18〜35歳の男女4000人を対象にした調査で、5人に1人が借金を抱えている実態が浮かんだ。背景には、成人年齢引き下げで借金のハードルが下がったことに加え、SNS経由の名義貸し詐欺や副業・投資トラブルの拡大がある。実際、軽い気持ちでスマホ15台を自分名義で契約し、800万円の返済地獄に陥った25歳男性もいた。若者を貧困へ追い込む“借金の入り口”を追った。
借金に苦しむ若者が増加
「『失われた30年』によって生まれた貧しい世代を親に持つ今の若者は、親を頼れず、貧しさを自分で抱え込んでいる例が多いんです」
そう語るのは、若者の詐欺被害などに詳しい立正大学教授の西田公昭氏だ。'22年、民法改正によって成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた。保護者の同意がなくても手軽な借金が可能となった結果、この4年間で借金に苦しむ若者が増加し貧困化の原因の一つとなっている。国民生活センターによれば、'23年に10代・20代の多重債務に関する相談件数が過去10年で最多を記録した。
'26年2月5日、全国の18~35歳・4000人を対象にアンケートを実施。すると全体の2割超が借金を背負っていた。その理由(Q3)を見ると、ショッピングが奨学金を上回る結果になった。借金に苦しむ若者の増加について西田氏は、「昔よりも悪徳なマルチ商法や副業詐欺の被害に遭うケースが多いです」と語る。
「現代の若者の情報源はテレビや新聞などではなく、スマホがほとんどです。特にSNSはサイトの閲覧時間や動画の再生数、いいね数などを基に、興味・関心を煽る情報が優先されて表示される。法的な規制も整っていないため、危険性やリスクを知らせる情報は自分で検索しない限り入ってきません。なので、ネットには無意識のうちにバイアスがかかり、自分を肯定する情報ばかりが集まるため、一気にのめり込みやすくなる」
U35の男女・4000人若者借金アンケート
Q1.借金がありますか?
ない79.2%
ある20.8%
「ある」と回答した832人に聞いた
Q2.借金額は?
10万円未満18.9%
10万~50万円未満21.3%
50万~100万円未満18.6%
100万~300万円未満17.2%
300万円以上24%
Q3.借金の理由は?(複数回答可)
ショッピング345人
奨学金290人
家賃・公共料金などの滞納201人
ギャンブル・FX・暗号資産などの損失170人
投資・副業・情報商材・オンラインサロン関連63人
その他57人
※2月25日から26日にかけて、Webアンケートツール「Freeasy」にて全国の18~35歳の男女4000人を対象にアンケートを実施
名義貸し詐欺で返済地獄に
外資系の保険会社に勤める長谷川航大さん(仮名・25歳)も、学生時代に多重債務に苦しんだ一人だ。
「大学のときにモデルをしていて、投資のセミナーにも通っていました。そのなかで、インスタグラムでフォローしていた先輩のインフルエンサーから、『仕事を手伝ってもらえないか?』と声をかけられたんです。話を聞くと、立ち上げた芸能事務所で配信に使うスマホやタブレットが複数必要だから、僕の名義で購入してほしいと。端末代と通信費は請求できて、月5万円の報酬がもらえるならオイシイ投資だと思ったんです」
通信キャリアを回って、計15台をローン契約。先輩に渡すと、現金1万円を手間代として受け取った。
「月末の支払い請求が届いて『お金を振り込んでください』と連絡しても音信普通。200万円近い端末代と通信費の請求が来ましたが支払えず、遅延損害金を含めて数か月で800万円まで膨らんでいました。弁護士に相談したら、お金を受け取った時点で携帯電話不正利用防止法違反の疑いと言われて、泣き寝入りするしかありませんでした」
どうにかキャリアの契約は途中解約できたが、月に30万円以上の返済が始まった。
「親には頼れなかったので、家賃4万円の木造アパートに引っ越し。昼間は自動車工場、夕方から深夜までホストをしてお金をつくりました。当時は一日1食で、夜中3時にコンビニのゴミ箱に廃棄された食べ物を漁ってなんとか生き延びてました」
2年で完済したが体重は30㎏減り、あばらが浮き出るほどガリガリになった。そんな失敗を経験したが、「成功して早く金持ちになりたい」と、お金に対する執着心は変わっていない。現在、外資系保険会社の営業で得ている年収は300万円。長谷川さんは就業できたものの、若者食いビジネスに巻き込まれ、借金を返せず、貧困に陥る若者は後を絶たない。
貧困化する若者が増えた背景は…
そうした貧困化する若者が増えた背景を前出の西田氏は「コロナ禍によるオンライン化で騙しの手口が高度化したから」と分析する。
「時代の変化で変わったのは、コロナ禍でオンライン化が進んだことにより、実体のない匿名の相手であっても周囲に相談せずに信用してしまうようになったことです」
また、長期的な経済不況による将来の不安も大きな要因になっているという。
「若者のなかには、親世代を見ていて真面目に働いても豊かにならないサラリーマンはダサいという感覚がある。サラリーマン像の崩壊で、フリーランスや個人事業主など不安定な働き方も増えました。また、将来の不安を払拭するための副業や投資に対して、『リスクを取らなければ成功はあり得ない』という心理的な抑制力の欠如もある。心の隙間や環境要因が重なっている現代では、多重債務に苦しむ若者がさらに増える可能性はあるでしょうね」(西田氏)
借金による若者貧困の急増は、閉塞感が漂う日本で一発逆転を狙わざるを得ない現状を表しているのかもしれない。
【社会心理学者 西田公昭氏】
立正大学心理学部教授。詐欺、悪徳商法の心理学研究の第一人者。著書に『マインド・コントロールの仕組み』(カンゼン)など
※2026年3月24・31日合併号より
取材・文/週刊SPA!編集部
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