「隧道」という単語を知っているだろうか?隧道は「ずいどう」と読み、トンネルのことを指す。現代では一般的にトンネルと呼ばれているが、外来語が流入する以前は「隧道」と呼ばれていて、今でも「○○隧道」と呼ばれているトンネルは残存している。今回紹介する話は、日本のとある場所にある「N隧道」というトンネルで怪奇現象にあった配達員の話である。
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郵便局のS支店に勤める配達員のMくんの配達区には、「N隧道」というトンネルがあった。寂れた場所にあるため普段は通らないらしいが、その日はいつもの道が通行止めになっていたので、迂回路として使うことにしたという。ずっと昔に掘られたものなので長さはそんなにないトンネルで、一体どんな心霊現象が起きたのだろうか…?
この話を読んだ読者からは「夜中に見てゾクッとしました」「一気に読ませていただきました!怖くて、でも魅力的なお話ですね」などの声が届いた。本作『N隧道』について、作者の送達ねこさんに詳しく話を伺ってみた。
――「配達中だったのは幸いだった。仕事が現実に引き戻してくれた」というMさんの言葉が印象的でした。あんなに怖い思いをしても「配達中」ということが頭をよぎるんですね?
はい。むしろ「配達を思い出してよかった」とMさんは振り返っていました。「気持ちを切り替えられたから。そうじゃなかったら、暗い、狭い空間でとても耐えられなかった」と…。仕事が恐怖から救ってくれた。目の前の心霊よりも向き合うものがあると思い出させてくれた…そんな心境だったようです。
――「その後もN隧道を使うことが何回かあったけど…」とMさんは言っていました。どんな怖いことがあった場所でも配達物がある限り、避けて通れないのはつらいですね。
Mさんもやはり通るたびに緊張したようです。「また何かあって配達に影響したら困るな」と。トンネルは出口が見えず本能的な不安を煽りますし、古い隧道ですと工事による犠牲者の噂など怪談めいた伝説もあったりするようです。実際、別の地方局でもトンネルで異様な体験をした配達員がいましたし…!
――え!異様な体験とは…!?
ある集落へ郵便を届けに行くのに古いトンネルを通ったときのことだったそうです。大人の、おそらく男性と思える人が壁に向かって腕を上下に振っていたそうです。「何をしているんだろう?」と思いながら、その人の腕がなんだか普通よりも妙に長かったので、通り過ぎて振り返ったところ誰もいなかったそうです。あとでそこが「怪現象の多い心霊スポット」とわかり、配達員たちに注意喚起がなされました。心霊スポットでも避けるわけにいきませんし、異変に気を取られて事故を起こすとしたらそれは配達員にとって、最も恐ろしいことなのだと思います。
郵便配達員たちは毎日、町の隅々まで郵便物を配達して回っている。そんな現役の郵便局員が、実際に経験した不思議な話や怖い話を漫画化したのが送達ねこさんの『郵便屋が集めた奇談』である。同僚たちが体験した話を漫画化してSNSにアップしていると、送達ねこさんのもとには他局の職員からも体験談が届くようになっていった。『郵便屋が集めた奇談』は、読者から「こういう不思議で怖い話って好き」「けっこう背筋がゾクッとしたけど、めちゃくちゃおもしろい…!」と好評だ。日本のどこかの町でひっそりと起こっている“怪異”を覗き見してみよう。
取材協力:送達ねこ(@jinjanosandou)
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