」2018年3月23日)だった。
転機になったのは、とあるワークショップだった。それまでもいくつか受けていたがピンとくるものがなかった。けれどそのときは違った。その講師のものは、論理的で再現性もあって目から鱗の連続だった。そんな極めて実践的な指導の中でポツリと岡山は講師に言われた。
「楽しんでる?楽しまなきゃダメだよ」
岡山はハッとした。それまでとにかく必死で「楽しむ」なんて発想がなかったのだ。けれど、楽しんでやっているときにこそ、自分の中から出てくる感覚があった。役者は監督の演出のもとに表現していくものだ。けれど、完全に「支配下」にあるわけではない。
「基本的に余白は残されてる。どんな監督でも、どんな台本でも。そこで『遊ぶ』感覚はあります。そもそもの監督の解釈と、自分の解釈が混ざり合うことで、これまで自分の知らなかった表現に、たどりついたりもする」(「ほぼ日刊イトイ新聞」前出)。
■魅力を感じるのは「やったことがないこと」
岡山は「ひらやすみ」のヒロト同様、「穏やかな人間」に見られがちだという。けれど、「本質的には感情の起伏が激しいタイプなんです。だから今でも自分の中で戦争が続いている感覚はありますが、折り合いの付け方がわかってきた部分もあります」(「with digital」2023年12月29日)。
どんな役をやりたいか。俳優への定番の質問に岡山は決まってこう答える。「ここで僕が思い付くようなのじゃない役」(「ヒルズライフ」2025年5月1日)。岡山は「やったことがないこと」にとにかく魅力を感じている。「極力新しい場所に行きたいし、新しいものを提示したい」(「大人のおしゃれ手帖web」'25年11月5日)と。
そこにこそ「遊び」があると考えているのだろう。彼が「穏やかな人間」に見えるのは、誰よりも「自分の中の戦争」を経て自分自身の楽しみ方を知ったからに違いない。だから真の意味での「癒やし」を与えられるのだ。
文=てれびのスキマ
1978年生まれ。テレビっ子。ライター。雑誌やWEBでテレビに関する連載多数。著書に「1989年のテレビっ子」、「タモリ学」など。近著に「王者の挑戦『少年ジャンプ+』の10年戦記」
※『月刊ザテレビジョン』2025年3月号
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