3月22日(日) 0:00
「転職すれば年収が上がる」というイメージがありますが、現実はそれほど甘くありません。厚生労働省の調査に基づき、まずは客観的な数字を見てみましょう。
厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」によると、転職入職者のうち前職より賃金が「増加」した人の割合は40.5%です。一方で「減少」した人は29.4%、「変わらない」人は28.4%です。つまり、転職して年収が上がる人は全体の約4割弱に過ぎないといえるでしょう。
同僚の「年収が上がった」という言葉を鵜呑みにする前に、給与明細の額面だけでは見えてこない、生活の質と将来の資産に直結する2つのポイントを解説します。
転職先が「想定年収」として提示する金額の内訳に注意してください。基本給が低く、業績連動の「賞与」や個人の「インセンティブ」の比重が高い場合、景気後退や自身のパフォーマンス次第で、翌年の年収が激減する不安定さがあります。
見落としがちなのが「非課税のメリット」である福利厚生です。
住宅手当の有無
: 月4万円の住宅手当(非課税枠の活用含む)がある会社から、手当なしで額面年収が50万円アップする会社へ転職した場合、税金を差し引くと実質的な生活水準は下がる可能性があります。
その他の補助
: 家族手当、食事補助、資格手当なども同様です。これら「税金がかからない、または優遇される手当」の有無は、生活水準に直結します。
転職にはリスクが伴いますが、同様に「今の会社に居続けること」にもリスクが存在します。
業界全体の給与水準が上がっているにもかかわらず、自社の賃金が据え置きであれば、実質的には「市場価値が下がっている」のと同じです。また、外部の新しい技術や手法に触れないまま年齢を重ねることで、いざ会社が傾いたときに「どこにも行けない」状態になるのが最大のリスクです。
また、動くリスクとして、新しい環境では、人間関係をゼロから構築する必要があります。試用期間中に「期待されたパフォーマンスが出せない」と判断された場合のリスクや、社内規定により転職後1年間は賞与が満額支給されないといった一時的な年収の減少も想定しなければなりません。
自分が今動くべきか判断するために、厚生労働省の「職業情報提供サイト(job tag)」を活用しましょう。自分の職種の平均年収や、求められるスキルを数値として把握することで、同僚の話が「例外的な成功」なのか「業界の標準」なのかを冷静に判断できます。
周囲に流されず、冷静に判断するための具体的な手順を解説します。
ステップ1:現在の「年間手取り額」を正確に算出します。
ステップ2:転職先の「提示年収」から、社会保険料や税金を差し引いた「真の手取り」を算出します。
ステップ3:5〜10年スパンでの「生涯賃金」の推移を予測し、現職の昇給率と比較します。
「周りが辞めたから」という理由は、転職の動機としては不十分です。しかし、市場価値を確認せずに残留し続けるのは、投資でいう「損切り」ができない状態と同じで、長期的なキャリアにおいては危険な選択となり得ます。
結論として、手取りや福利厚生などを数値化して比較し、生涯賃金が明確にプラスになると確信できたときこそが、賢く波に乗るべきタイミングです。感情的な焦りを捨て、数字という「事実」に基づいて、あなた自身が納得できる答えを出してください。
厚生労働省令和6年雇用動向調査結果の概要
厚生労働省職業情報提供サイト(job tag)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
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