特殊清掃業者と聞けば、孤独死などの現場ばかりと思われるかもしれないが、飲食店の清掃を任されることも多いという。
「飲食店とはいえ、孤独死の現場に引けをとらない悲惨な状態も珍しくありません」
都内を中心にさまざまな現場で特殊清掃を手がけるブルークリーン株式会社で働きながら、特殊清掃の実態を伝える登録者5万3000人以上のYouTubeチャンネル「特殊清掃チャンネル」を運営している鈴木亮太さんに、詳しい話を聞いた。
ケーキ屋が閉店、清掃に入ると「まるでゴミ屋敷」
飲食店の閉店に伴う清掃で、かなり大変な清掃現場があったという。
「不動産屋からの依頼ではなく、飲食店オーナーからの直接の依頼でした。経営されてた方が、脳出血で倒れてしまったようで、しばらく営業できない状況だったそうです。闘病しながら店を続けるか悩んでいたらしいのですが、どんどん月日が経ってしまい、再開の目処がたたなくなってしまったそうです。泣く泣く引退を決意され、店じまいの清掃を頼まれたのです」
そこで現地に行ってみたところ、尋常じゃない数の害虫に驚いたとか。
「見積もりの段階で現場に入ると、食料品の腐った臭いが充満していました。お店の広さは大体40平米、家で言うと2LDKくらいの広さです。ケーキ屋さんだったようなのですが、数週間放置してしまったようで、虫がものすごく湧いていて。とくにゴキブリが尋常じゃない数いました。そろそろ12月になるといった時期で寒くなってきたはずなのに害虫の量が真夏以上でした。歩くたびゴキブリが出てくるような感じで、冷蔵庫を開けると牛乳などが全て腐っていて、冷蔵庫のふちにゴキブリが何匹もいました」
見積もりの段階では、ゴミ屋敷の孤独死清掃と変わらないと思っていた。
「まず初日に、この湧いた虫たちをなんとかしなくてはということで、殺虫剤を撒きました。翌日店に入ってみたところ、見積もりの段階の何倍も虫の死骸があって、びっくりしました。きっとどこかに隠れていたのでしょう。数で言うと何千匹で、小さいゴキブリから大きいゴキブリまで……。おそらく外から入ってきた後に卵を産んで、孵化したのだと思います。
殺虫剤でもまだ死んでおらず、足をバタつかせて死にかけてるのもいて、背筋がゾワゾワゾワとなりました。正直いうと、ちょっとトラウマになるレベルです。虫が苦手な人だったら卒倒しちゃうレベルなんじゃないかなって」
お客さんから見えない部分はひどい有様だった
作業的な難易度はそこまで高くはなかったが、視覚的に厳しいものがあったそう。
「人が一生の間に目撃するぶん以上のゴキブリに遭遇したと思います。自分自身、こんな仕事についておきながら、虫が苦手というのがありまして……。でも仕事なので、そうは言っていられず、なんとか気合いを入れて清掃にとりかかりました。よくYouTubeで大量のゴキブリがマンホールから出てくるみたいな動画あるじゃないですか。あの数を遥かに超えていました」
店主の体調の悪さが影響していたのか、もともと厨房が散らかり気味だったそう。
「お客さんから見えるショーケース側は比較的きれいだったんですけど、ものが多くて散らかってる状況ではありました。この状態でちゃんと営業していたのかどうかは疑問です」
鈴木さんが続ける。
「もしかしたら体調が悪い日が続いて、店も休み気味だったのかもしれません。とにかく退去できるスケルトン状態まで戻さなきゃいけない感じで、冷蔵庫もひどい悪臭でしたが、レンタル物だったので返せるくらい、きれいに清掃をしなくてはなりませんでした。ただ、依頼主が病院に入院中ということで、資料が手元になかったみたいで、どの業者に返すのかなどもわかっておらず、こちらで全て調べて返却までさせていただきました」
特殊清掃というよりも害虫駆除
依頼主からの要望で、周りに目立たないようにしてほしいと言われた。
「放置しすぎていて、現場が酷い状況になっていることがわかってたんですよね。長い間営業してたお店なので、周りの人に知られてしまうと、よからぬ噂がたってしまうことを懸念したようです。路面店だったので、シャッターを開けたら、中の悲惨な状況が見えてしまうんですよ。あと、店内の害虫を外に逃がしてしまうと、二次被害、三次被害まで拡大するので。そうならないために虫の動きなどを予測しながらやらなくてはならないので、かなり頭を使う現場でした」
ゴキブリの他にもネズミがたくさんいた。
「飲食店というのは家とは違い、少しの間でも放置してしまうと、個人の力では復旧できないほどになります。ネズミの縄張りみたいな感じになってしまっていて、家族みたいなのが住み着いていました。奴らの駆除もかなり苦労しました。やっていることは特殊清掃というより、害虫駆除業者でした。一応、我々の仕事には『ペストコントロール』という有害な生物の活動を人の生活を害さないレベルまで制御する理念があります。なので、害虫駆除も仕事には組み込まれてはいます」
また今回は乳製品ということで、腐るスピードも早く、被害が増えたこともあった。
「原因は不明ですが、ブレーカーが落ちてしまっていて、冷蔵庫も機能してなかったんです。なので、中の乳製品が腐って、ものすごい異臭を放っていました。そういうことも今回の被害の大きさに繋がっていると思います。店主一人だけで営業していたので、体調面とか誰かに相談とかできなかったんでしょうね。こういうときに一緒に働く従業員というのは大事なんだなと実感させられます。何事も一人で抱え込まないというのが、被害を最小限にするために大切な考え方なのだと思います」
インドカレー屋はスパイスの匂いが落ちない
今回のケーキ屋は清掃のみで済んだが、インドカレー屋のケースだと、清掃にかなり手間がかかるそうだ。
「インドカレー屋を営業してた人が夜逃げしたということで、残地物の撤去と消臭の作業をしたことがあります。カレーのスパイスの匂いって強烈なので、普段使っているような消臭剤が効かないんです。空間に染み付きすぎているので、ぜんぶ解体してスケルトンまで戻さなきゃならない現場になってしまいました」
その結果、かなり費用がかさんでしまったと話す。
「いまだに、匂いだけを完全に除去する技術が完成されておらず、試行錯誤中ということもあります。現状、臭い除去については、お客様のためにもなるべく手間と費用がかからない技術を伸ばしていってる最中です」
<取材・文/山崎尚哉、画像提供/ブルークリーン>
【特殊清掃王すーさん】
(公社)日本ペストコントロール協会認証技能師。1992年、東京都大田区生まれ。地元の進学校を卒業後、様々な業種を経験し、孤独死・災害現場復旧のリーディングカンパニーである「ブルークリーン」の創業に参画。これまで官公庁から五つ星ホテルまで、さまざまな取引先から依頼を受け、現場作業を実施した経験を基に、YouTubeチャンネル「BLUE CLEAN【公式】」にて特殊清掃現場のリアルを配信中!趣味はプロレス観戦
【関連記事】
・
遺族に聞こえる声で「くっさ!」、遺品整理で見つかったお金を横領…特殊清掃員が明かす“悪質業者の実態”
・
女の人の声で「おい!」、謎の水漏れ→広がった水の形が…特殊清掃作業員が“孤独死”の現場で体験した怪奇現象
・
特殊清掃業者が明かす「見た感じは綺麗なのに、なぜか臭い現場」の原因とは
・
特殊清掃業者が明かす、実は困ってしまう依頼「身内が先に少し掃除しておく」は逆に費用が高くつくワケ
・
ゴミ屋敷で“父の遺体”と暮らしていた50代息子。特殊清掃員が見た、死体遺棄事件に潜む“貧困”の実態