「何もかも完璧」を目指す稽古場の「メリー・ポピンズ」3人は、ダメな自分をさらけ出し、助け合い、笑い合っていた! 【若林ゆり舞台.com】

左より、濱田めぐみ、朝夏まなと、笹本玲奈

「何もかも完璧」を目指す稽古場の「メリー・ポピンズ」3人は、ダメな自分をさらけ出し、助け合い、笑い合っていた! 【若林ゆり舞台.com】

3月19日(木) 9:00

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あの「メリー・ポピンズ」が風に乗って帰ってくる!ミュージカルの醍醐味がめいっぱい詰まった、観たら必ず胸がいっぱいになって、目頭が熱くなって、大笑いできて、大興奮できて、人を想うやさしさ、あたたかさを実感できて、心踊らせる名曲だらけで、前向きな多幸感をこれでもかと味わわせてくれる、完璧な「メリー・ポピンズ」だ。P.L.トラバースによる原作と、ディズニーによるジュリー・アンドリュース主演の映画版のいいところを併せもち、さらにダイナミックで不思議なショー場面もてんこ盛り。まるで魔法のようなこのステージは、キャメロン・マッキントッシュ(「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」)とディズニーが手を組み、2004年に英国で開幕。そのセットや演出をそのまま、日本人キャストで再現する名作なのである。

今回、メリーを演じるのは、初演から3度目となる濱田めぐみ、再演から2度目の笹本玲奈、そして今回初挑戦となる、元宝塚トップスターの朝夏まなとという3人。過酷な稽古期間の真っ最中に、3人が揃ってインタビューに応じてくれた。まずは、稽古場で、それぞれがいま、実感していることを聞いてみよう。

濱田「やはり全体のエネルギーがポジティブで前向き。ネガティブな部分を表している部分もあるんですけど、それを救いにメリーは来ているので、全体的に元気がよく、楽しい、ワクワクした空気感が稽古場に満ちていて。もちろん踊りや段取りを体に入れ込む作業は普通以上に大変ですが、稽古場で受け取るエネルギーがすごいから、元気になれる。キャスト全員の結束力が強く、とても居心地がいいんです。個人的には我を忘れて稽古をするとか、没頭しすぎて周りが見えないとかいうことが、初演のときにはあったんですよ。でも3回目という意味で、いまはちょっと俯瞰で、自分は距離を置いて稽古の状況を見つつ、自分の稽古も合わせてやっていく感じかな。慣れている分、余裕みたいなものが少し出てきている感じがします」

笹本「久しぶりにこの稽古場に戻ってきて、『いかにメリーがこの作品を回せるか、なんだな』というのを最近、すごく感じています。前回は必死だった分、今回はさらに一歩上のステージに上がって、みんなを引っ張っていきたい。お客様を含めてみんなをポジティブな世界に引っ張り、巻き込むのがメリーの役目だから、いかにしてそこに自分が行き着けるか。そこが課題ですね。私はこれまで歌がメインの作品が多く、踊りがある作品や、最後まで生きている役が少なくて(笑)。でも、私は小さいころからディズニーランドのショーが大好きで、『人を楽しませたい』からミュージカル女優になりたいと思ったんですよ。テーマの重い作品もそれはそれですごく好きではあるんですけど、本来は歌も踊りもふんだんにあって、みんなが笑顔で劇場から出られるような作品をやりたかったので、『やっとできる!』という感じです」

朝夏「私は玲奈ちゃんとは逆で、明るいミュージカル専門みたいなところがあったのですが、キリッとクールな感じもいけると思っていただけたなら、それはもう長年お世話になった劇団(宝塚歌劇団)によって培われたものですね(笑)。お稽古に入ってから思うんですが、宝塚音楽学校で学んだことが大変役に立っているな、と。稽古場でめぐさん(濱田)に『予科(1年生)時代に廊下や階段をクックッと直角に曲がらなければいけないとか背筋をピンと伸ばさなければいけないとか、厳格に規律正しさを求められた経験がめっちゃ活かされているんです』とお話したことがあって。『このために私、やってたんですね』なんて (笑) 。実際にやってみると、その経験に助けられること以上に大変なことも多いんですけどね」

8年前、初演の稽古中に行った当コラムのインタビュー(第65回)で、濱田はメリー像を「よくわからない」と語っていた。初演、再演を経て、いまはどう捉えている?

濱田「いまもわからない、ですね。客観的に捉えられない。むしろ主観的にどうあるべきかはわかるんですけど、それを第三者の目で見て『こういう人である』というのが未だに表現できない。断定をしてはいけないという考えがあるんですよ。『メリーってこういう人』と言った途端に、それは嘘になる。言ったらふわっと消えてなくなってしまいそうで。メリーという存在というか、エッセンスというか、フィーリング?実際にいて、動いているんですけど『あれ幻覚だったのかな?』という感じ。でも、メリーにスッと入れるところは確実にあるんです、初演のときから。ただ、言葉にできない。そこが魅力だとも思います」

笹本「私もまったく同じです!『メリーはこういう人です』と言ってしまったら、そういう目でお客様も見るしかなくなっちゃうし。自分の中でも『こうだ』と明確にしちゃうと、フッと消えちゃいそうな感じがする。可能性がすごくたくさんあるんですよね、一人の存在として。だからこそ未来も見えるし、過去も見えるし、すべてを把握できている。不思議ですよね」

朝夏「私はまだお2人の域に全然達していないんですけれど。最初に読んだときのメリー像は、なんか『概念だな』と思ったんです。信じるとか、愛とか、思いやりの概念みたいな。それが場面によっていろんなものに変化していく存在.かな……と。でもいまはわからないです。やることが多すぎて!まだ段取りと振りと歌とを覚えて、やっと1回通したところで。もう必死だったので。自分の思っているメリーと動きとをいかに繋いで、結びつけてくか。1つ核を作らないと私にはできないなと思っているんですが、その核がまだわからないから探しているところです」

経験豊富な濱田の目から見て、後輩2人のメリーはどう映っているのだろう。

濱田「メリー派遣協会の会長としましてはね(笑)。これは私のポジションからすごく楽しめることなんですけど、もう真逆なんですよ、この2人。すごく見ていて面白いんですけど、目指すところは同じでも、登り方がもう全然違うんです。玲奈ちゃんは感覚で、距離感とか物の配置とか雰囲気とか、その場のニュアンスで入れていて。でも、ここは繋がっているけど、ここがすっぽり抜けてる!『いや、それちゃうちゃう』みたいに突然、『そこが抜ける!?』みたいなことがあって(笑)。それは見ていて『ふふふ』と思いました(笑)」

笹本「まさに私の性格を表してますね!」

濱田「そう(笑)。で、まぁちゃん(朝夏)はもう真逆で、パズルのように、もうがっちり固めておいたところを優雅に舞っていくんですよ。だからちょっとパズルが想定とずれていたりすると『あ、ずれた、ちょっと待って、すみません、ちょっと書きます!はい、 OK です!』と(笑)。舞うところなんかはやはり宝塚歌劇団でトップ(スター)さんをやられてきた、血と汗の訓練で得たスキルがものすごく生きていているんですけど」

笹本「私、永遠に立ち位置のことをまぁちゃんに聞いていますもん 。ここは3番、ここは4番って全部把握しているから。完璧に」

濱田「そう、3人のなかでいちばんディテールをきっちり掴んでいるの。何を聞いてもまずパンッと正解が返ってくるんですよ。その安心感があったところに乗っかって、ようやくフリーになれる。その土台を完璧に作るのね。そうした2人の色味がだんだん融合してきて、パキッとした色がふわっと淡い色になってきて、いまはいい感じで似たようなラインに来ているんですよ。それも面白くて。性格が出る出る(笑)」

朝夏から見た先輩2人のメリーは?

朝夏「もう、一種の完成形を見ている感じです。それぞれ違いはすごくあるんですけど、何が違うって言えない、まだ。でもやはり、メリーなんですよね。お2人とも思いの外、とんちんかんだなと(笑)。それがメリーです。それを本能的に、感覚的につかんでいらっしゃって、なおかつご自身の色が本当に出ているから、本当にあったかいんですよ。でも厳しいときは厳しいし、そのメリハリ、緩急が素晴らしい。『パーフェクトってこういうことね』と勉強させていただきながら見ています。本当に先輩方が導いてくださって、しかもめっちゃ笑い合っていて」

笹本「爆笑だよね(笑)。でも笑うって本当に、いいことですよ」

朝夏「玲奈ちゃんにも『あそこってどうやってるの?』とか聞くと、何でも教えてくれます」

笹本「そんなことない、私がいつも聞いてるの」

朝夏「私は番号専門だから(笑)」

では、笹本から見た2人はどう映る?

笹本「めぐさんはもう本当に、この作品にとってすごく必要な存在。メリーとしてパーフェクトなのはもちろん、作品全体にも、全キャスト、全スタッフに求められている存在です。役者としてもですけど、もはや指導者みたいな域に達している。永遠に、この日本の『メリー・ポピンズ』がある限り、めぐさんという存在が必要なんだという方ですね。まぁちゃんは私、キャスティングが決まったと聞いたとき『ですよね!』と思ったんですよ。立ち姿もそうだし、すべてが私のイメージしているメリー・ポピンズにがっちりハマっていた。トップスターを務められていたことが、『メリーが作品を引っ張っていく』というところにすごく活かされているし。もうそれは、長いことトップを張っていた人ならではだと思うので、『わあ、やはりすごいな。盗みたくても盗めないな。はぁー』と思いながらいつも見ているんですよ」

朝夏「いやいや。いま私は何もかも苦労しているんですけど、いちばん苦労しているのは、『自惚れるって何ですか?』というところで。どうやったら自惚れられるんですかね?振り返ると宝塚時代、とくに下級生のときは『私ってカッコいいでしょ』みたいなポーズがいちばん苦手だったんです。でもそれは芸名の自分として自惚れオーラを出せばよかったけど、メリーとして自惚れるというのが難しい! でもメリーは自惚れているという自覚がないじゃないですか。だからずーっとそこでループしちゃってます。トップスター時代も私は、できないのをずーっとオープンにさらけ出しながら必死で稽古していました。その背中を組のみんなが見ている感じ。近い学年の子には弱音も聞いてもらっていましたし、そうしないといいものができないと思っていたんですよね」

メリーのセリフは、ときにグサッと刺さったり、思わぬ真実に目を向けさせてくれたり、人生の道しるべにもなる、ポジティブでマジカルな言葉でいっぱい。稽古場での3人は「完璧からすっごく遠いところにいるよね」と笑い合う言葉から、素敵な関係性が見えてくる。

濱田「セリフで言えば、私たち散々『何もかもパーフェクト』とか、『どんなことでもできる』とか言っているじゃないですか、ドヤ顔で(笑)。でも、稽古場でやってみて席に戻った瞬間、『あれ無理、全然できない、ダメだダメだ。どうすればいいのー?』と。カンパニーの中でこの 3人が『できない』っていちばん言っているんですよ(笑)。そのギャップが面白い。『さよならバート』とかクールに言って戻ってきたら『もうあそこもコケそうになったー』とか言っているの (笑)。でも素敵だなと思うのが、3人とも自分の弱みをすごく出すところね。『私ここダメなんだけどどうしたらいい?』って。『助けて』というサインをそれぞれが素直に出せるって強いと思うんです」

笹本「本当にこの役をともにするのがこのお2人でよかったなと。前回めぐさんとご一緒したときも思ったんですけど、さらに心強い存在が1人増えて」

朝夏「助けてくださる、助け合えるというのが、私は本当にありがたいです。キツいのを共有・共感できるから。本音を出し合えるのがいちばん心強いし、笑えるしね。ある一定の時間を超えると、めぐさんが壊れてくるのがね、また最高に面白い(笑)」

笹本「それがないと多分、やっていけないと思うんです。大変と楽しい、両方がないと。こうやって、自分のダメなところを『助けてもらっていいですか?』と言い合える関係だと、お互いを高め合っていけるし自分のためにもなるし、雰囲気も良くなるし、本当に助かっています」

では最後に、自分にとっての「メリー・ポピンズ」と、観客へのメッセージを語っていただこう。

朝夏「自分が客席で観ていたときに、『どんなことでもできる』とか、めぐさんメリーのセリフが心にグッと刺さって、すごく背中を押してもらったという経験があります。世の中がいま、ちょっと混沌としているというか、ネガティブになりがちな風潮がありますよね。SNSなどでネガティブに人を叩いたりする人がいたりして。でも、みんながなりたくてそうなっているわけではないと思うんです。この作品はそういうネガティブな気持ちを払拭してくれますし、自分が『勇気が出ないな』と思っていても『大丈夫だよ』とメリーに言ってもらったら、きっと『がんばろう』と前向きな気持ちになれる。自分自身がそうだったように、お客様にもそういう気持ちを持って帰っていただけたらいいなと思います」

笹本「私も本当にそのままなのですが、『めっちゃ楽しい!』ということはみなさんに伝えたいです。なんだか笑いながら泣いちゃうというか、私も稽古場で見ながら笑顔なのに涙が溢れてくるという作品なので、『とにかく感動するし楽しいよ』と言いたいです。私もネガティブになりがちなときがあって、そういうときはいつもスポーツ選手の本を読むんですね、自伝とかを。彼らのメンタルの強さとか、打ち勝つ方法とかが役に立つことがあって。だから私の演じるメリーも、そういう存在になりたいなと思います。きっとポジティブな気分になれるし、幸せな気分にもなれるし、誰かを大切にしたいなという気持ちが生まれてくると思うし、小さなことをすごく幸せに感じると思うので。とにかく『絶対に楽しんでいただけます!』とお伝えしたいです」

濱田「私は思うんですけど、思い悩んでいることって解決するんですよね、最終的には。問題があって、苦しいなという山があっても、その絡まった糸って解けるんですよ、ちゃんと。そこに行き着くきっかけを、『メリー・ポピンズ』という舞台は与えてくれるんじゃないかな。『どんなことだってできる、その気になれば』と思わせてくれる。『できないな』と思っているのは、自分で自分をロックしているだけだから。この作品を観て気持ちが晴れやかになったら、前向きな発想が出るじゃないですか。『あ、できる、できるかも』と思えることって奇跡なんですよ。それを発想するのはなかなか難しいからこそ、そのきっかけになるキランとした魔法をメリーはかけてくれる。だから、自分の一歩を見つけに来てほしいなと思います。一歩出られたら、二歩目が出る!自分に言っているみたいな感じですが、私はそう信じています」

ミュージカル「メリー・ポピンズ」は3月21日〜27日に行われるプレビュー公演の後、3月28日〜5月9日 r東京・東急シアターオーブで上演。大阪公演は5月21日〜6月6日 梅田芸術劇場メインホールで上演される。詳しい情報は公式サイト(https://marypoppins2026.jp/)で確認できる。

【作品情報】
メリー・ポピンズ

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撮影:若林ゆりヘアメイク:住本由香(濱田)、真知子(エムドルフィン)(笹本)、根津しずえ(朝夏)スタイリスト:尾関寛子(濱田)、筒井葉子(朝夏)
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