第78回カンヌ国際映画祭審査員賞受賞作、 第98回アカデミー賞ドイツ代表に選ばれた「落下音」場面写真7点が公開された。いずれもマーシャ・シリンスキ監督が「最大のインスピレーション源」と公言する、22歳で夭折した写真家フランチェスカ・ウッドマンへのオマージュを色濃く感じさせるものだ。
・
【フォトギャラリー】語られなかった土地のトラウマ、百年の時を経て響きあう少女たちの不安――「落下音」場面写真
ギャガ新設のアートハウス映画レーベルNOROSHI配給第2弾として公開される本作は、1910年代のアルマ、1940年代のエリカ、1980年代のアンゲリカ、そして現代のレンカ――4つの異なる時代を生きる4人の少女たちが、同じ土地で体験する不可解な出来事を描いた、百年にわたる映像叙事詩だ。
このほど公開されたカットには、死体のように眠る少女の背後で、母親の表情が二重に揺らぎ不穏な気配を漂わせる場面や、暗い納屋の奥で女性と少女が同じ画角で何かを覗き込み、時代を超えて影のように重なり合う瞬間が切り取られている。さらに、まるで絵画の断片のように、同じ家に暮らしながら異なる時代の家族が同時に存在する幻想的な風景、そして家族写真の中でただ一人、〈生と死の境界〉が曖昧になるほどぼやけた少女の姿――。いずれの写真も〈存在しても、生きることができなかった〉女性や少女たちの痕跡の不穏で美しいイメージ群となっている。
「本作は最初から、“記憶する”という行為そのもの──知覚と記憶がどのように作用するのか──を描く映画として構想していました」と明かすシリンスキ監督。時間や時空、さらには登場人物までもが複雑に<交錯>しながら展開する本作は、唯一無二の映像美とストーリーラインで観る者を引き込んでいく。
「私にとって記憶とは、身体から呼び覚まされるもの。体験のあとになって初めて、当時はできなかった“外側から自分を見る”感覚で出来事を捉え直すことができるのです」と語り、記憶をめぐる個人的な実感が作品の核になっているという。だからこそ本作では、極めて主観的でありながら、登場人物たちが異なる時間軸から自分を見つめ直していくような構造を採用。「複数の視点と起点が重なり合いながら、新たな理解へとたどり着く映画を描きたかった」と、その狙いを語っている。
本作はシリンスキ監督の長編2作目にして第78回カンヌ国際映画祭コンペティション部門入りを果たし、テレンス・マリック、ジェーン・カンピオン、ミヒャエル・ハネケ、デヴィッド・リンチといった鬼才の名が引き合いに出されながらも、いずれにも回収されない独自の映画世界が高く評価された。また、その革新性は映画祭に鮮烈な驚きをもたらし、「今年のカンヌで最も記憶に残る作品」「映画言語を更新する新たな才能」「次世代を担う重要な監督の登場」と称賛された。
4月3日から新宿ピカデリーほか全国公開。
【作品情報】
・
落下音
【関連記事】
・
【動画】「落下音」予告編
・
語られなかった土地のトラウマ、百年の時を経て響きあう少女たちの不安――「落下音」4月3日公開
(C) Fabian Gamper - Studio Zentral